第4話

 生徒教師含め全員がとある閉鎖空間に居る。

 見えるのは2本の道だけ。


「どこだここは!」


「誰よ! 誰がここにダンジョンを建設したの! 出してよ!」


「お、落ち着け! 管理者が居るなら殺されない筈だ!」


「そんな保証がどこにあるんだ!」


「そうだ! 管理者はまず名乗れよ!」


 あちこちから叫び声が轟く。

 皆叫んで混乱しているけど、根っこの部分では分かっているんだな。

 これが、迷宮管理者の資格を得た人の仕業だと。

 まぁ、後天的だからな資格得るの。俺は速すぎた。

 だからあんなやばい⋯⋯今は良いや。


 まずは管理者を探そうか。


 管理者は魂に管理者としての資格の因子がある。

 他にも勇者因子とか魔王因子とか諸々。

 その因子は同じ因子を持つ者同士で感知出来る。

 漏れ出る因子を隠す事も可能だが、こんなポットでの管理者と長年の管理者の実力差で、相手からは気づかれないだろうが、俺は分かる。


 しっかし、人が多くて上手く探れんな。

 中には勇者因子の種の持ち主とかも居るし。


「天音。怖いね」


「ああ、千秋か。まぁ、管理者がモンスターに指示は出せるからある程度は安心していいだろ。いざと成ったらアビリティを使うよ」


「天音のアビリティ知らないけど、天音がそう言うなら信じる」


「はぁ。今日の帰り甘百合さんに告白しようと思っていたのに」


「バカ?」


「バカとはなんだ。今日初めて会話が出来たんだぞ。やるだけ価値はある」


「無いでしょ。あれは会話とは言わんでしょ。全く、和ませてくれてありがと」


 あ、冗談だと思った? 俺結構ガチよ?


「⋯⋯もしかして本気?」


「本気と書いてガチと読む」


「泣く時は胸貸すわ」


「お前の借りてなんの意味が?」


「私の結構大きぞ〜⋯⋯ッ! うそ、でかい」


 俺は千秋が向いている方を見る。

 そこには身長4メートルはありそうな顔がライオンの獣人間が居た。

 大きな大剣を持って、道から現れたようだ。

 顔を動かして、獲物を認識したかのように動き出す。


 生徒は誰一人として動こうとはしない。

 恐怖と驚愕で足が奪われ、動けないのだ。

 ライオンは大剣を掲げ、振り下ろす。


「な!」


 その先には雪姫が居た!

 急がないと! 折角の好感度アップチャンスだ!

 気づくのが遅れた!


「雪姫さん!」


 そう言って、とある男が飛び出して来た。

 隣のクラスのアドベンチャーラーもしている有名な男だった。

 大剣を剣で塞ぎ、足の空気を圧縮して、そこに立っている。


「あ⋯⋯」


「雪姫さん! 皆さん、逃げて! 速く!」


 刹那、現実に戻った生徒達と先生方は残った道へと走る。

 俺も千秋に手を引っ張られ行きそうに成るが、ライオンが目の前に居る雪姫は硬直していた。


 俺は雪姫へと近づいて、手を取り走らせる。


「あ」


「行きますよ!」


 千秋のもとに行って、俺は雪姫の手を引きながら道へと進む。

 雪姫は終始、さっきの男の事を見ていた。

 悔しい! そもそもこんな事して許されると思うなよ!


 少し行くと、開けた空間があり、そこで固まっている。

 だが、最悪な事にゴブリンの集団が現れたのだ。


『あれ? 俺達ってここで戦うんだっけ?』


『そうだアホ! えっと、銀髪でべっぴんな奴を拐うのが我々の仕事だ』


『りょーかい』


 俺は管理者だからモンスターの言語が分かるが、一般の人が聞いても鳴き声にしか聞こえない。

 あぁ、内容が内容なだけにめちゃくちゃ腹立つー。

 別に戦闘出来る能力者も数人居るし、危害は抑えられるだろう。

 しかし、⋯⋯あーグダグダ考えるのは俺の性にあわない!


「サモンズスペルカード、アダマン、サモン」


 1枚のスペルカードを取り出してリッチを召喚する。

 ローブを着て、赤い眼光を放つスケルトンだ。


「これは天音様。珍しいですね」


「あそこのゴブリンを片付けろ」


「承知致しました」


 アダマンは魔法を得意とする。

 しかし、この程度の雑魚なら近接の方が楽なのか、速攻で接近して杖を振るって倒していた。

 筋肉ないけど、脳筋な考えだな。

 その光景をじっと見詰めて来る雪姫。

 こ、これは⋯⋯どっちだ?

 スケルトンを召喚したのは間違えだったか?

 アップか? ダウンか?


「天音、凄いね。あんな強いスケルトンナイトを召喚するなんて」


「リッチな?」


「え?」


 さて、俺はさっきの場所に行くか。

 皆がアダマンに集中しているウチに。


「千秋はここに居ろよ」


 俺はさっきの道を戻る。


 スペルカードは作ってから数日で腐る。

 腐ると暴走してしまう。それを知らなかった当初は大変な目にあった。

 だから、定期的なメンテナンスが必要なのだ。他にも消去して新たなスペルカードを作るしかない。

 スペルカードが消費するアイテムだが、アビリティには1度作ったスペルカードは保存されるのだ。

 作るのは簡単だが、使えないと暴走してしまう。

 メンテナンスも面倒。

 なので、最低限のスペルカードしか俺は持ってない。


 ま、この程度なら関係ないか。


 さっきの道に戻って、隠れる。

 覗くと、アドベンチャーラーでパーティを組んでいる人達が溜まっていた。

 さっきの逃げる時に「俺達も加勢するぜ!」って行った奴らだ。

 そして、ライオンの奴も居る。

 互いに座って雑談している。


「あとはライナー達から報告があったら、そこに向かうだけだな」


「いやー策士だね」


「これで好感度アップは間違いなし! ゼウス、俺に管理者の資格をくれてありがとう!」


 ばーか。管理者を設定する神は別だわ!

 ま、こんな下級の管理者には知らされる事の無い事実だけど。

 しかし、あのアダマンでもしかしたら好感度アップしているかもしれない。

 他にも手を引いたので、それによって意識してしまうとか?

 それには感謝しよう。

 だから、誰も死なない超平和的な解決方法を使ってやるよ。


管理者同士之戦闘ダンジョンラグナロクを所望する!」


 右手を上に上げる。


《承認しました》


《ダンジョンラグナロクをここに開きます》


《以後、内部に侵入する事、外部に脱出する事及び応援要求する事は出来なくなります》

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