第26話 後輩が、ままならない

日曜日の昨日は、土曜日の疲れもあり(主に探索後の風俗で)、一日中ダラダラして終わった。


アパートの大家さんに、引っ越しの際世話になったので、歌舞伎町ダンジョンで大量にゲットしたドロップ品で自作したオーク肉食べ比べセットを礼として渡した以外は外に出ることもなかった。


大家さんは、以前渡した宮田強化合宿でドロップした迷宮食材を大層気に入ったらしく、度々良くしてくれていた。

布団すら持たずに引っ越してきた俺に、客用寝具一式や使わない家電や家具を無償で提供してくれるなど、俺の生活の質を著しく向上させてくれるなど、こっちが心配になるくらいに親切な人である。



月水金は外部講師として出向先である学校に出勤しなければならないので、駅へ向かうとホームで宮田と出くわした。


「おはざっす! 先輩、コレ、昨日換金してきたドロップ品の金と明細っす」


「おう。ご苦労」


封筒を開けると札と一緒に明細書が同封されていた。

十二万三千六百円也


「会社が買い取らない物品だけでも中々だな」


「多分、ウチの会社に卸した分だけでも100万弱にはなるみたいっすよ」


歌舞伎町ダンジョンの氾濫で大量にドロップした魔石や資源、アイテム等は参加者全員で等分した。


変異種である青いオーガのドロップ品以外は。


アレを売ればさらに大金が懐に入ることになるが、今はまだ手元に残してある。


入手難易度が高く、稀少な物なので買い手に困る事はない。むしろ、持ってることがバレたらこぞって買い取りの依頼が来るはずだ。

正直、面倒だ。

会社に売っ払う事も考えたが、今後も一応探索者として活動するなら、持っていても損はあるまい。


"大金ゲットで悠々自適生活"


それが、今の俺の目標である。



俺の等分された分は、宮田に渡して会社が必要とする分とそれ以外の物をそれぞれ処理してもらっていた。


「今月の給料日が楽しみだな」


「毎回あんな事に巻き込まれるのは勘弁っすけど、先輩が一緒ならボーナスとして、たまにならいいっすね」


「あんなの毎回あってたまるかよ。ま、でも、これが探索者が人気である理由の一つだろうな」


金の入った封筒をヒラヒラとさせて、ニヤリと笑いながらホームに入って来た電車へと乗り込んだ。


「あっ、そういえば、自分、またランクが上がったっす。早くもE級っすよ」


協会が定める探索者ランクなんかに興味もないので、俺の分の協会へのドロップ品の納品は、全て宮田の成果としていた。


俺は金さえもらえれば、別にG級でも構わない。


しかし、なんだろう……宮田より下ってのはどうも気に入らない。

なんとなく。


宮田は「ほら!」と、通称ドッグタグと呼ばれてる探索者用の認識票を見せてきた。


「フン!」


イラっとした俺は、ランクの所に"E"と刻まれたその金属板を指の力だけで半分に折り曲げてやった。


「ンギャーーー! な、何してるんすか!」

「宮田君、公共の交通機関の中で騒ぐのはやめたまえよ」


下り方面とは言え、中央線の電車内はそれなりに満員である。

宮田の奇声に乗客の視線が集まってしまった。


「ちょっとコレ、治るんすかね? 先輩、ちゃんと元に戻して下さいよ?」


「今は魔素が薄いから無理。学校着いて、気が向いたらな」


ギャーギャーと騒ぐ宮田のせいで恥ずかしい思いをしたので、立川駅まで寝たふりしとこ。




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