こんなパン初めて
宿木 柊花
メロンパン
僕はメロンパンでできている。
過言ではない。
寝る時も起きる時も病める時もメロンパンと共にある、それが僕。
だが、今日は違う。
温かい紙袋を抱えて公園のベンチに座る。
僕の心は小躍りし、口の中は洪水を起こす。ごくり、と喉が鳴った。
袋から温かい甘い香りが立ち上る。
少し前。
登校中でも抗えない香りに僕は長蛇の一部になった。
一時間後、ようやく足を踏み入れたそこは未知のメロンパンで溢れる夢の国だった。
遅刻だが悔いはない。
鼻から脳に訴える甘い香り、掴むと分かるクッキー生地の固さやパンの柔らかさ。
自然と指が震える。
存在感が違う。
クッキー生地がカリカリとして、土台のパンは舌の上でほのかな甘味を残して溶けた。ふわふわなんてものじゃなかった。
「雲だ」
晴れた空に悠々と流れる薄雲を食べている。脳が溶けるような幸福感に
もう一口、止まらないのは明白。
そして僕は遅刻するのを止めた。
こんなパン初めて 宿木 柊花 @ol4Sl4
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