君と俺の物語

水月美都(Mizuki_mitu)

第1話

「ずっと一緒にいようね」

 君が言ったあの時、あの瞬間だけが俺達のすべてだった。

 二人が出会った場所は学校の図書館で。図書委員をしていた君は、長い髪を後ろで結んで眼鏡を掛けた。如何にも図書委員といった格好だった。

 俺はといえば、ただの暇潰し。部活をサボって寝に来ていただけの、本が好きな訳でもない、ここが静かに寝られるという理由で来ていた駄目な奴だった。


 その日も一応、本を持たずに席に座るのは格好がつかないと思い、書棚に並んだ本を物色していた。

 長い梯に乗った君の、スラリとした足を、ぼんやりと眺めていたら、いきなり君が落ちて来たんだよね。

「あ、あ、キャ〜〜!」

 ドサリと俺の上に落ちて来て、眼鏡をどっかに飛ばした君の素顔を見てから、俺の恋は始まったんだ。

「ごめんなさい。大丈夫ですか? 怪我、しませんでしたか?」

 しきりに、俺を気遣う優しい君の、声さえもおれの胸に響いてきたんだよ。


「あ、ああ……大丈夫だ」


 なんて……気の利いた言葉ひとつ言えずに、我ながら情けなく思ったんだ。

 それが、どう間違ったのか、君に勇気を出して告白した時は多分駄目だと思ってたのに。

 真っ赤になりながらも。「わたしもあなたが好き」と言われて、嬉しくて。跳び上がりたい程、うれしくて。


 それが、知り合ってから二ヶ月目の出来事だったよね。

 それからは、何時も二人は一緒だったのに。



「あっくん。別れよう……」

 ある日突然君は言った。

 俺は、冗談だと思って笑いながらこう言った。

「なに? それ、なにかの冗談……」

「冗談なんかじゃないよ! 本当の私の気持ちだよ」


 本気だと気が付いた時、俺は君の肩を掴んで責めたんだ。

「何でだ? 俺が悪いなら言ってくれ。 理由も聞かずに別れるなんて出来ないよ!」

 責められても、君は何も。そう、何も言ってはくれなかった。

 そして、君は黙ったまま、俺の前から消えた。


 次の日君と話をしようと家まで行った俺は、空っぽになった空き家の前で、立ち尽くしていた。

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