第10話 違うのです……
「本当に申し訳ありませんでした」
あれから数分後、ニーナが迎えに来た。
全て完璧にこなすと思っていたニーナが、涙目になりながら私を見ていたので、たくさん心配かけてしまったことを謝った。
リアム団長も私のことを探してくれているらしく、謝りに行こうとしたのだが、「俺が言っとく」とあの男に言われたので、おまかせした。
ニーナに「マリア様も心配していた」と聞いたので、私はとりあえずマリア様の元へ向かったのだった。
「リアムが勘違いをしていただけなのです。確かに考え事はしておりましたが、それは別のことに関してであって、決してあなた様を嫌っていたわけではございません。どうか、お許しください。」
「いえいえ!全然!気になさらないでください!」
マリア様に謝られると寿命が縮む。
私はマリア様に、本当に気にしていないことを伝えた。
逃げてしまった私が馬鹿だったのだ。
「マリア様はそんな方ではない」と、リアム団長に言えばよかった。
まぁでも、リアム団長の行動はマリア様を思っての事だったので、あまり責められない。
確かに、最近マリア様とすれ違っても何か考え事をしている様子ではあった。
大量の仕事も抱えていたらしいし、リアム団長が何かあったのかと心配するのも気持ちも分かる。
でも、だとしたら一体何を考え込んでいたのだろうか?
この世界に来て、まだ1ヶ月しか経っていない。
この世界のことなど、まだ何も分かっていないような女に、マリア様の悩みが解決できるだろうか。
いや、マリア様にはいっぱい助けて貰っているのだ。
私もなにか力になりたい。
私は意を決して、マリア様に何か悩んでいるのかと聞いた。
マリア様は、すこし躊躇ったあと、また私に謝罪してきた。
「申し訳ありません!」
「え!?」
理由が分からなかった。
リアム団長の件に関しては先程死ぬほど謝ってもらった。
他にマリア様に謝られることなどないはずなのだが。
「ここに来て1週間が過ぎた時、あなた様に頼まれたことがございますよね?」
「本のことですよね?あれでしたら、もう無事私の手元に届いておりますが……?」
「はい、それは存じております。謝りたいのはその事では無いのです。」
「あの……どういうことですか?」
私は状況がよく理解できず、マリア様にわけを尋ねた。
「大変申し上げにくいのですが、順を追って説明させていただきます。」
そう言って、マリア様は説明をし始めた。
私が本を送ってほしいと言ってから数日後、マリア様は本を召喚することに成功した。
しかし、本を本棚ごと召喚してしまったため、召喚された時に上手く立たず、本棚が倒れてしまったのだという。
「なーんだ!それくらい全然いいですよ!」
BL本が、召喚した時に破れてしまったとかなら、ショックを受けていたかもしれないが、本は無事私の元へ届いているわけだし、全く気にする必要はなかった。
しかし、マリア様はまだバツが悪そうな顔をしていた。
「違うのです……その……」
「?」
「あなた様が送ってほしいと言っていた本を……見てしまったのです……」
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