第1話 お嬢様は入学する★



「……すごい。これがあの有名なノヴァーリス学園なのね」



 この学園は帝都にある皇族貴族が中心として通う名門学園だ。生徒の大半は貴族だが、学園長の方針により身分に拘らない自由な教育を心掛けているらしい。


 ホワイトブロンドの髪を揺らし、一歩足を踏み出すとそこには顔見知りの少女が立っていた。



「ティアラ、おはよう」


「ソフィア!」



 そう言って声をかけてきたのは一つ年上の侯爵令嬢のソフィアだった。彼女とはお互い両親が仲が良く、小さい頃から遊ぶ関係であった。


 そんな彼女は金髪碧眼に白い肌という誰もが羨むような美貌の持ち主であり、凛とした佇まいで紺のワンピースの制服を完璧に着こなす姿はとても気品が溢れていた。



「ティアラの制服姿、初々しくて可愛いわね」


「ありがとう。ソフィアも小説に出てた白薔薇のお姉様みたい!」


「ふふっ、そう?」



 私が褒めると、ソフィアは少し恥ずかしそうにはにかんだ。久しぶりの再会でほのぼのとしていると後ろから誰かが近づいてくる気配を感じた。振り返るとそこにはすらっと背の高い一人の男性が立っている。



「おはよう、ティアラ」


「カイル様!おはようございます」


「その制服姿も新鮮でいいね。よく似合ってる」


「あ、ありがとう…ございます」


「入学式の会場はわかるかな。一緒に行こうか?」


「えぇっと……、あっちですか?」



 するとカイル様は苦笑しながら、ぽんっと私の頭に手を置き優しく撫でる。



「残念ながらそっちではないな。案内しよう」



 そのまま自然な動作で手を握られ、思わず顔を赤く染めた。その様子を微笑ましく見つめながら、ソフィアも後に続く。


 カイル様はソフィアのお兄様で、実は私の婚約者でもある。物腰柔らかな優しい方で、昔から私のことも妹のように可愛がってくれていた。


 四年ほど隣国へ留学して今はこの学園の研究生という形で学んでいる。隣国からやっと帰って来たと思ったらとんでもなく背が伸びてて再会したときはとてもびっくりした。


 たぶん180cmは軽く超えている。元々王子様のような端正なお顔立ちをしていたけれど、さらに磨きがかかったように思う。


 ちなみに、私の身長は140cmしかない。


 並ぶとちょうどカイル様のお腹辺りの高さだ。

当然、婚約者には見えない。


保護者と幼女。


または年の離れた兄と妹。


この身長差に実はちょっと悩んでます………。



 政略結婚とはいえ、こんなに見た目に差があってはカイル様に申し訳ない。もしもカイル様が周りから幼女趣味と言われてしまったらどうしよう。学園は必ずしも婚約者の方と一緒といった決まりはないのだけれど……。



「知り合いがいた方が何かあったとき心強いだろう?」


「僕ら兄妹が一緒の方が見守れるから安心だよ?」



 と、お父様とカイル様に言われてオロオロしている内に決定してしまったのだ。


 確かに未知の場所に飛び込むのに、知っている人がいるというのは心強いのだが……。



 チラリと隣を歩くカイル様を見上げる。うう…。すごく目線が遠い………。



(……頑張って牛乳飲もう………)



 



*******************



★ティアラとカイルの身長差参考絵 


https://kakuyomu.jp/users/tomomo256/news/16816927863204993262



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