第5話


「な、なんだ? このアナウンス?」


「他にも管理者が居るのか!」


 さっさと、このダンジョンを完全攻略パーフェクトクリアしてやる。


《制限時間は1時間です》


 思っていた以上に少ない。

 確か攻める側と守る側の力量で変わるんだっけ?

 前にSクラスに認定された管理者が調子に乗って攻められた事があった。

 その時に見たのが、ダンジョンの入口、ゲートを出せると言う事だった。

 まぁ、ダンジョンとダンジョンの戦争だからな。

 レンジャーとナイト二人づつ連れて行けば良いかな?


 ◇


「あれ? 天音、大丈夫だった?」


「ああ。なんかアドベンチャーラーのあいつら居なかったし、ダンジョン攻略しに行った可能性があるな」


「攻略?」


「そう。ダンジョンの最深部のボスを倒すと、ダンジョンは一時的に修復期間に入る。その時、内部に居る人は皆外に転移されるんだよ」


「そう」


 ◇


 あいつらが管理室に行ったのを見計らった。

 管理者は自分のダンジョン内なら管理室まで転移出来る。

 その時に他の者も転移させる事が出来る。


「さて、レンにナイ。行くよ」


「はい。マイロード」


「承知した」


 俺はとあるフード付きマントを取り出した。

 これを被れば認識阻害が発動されるので、自分の顔が見られる事は無い。

 レンを1番前に、次にナイをおいて進む。

 レンジャーであるレンが罠やモンスターの位置をすぐに察知するのだ。


 ま、ナイトのナイを呼んだけど、多分要らない。

 ただ、こう言う時に護衛用の誰かをおかないと、怒られるんだよなぁ。


 出て来るのは狼にゴブリンにオークだった。

 さっさと攻略して3層に来ている。

 階層ごとのボスが居ないので案外楽だった。


「天音殿」


「何?」


「ナイ、居る必要あったのでしょうか?」


「あるよ。ボスは頼む」


「レンだけで十分だと思うんですけど」


「気の所為だ。な、レン」


「そうですか?」


 え。


「別にこの程度の雑魚の溜まり場ならレンだけで十分です。寧ろスピードに少し難があるナイが居ない方が速く終わってますよ」


「です、よね」


 そんな事ないから!

 世間一般から見たらナイも全然速いから!

 それにナイは騎士だから鎧とか着て重量があってスピードダウンしているだけだから!


「それに、そもそも私もナイも迷宮の中では中の上、ロードだけで十分でしたよ」


 ⋯⋯。

 レンってズバズバ言うよね。


「あああ!」


 ナイが壊れた。

 そんなところでボス部屋に辿り着いた。

 大きな扉があり、それを開いて中に入ると、さっきのライオンが居た。

 あいつ、ボスだったんだ。


「ナイ。やれ」


「はああああああ!」


 ナイが一気に加速して剣を引き抜き、ライオンの首を落とす。

 一閃の光の後に、ずるりと滑って首が落ちる。

 ナイは剣を鞘にしまい、一息つく。


「⋯⋯守る筈の騎士が、前に出て戦って良かったのだろうか?」


 そして、それから数十秒待つと、俺達は違う場所に転移する。

 そこには、さっきの男子達と迷宮管理者のサポータが居た。

 そして、1つ大きな石がある。

 管理者資格の心臓である。


「さて、これで我々の勝ちだ」


「ふざけんな! お前は何者なんだ! 何組だ!」


「さぁ、何組だろうな? それよりも、敗者である貴様に1つの絶対命令権を行使する」


 管理者内での娯楽である管理者バトルのダンジョンラグナロク。

 これは世間一般的にはリークされてない。

 そして、あのアナウンスが聞こえるのは管理者の周りとモンスターだけ。


「⋯⋯」


 敗北した管理者はこれ以上の口出しは許されない。

 さて、特に何も考えてなかった。

 ナイを慰める方がよっぽど大変だったわ。

 どうしよう?


 合併しても意味ないし。

 資格を消去したらサポータ含めモンスターがリセットされる。

 それは可哀想だ。

 資格剥奪は合併だし⋯⋯んー。

 普通にダンジョンを消して貰うか?

 でも、そしたらこいつらの誰かが管理者だってバレる。

 そしたら仲間割れが起こる可能性が高い。


 平和的に終わらせると決めたからなぁ。


「⋯⋯」


 あ、あちらさんがイライラし始めてるわ。

 まじでどうしよう。

 ん〜あ!


「傘下に入れ」


「ロードそれは⋯⋯」


「そんな無駄な! こんな雑魚の溜まり場を傘下に加える必要ないですよ!」


 傘下、それは実質的な部下、或いは奴隷。

 傘下であるこいつらは俺の命令には従わないといけない。

 だが、その代わりに傘下に対して俺も何かの援助をしないといけない。

 モンスターを貸すなりダンジョンエナジーをあげるなりしないといけない。

 一方的な物はダメなのだ。


「⋯⋯わ、分かった」


 或る意味、最高の終わり方かもしれんな。

 さて、傘下にしたからには面倒をみないと、仲間達に示しがつかんな。


「ロード、こんなゴミを、我々に利益がございません」


「そうです!」


「⋯⋯俺の考えを否定するのか?」


「「い、いえ」」


「あ、あぁ。別に怒ってる訳じゃないよ? 確かにこんな勝手したら普通に迷惑だしね。うん。確かにこのままなら利益は無いかもしれない。だったら、利益を持たすくらいに成長させてやれば良いから。今後、ウチに攻めて来る奴の対処もさせてやれば良いし。こいつらアドベンチャーラーだから扱いやすいしね。うん」


「そうですか」


「ロードが決めたのなら⋯⋯」


 よし、まずはこのダンジョンを消そう。

 正確には、ダンジョンの入口であるゲートを消すんだけど。

 そしたら皆最初いた場所に戻される。


「じゃ」


 スペルカードの転移を使って適当な場所に行く。

 そこで着替えて迷宮消失ダンジョンロストを待つ事にする。


 ◇


「一体、なんなんだよ、あいつら」


「化け物だったな」


「⋯⋯」


 1度負けた管理者は、サポータに見限られる事が多い。

 これも、その一例になるかもしれない。


「迷宮を閉鎖する」

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