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 僕はここで走るのをやめたくない。体力はとっくの昔に限界を超えているし、気力だっていつまで続くか分からないけど、倒れる寸前まで走り続けるんだ。


 僕は絶対に試練の洞窟を突破しないといけないんだから。


「ぐ……うぅ……。僕は……走るのを……やめたくないッ!」


「やれやれ、本当に強情なヤツだ……。よく言えば意志が強い、悪く言えば石頭だな。分かった! 休息した分はタイムリミットを延長してやる! だから素直に休むのだ!」


「っ? ホ、ホント……だね……?」


「あぁ! 嘘はつかんっ!」


「てはは……は……」


 ミューリエの言葉を聞いた途端、不意に僕は全身から完全に力が抜けた。休息をしたあとも稽古をつけてくれると分かって、安心したからかもしれない。


 そして勝手に体のバランスが崩れて、そのまま倒れ込みそうになる。当然、それに抗う力なんか残されていない。とてもじゃないけど踏ん張れそうにない。


 ――でもその時、僕の体は柔らかさと温かさに包まれた。


 気付くと僕はミューリエに支えられていて、程なく心地の良い力が体の中に流れ込んでくる。


 チラリと視線を向けると彼女の体は蒼い光に包まれ、それが僕の全身に作用しているようだ。どうやら彼女は回復魔法をかけてくれているらしい。


 直後、僕の意識は薄れ……自然と……目蓋が閉じ……て……。


「まったく、極端なやつだ。このままでは身体が壊れてしまうぞ? ……さて、そろそろ賭けに出てみるか」


「…………」


 ミューリエが何かを話していたような気がするけど、薄れゆく意識の中ではその内容がどんなものだったのかまでは分からなかった……。



 →32へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862194392772

 

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