元魔王軍の四天王だった凄腕ヒーラーは魔王軍に四天王最弱は必要ないと追い出させたので大人しく出て行きます!後で後悔しても戻ってやらないからな?

猿のコルク

第1話 自由に生きたいのに……

 ハイエルフとして生を受けたウィリアムは幼いころから両親に魔法を習い火水土風光闇の基本六属性魔法と回復魔法を使いこなせるエルフでも過去に類を見ない魔法の申し子だった。エルフは基本的にエルフの里に暮らし自然と主に生きて死んでいくのだが、ウィリアムは長い人生をそんなつまらないことを毎日繰り返して死んでいくなんて耐えがたかった。そこで、ウィリアムは両親に相談したところ息子が「外の世界に行きたいなら行ってこい」「何かあったら戻てくるのよ?」と優しく見送ってくれた。


 人間の世界に足を踏み入れたウィリアムにはレンガで作られた家や綺麗に整地された道路、魔導具、見たこともない人種、食べ物などワクワクすることがいっぱいだった。


「町に来たのは良いけど。人間世界ではお金がいるんだよな。どうにかして稼がないとな……」

 そんなウィリアムの呟きを聞いていた屋台のおじちゃんが話しかけてきた。


「そこのエルフの兄ちゃんお金が無いのか?」


「そうなんだ。今までエルフの里に暮らしてたからお金が無いんだ」


「エルフは森で生きる民だもんな。エルフなら魔法と弓は得意なんだろ?なら冒険者ギルドに行ってみると良い。冒険者なら魔物を狩って依頼を受ければ危険と隣り合わせだが上級冒険者になればかなり稼げるらしいぞ」


「冒険者か…。冒険と言う名前が付くぐらいだから楽しそうだな。おじさんありがとう」


「それぐらいお安いことよ。冒険者ギルドはこの通りを真っ直ぐ行ったところに剣がクロスした看板が掲げられているから分かりやすいと思うぞ」


 こうして冒険者となったウィリアムは魔法と弓を駆使して歴代最速で冒険者の最高位Sランクに到達したまでは良かった…。ウィリアムは基本ソロで仕事をしていたが、パーティーを組んで仕事をすることになった。そして、パーティーを組んだ人が無理に攻め込み死んでしまった。パーティーのメンバーが悲しむもんだから蘇生してあげると直ぐに話題になってしまった。この世界を創造した神ガーミナルを進行する国の教皇でさえ使うことが出来ない死者の蘇生をやってのけたウィリアムの元には人が集まるようになった。


「私の病気を治してください」「腰痛が痛くて」「腕を再生させてください」「金ならいくらでも出す私の娘を蘇らせてくれ」

 など他のヒーラーでも治せる小さい怪我でもウィリアムに治してもらったほうがご利益がある、拍が付くなどとどうでもいい理由で自分の元にやって来る者までいるのだ。蘇生もかなり魔力を使うので1日に何人も蘇生させられて正直疲れるのだ。おまけに休みもない。


「やってられるか。俺はこんなことをするために里を出たんじゃないぞ!」

 ウィリアムの我慢も限界を迎えたとき更にめんどくさいのが来た。


「あなたがウィリアム様ですね。私はガーミナル教国で枢機卿を任せられているミシルと申します。あなたには是非我らの神のおられる国に迎え入れたい」


 彼らの狙いは死者の蘇生ができるウィリアムを取り込み他の国より優位に立ち、神の御業と多くの人に知らしめ信者を増やしたいのだ。それに、教国になんてのこのこと足を踏み入れたら最後俺に自由は訪れないだろう。それが分かったウィリアムは即座に断った。


「ありがたい話ではあるけど俺はガーミナル教の信者じゃないので申し訳ないが断らせてもらいます」


 ウィリアムが断った瞬間ミシルの顔が歪んだが直ぐに表情を戻して口を開いた。


「そうですか。そういうことでしたら仕方ありませんね。今回は引くとしましょう。ですが、私の顔に泥を塗ったあなたを私は許しませんよ」


 そう言い残してミシルは部下を連れて帰っていったがその夜ウィリアムの泊まっている宿に侵入者が来た。


「「「「「お前の命は貰った!」」」」」

 全身黒ずくめの暗殺者が一斉に襲い掛かってきたがウィリアムはそれを返り討ちにするそんな日々が続き1週間が経過した。


「マジで寝不足なんですけど。あいつしつこすぎない?もう目の下にこんな大きなクマがあるんだけど!」


 寝不足とストレスでウィリアムの怒りは頂点だった。そんな時ウィリアムの部屋に侵入者がやって来た。これがウィリアムの運命を変える出会いになる。

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