第6話 出会いの話②
アンザイレンなる非公式冒険者パーティーの選考会の会場にはおよそ30人近くが集まっていた。
{どいつもこいつも品のない顔つきばかりだな}
ヴァルナダはため息混じりに呟く。
「実力があれば経歴は問わない。 つまり実力さえあれば犯罪者であろうと採用し、そこで活躍すればかなりの額の報酬も狙える。 そりゃ色んなやつが来るよ」
アラリウルはコソコソと目立たないように身をかがめる。
「ちょっと! 私の剣返して!! 」
群衆の中から突然そんな声が聞こえてきた。
アラリウルが辺りを見渡すと、どうやら近くで揉め事が起きてるようだ。
アラリウルは少し気になり、声の聞こえる方へ向かうと数人の男たちが、1人の少女を取り囲んでいた。
「おい、も1回言ってみろって! お前はどうしてここに来たんだ? 」
ガラの悪いその男たちは少女の剣を奪い、ヘラヘラと笑いながら彼女の頭を押させつけている。
少女は必死に頭に乗せられた手をどかそうと抵抗する。
「私はこのアンザイレンに入って、 活躍して、 勇者になるのよ! 」
少女がそう言った瞬間、男たちは下品な笑い声をあげる。
「ギャハハハハハハ! 勇者だと? ここ数百年その領域に至ったやつはいねぇんだよ嬢ちゃん! 」
「言ったわね! 覚えておきなさい、私はリンチャン・カレイア! いずれ勇者になる女よ! ! 」
取り囲んでいた男たちだけでなく、周りにいた参加者達も少女の名前を聞きクスクスと笑い出す。
「ギャハハ、随分の可愛らしい名前の勇者様だ。 だが勇者様にはこの立派な剣はまだ早いと思うぜ! 」
そう言うと男はその剣を自身の懐にしまいこんでしまう。
「その剣は絶対に渡さない! 」
リンチャンはそう言うと男の手にガブリと噛み付く。
「いっでぇぇぇ、 このガキ!! ぶっ殺してやる! 」
男が拳を振り上げた瞬間 ― アラリウルがリンチャンと男の間を通り過ぎる。
そしてその間に左目の眼帯を少し下げ、その真紅が男の瞳に写り込む。
{殺す}
男の頭の中にヴァルナダの声が響く。
「ひ、ひぇぇえぇ」
その瞬間男は膝から崩れ落ち、失禁しながら倒れ込んでしまった。
騒ぎが大きくなり、どさくさに紛れてアラリウルはその場を離れ、リンチャンもその場から剣を取り返して逃げ去った。
{やつは3度死んだぞ♪ }
アラリウルの左目の真紅の瞳はいわば魂レベルの存在となったヴァルナダとこの世を結ぶ繋ぎ目だ。
そのため、アラリウルの左目を見ているものはヴァルナダの存在を感じることが出来るようになる。
さっきの男はヴァルナダの凄まじい魔力と殺気にあてられて、自身が3度死ぬ幻覚を見たのだ。
{しかし、あの小娘を救うことに私の力をつかうとは…… はっ、 まさかリウルあんな年端も行かない小娘を… }
「そんなわけないだろ。 …気まぐれだよ 」
{そうか}
ヴァルナダには何となく理由が分かっていた。
アラリウルはリンチャンの姿にベルを重ねていたのだ。
{罪悪感…… これには慣れんな }
ヴァルナダは魂を一体化しているためアラリウルの感じている感情にも反応出来る。
ベルを救えなかったというアラリウルの強烈な罪悪感がヴァルナダの胸を締め付けていた。
突然、選考会参加者全員が空間の揺れを感じるほどの強烈な空間魔法が放たれる。
「聞こえるか! 野蛮人ども」
かなりの音量が響き渡り、全員が少し顔を顰める。
「その様子は聞こえているようだな、 アタシの名前はレリカ・ラーレリカ。 冒険者パーティー“アンザイレン”の第3部隊の副官をしている」
見事に鍛えられた筋肉質な体を見せつけるように露出度の高い服を着たレリカは、長めの木の棒を自身の前に突き立て、威風堂々した態度で立っている。
その姿にそこにいる誰もが、彼女が強者である事を一瞬で悟る。
「試験が始まる前に1つ」
{なんだ? }
アラリウルはヴァルナダに向けて話す。
「今回は合格ラインギリギリで受かる予定だから、絶対に目立ちたくない。 だから、ヴァルナダの闇魔法は使わないよ」
エリート後輩の犯した罪を着せられパーティーを追放されたエクソシスト(祓魔師)だが《かつて世界を滅ぼした悪魔女王》に溺愛され契約を結び、第二の人生で最強の祓魔師へ プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy
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