第10話 非常口の悪魔
人には非常口が必要だ。社会や集団に揉まれる中で擦り減っていく神経、疲弊していく心。逃れる方法は人それぞれだが、おれにとってそれは薄暗い光に照らされたこの場所だった。校舎二階の理科室の奥、古びた扉を開けて階段を6段下り、2段上がると今日もコイツは、煙幕と共に現れた。
「やほー、今日もボッチ飯ってやつ?」
「別に」
コイツは人間の子どもの姿をしているが、額に小さい角が生えている。
「君は友達がいないの?」
「別に」
「何でここに来て、僕を呼ぶの?」
「なんとなく」
昼休みになるとここで、ソシャゲをやりながらサンドイッチを食べるのがおれの日課だった。
「君はここが好きなの?」
「ここ以外が嫌いなだけ」
「そっか。じゃあ」
無邪気な顔でコイツは角を撫で始めた。
「消したよ。君の嫌いな場所」
「は?」
「見て」
扉の外を見ると真っ白な世界が広がっていた。
「これで好きな場所だけだね」
おれはもう、この非常口から逃れられない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます