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 僕は遅い昼食を採りつつ、ようやく休憩に入った。草むらの上に座り、パンにハムを挟んだ物を食べている。飲み物は体力回復効果のある薬草を煎じたハーブティーだ。


 ただ、空きっ腹へいきなり流し込んだから、少し気持ち悪くなって何度か吐きそうになってしまったけどね……。


 それと自分でも気付かないくらいに疲労していたみたいで、猛烈な脱力感と激しい筋肉痛であまり動きたくはない気分。まぁ、ハーブティーのおかげで徐々にそれらも解消しつつあるけど、やっぱり無理し過ぎたかも。


 ちなみに今回の食材の準備と調理はミューリエが全て担当してくれている。いつもなら分担をしてやっているんだけどね。


「ねぇ、ミューリエ。そろそろ剣の扱い方を教えてよ。もう日が暮れてきちゃったし……」


 残り時間があまりないことに焦りを感じていた僕は、思い切ってミューリエに頼んでみた。


 すると彼女はハーブティーを啜りながら素っ気ない態度で答える。


「私に稽古をつけてほしいと願ったのはお前自身だ。ならば私のやり方に文句を言うな」


「でもさ……」


「アレスは剣の稽古が云々という以前に基礎的な体力がない。それをなんとかしない限り、剣を握らせるわけにはいかんな」


「体力がないのは僕自身がよく分かってるよ。でも明日中にはタックさんのところへ辿り着かないといけないんだ。このままじゃ……」


 僕は悔しさと悲しさで思わず強く唇を噛む。


 だってもしそれが出来なければ、僕はミューリエとお別れしなければならないから。


 ひょっとしてミューリエは僕と一緒に旅を続けたくないから、意図的に剣の稽古をつけてくれないのかな?



 ――いや、ミューリエはそんな卑怯な人じゃない。


 もし旅をしたくないなら、最初からハッキリと別れを告げるはず。彼女はそういう性格だ。


 だったらなんとか説得して、簡単なことでも良いから剣術に関する何かを教えてもらえないかな……。


 でもそんな僕のすがるような視線から何かを感じ取ったのか、ミューリエは少し不機嫌そうな顔になってこちらを睨み付けてくる。


「剣に限らず、何事も技術を磨くには一朝一夕にはいかない。私は前にそう言ったような気がするが?」


「分かってる。だから僕は少しでも腕を磨きたいんだ」


「だが、その基本となる『身体』が未熟では、私の動きに付いてこられないぞ?」


「……じゃ、剣の扱い方は教えてもらえないってこと?」


「現時点では、その通りだ。強くなるには地道な積み重ねしかない。近道など私は知らん。だから私のやり方で稽古をつけてやっている。気に入らないのなら今すぐにやめろ」


「…………」


 ミューリエの突き放すような言葉に僕は絶句する。淡い期待も完全に打ち砕かれた。


 ここまでハッキリと否定されたら、とりつく島もない。



 ――さて、どうしようか?



●素直にミューリエの言葉を受け入れる……→63へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862195242851


●やっぱり納得がいかない……→56へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862195093119


 

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