こども百科事典
「こども百科事典」は、全部で二十冊あって、「こくご」「さんすう」「りかのじっけん」「しゃかいのしくみ」「うみのいきもの」「りくのいきもの」「はなとむし」「せかいのくにぐに」「にっぽんのれきし」「じんめいじてん」とかいっぱいあって、もう、ぼくはどれから読もうか、ワクワクした。
昨日は、パパが晩ごはんの時間くらいに帰ってきて、晩ごはんが終わってから、
「ほら、はると、お前にプレゼントだ。あけてみてごらん」
って言って、あけたから、まだそんなに読んでないうちに、ママに、
「はる~、お風呂に入りなさい~」
って邪魔されて、超特急でおふろに入ってきて。また読もうとしたら、
「はる~、歯みがきちゃんとしたの~?」
って。あー、もう。やるよ、やりゃあいいんでしょ? それで、歯みがきしたら、
「はる! いつまでそれ読んでるの? もう寝る時間でしょ?」
って、ママが怒った。だって、ぼく、まだほとんど読んでないんだよ?
「ほら、本は、明日、幼稚園から帰って、読めばいいでしょ?」
ぼくは、しぶしぶママの言うことをきいた。
だから、今日は、もうダッシュで帰ってきたんだ。ぼくは帽子とつうえんバッグを放り出すと、本棚にむかった。
「ど、れ、に、し、よ、う、か、な? よし、これにしよっと」
ぼくは「はなとむし」の本をとって、床にひろげた。だって分厚くて、重いのさ。ぼくはまだ小学校に行ってないから、ぼくの机もないしね。
「おっ! カブトムシだ!! ヘラクレスオオカブトだ!! すげぇ。かっこいい~!」
「み、や、ま、くわがた? へぇ。かっこいい角~」
「お、お、る、り、あ、げ、は。きれいな色のちょうちょだなぁ」
ぼくはお習字でひらがなは全部習っていたので、自分で読めた。漢字も全部ふりがなをひらがなで書いてあったから読めたんだけど、カタカナはわかんないのもあった。そこは、あとでパパかママに聞こう。そう思いながら、どんどんどんどん読んでいった。
「みつばちのなかまは、はなのばしょをしった一匹が、巣にかえってダンスをします。それで、ほかのはちたちも、みつやかふんをとりにでていくのです」
「そうなんだ。よくばしょを忘れずに帰ってこれるなぁ。みつばち、すげぇ」
ぼくはみつばちがダンスする様子を想像してみた。花の場所を知っているヤツがダンスしてる周りに、他のみつばちが集まって、腕組みをしながら、うんうんってうなずいている。それで、ダンスしてるみつばちが「あっちだよ、イエ~イ」って指さす方向へみんな「イエ~イ」って向かうのさ
「あはは。そんなわけないか~」
でも、ほんとうはどうなんだろう? ぼくはそれを見てみたいと思った。
こども百科事典はとにかく面白いことばかりだった。ぼくは「こくご」で、カタカナも覚えたし、漢字も、ローマ字だっておぼえたのさ。だってかっこいいもの。「さんすう」で数字も覚えたし、足し算も引き算もわかるようになったんだ。「しゃかいのしくみ」と「にっぽんのれきし」はなんだか難しくて、今のぼくにはわかんなかったから、もうちょっと大きくなってから読むことに決めた。「じんめいじてん」は面白かったよ。いっぱいえらい人がのってて、その人たちがどんなことをしたからえらいのか、書いてあった。えらい人の名前を覚えるのはちょっと難しかったけど、何回も読んでいるうちにおぼえた。図鑑は、
鳥や魚、動物や花なんかはとてもきれいな写真がいっぱいのっていて、ぼくは何回みてもたいくつしなかったんだ。
こうして、ぼくは、こども百科事典にのっていることをどんどん覚えていった。
だけど、それを幼稚園で、おともだちに教えていると、かなこ先生に怒られたんだ。
「はるとくん。はるとくんがいっぱい勉強してるのはすごいよ。でも、そういうのはね、みんな小学校で順番に習うことなの。だから、なんでもかんでも勝手にお友達に教えたらダメだよ。はるとくんが勉強すっごくできること、先生はわかってるから。ね?」
ぼくはなんでダメなのか、全然わかんなかったけど、またぼくが先生を困らせているのかな? と思ったので、
「はーい。わかったよ、先生」
って答えといた。
大人が決めたルールはよくわからない。
みんなはどうしてわかるんだろう?
ぼくはどうしてわからないんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます