ある日のこと
@asa-gao
第1話
僕の名前は蓮。ある日、真夜中に目が覚めた。というよりは起こされた。飼い猫・黒猫のモジャが僕の顔をペシペシと叩くからだ。
「モジャどうした?」
モジャは僕が寝るといつも横にやって来ては、おとなしく朝まで寝ている。なのに今日は
「にゃ~にゃ~」とモジャは、ただ鳴きながら僕の顔をペシペシする。しょうがないな。モジャをどかして起き上がり、ベッド横の電気スタンドをつけた。
「モジャ、真夜中だぞ。」
モジャの頭を撫でて落ち着かせようとしたが、モジャはベッドから降りて窓の方に向かった。
「モジャ?」
真夜中だというのかにカーテンの向こう側はやけに明るい。
「なんだ?」
僕はカーテンをゆっくり開けた。ん?え?
ベランダには数匹の猫がいた。いや、ただいるんじゃない。皆、二本脚で立って何かをもっている。
「なんでこんなに猫が?」
おそるおそる窓を開けてみる。
猫たちは皆、僕を見て深々とお辞儀をした。僕もつられて、ペコリ。
「はじめまして。僕たちはモジャの友達です。僕はサンと言います。以後お見知りおを。」と言ってサンはまた、ペコリとお辞儀をした。「実はモジャから、今日は蓮さんの誕生日と聞いて来ました。」
「は、はい…?」
「びっくりさせてごめんなさい。でも、モジャが命を助けてくれた蓮さんにどうしてもお礼が言いたいと言うので…。でも、ひとりだとなかなか言えないと言うので僕らは付き添いで来ました。」
「お礼って…そんな…。」
「ほら!モジャ、早く!」
サンと言う猫にモジャが急かされながら言った。
「蓮つあの日、僕は川に落ちてもう少しで死ぬとこだった。でも、蓮が僕を見つけてくれて、助けてくれたから、また友達とも会えてる。しかも、僕と暮らしてくれるなんて…。なんて言うか、そのぉ…」
モジャがもじもじしていると、サンの隣の真っ白の猫が「モジャ、キチンとね!」と。
その言葉にモジャは黙って頷いた。
「蓮。あ、ありがとう。蓮に会えて人間にも優しい人がいるんだと初めて思えた。」
「モジャ…。そんな風に思ってくれてたなんて。僕も猫と暮らした事がないから、僕で良いのか不安だった。でも、モジャの気持ちが聞けて嬉しい。こちらこそありがとう。」
そういった瞬間、紙吹雪が舞った。
僕が紙吹雪に目をやった一瞬のすきに猫たちは居なくなり、モジャはいつも通り僕のベッドで寝ている。
「あれ?夢?」
僕がもう一度寝ようとベッドに戻ると、モジャの頭に一枚の紙がついていた。
「これはさっきの紙吹雪?じゃぁ~夢じゃない?」
僕はモジャの寝顔を見て、どちらでも良いと思った。ゆめでも現実でも。モジャが隣でスヤスヤ寝ている。それだけで、僕は幸せだ。
ある日のこと @asa-gao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます