不明事項

バブみ道日丿宮組

お題:生きている帰り道 制限時間:15分

不明事項

 物心がつく頃には私は孤児院にいた。

 赤ん坊の状態で門の前に手紙と、ネックレスと一緒に置かれてたらしい。

 生後3ヶ月ぐらいのそこそこ健康だったらしい私は、医者に見せられて特に病気もなく、手紙通りの名前が当てられた。

 その他といえば、手紙と一緒に数百万のお金が寄付されてたらしい。

 子供が捨てた問題は極めて重大であるが、お金が孤児院もしくは善意がある人以外に拾われたらどうしたんだろうと、私の母と父に思う。

 とはいえ、そういうこともあって孤児院の生活は裕福になり、私はいじめも孤独になることもなくなじめていけた。

「……いた」

「だ、大丈夫? つ、強く投げすぎちゃった?」

 そんなことはないよと首を振り、起き上がる。

「男の子だからね、球速があがってきたんだよ」

「え! そうかな!」

 嬉しそうな顔をした瞬間悲しそうな顔で私の手を見てきた。

「ん、どうかした? あぁ、棘かなんかで斬っちゃったんだね」

 不安そうに、申し訳なさそうにみるので、

「大丈夫だよ、お姉ちゃんだからこんな痛みへっちゃらだよ。それに男の子のなんだから、そういう時はメソメソしちゃダメ! お姉ちゃんみたいにみんなを引き行ってくれるようになってくれなきゃ」

 えーと男の子は私の傷のことを忘れたのか不満たらたらに文句をたれる。

 後ろに隠し、首越しに手のひらを確認してみると傷は綺麗さっぱりなくなってた。

「……やっぱ痛いの?」

 それが見えないように私はボールを拾い上げると、孤児院に向かって歩き出す。

「ほら、大丈夫だよ。そろそろ帰らないとみんな心配するよ。来週の試合出るんでしょ?」

 う、うんと少し気にしながらも男の子と私は住み慣れた孤児院へと戻った。


 この力に気づいたのは、幼稚園ぐらいの頃だった。


 車にひかれ電信柱に頭を強打し、血だらけで腕も反対方向に曲がってそれはもうすごくグロかったらしい。でも、その状態で意識を取り戻したものだから、運転手は気が動転して私が救急車を呼ぶことになった。

 救急車がくるころには割れた頭蓋骨や、曲がった腕は元に戻り、ちょっとくらっとした血の足りなさも解消した。

 そのおかげで救急車での応急処置は簡単なものだった。

 車でひいたおじさんもショックでその時の記憶がなかったのが幸いして、あまり深い罪にはならなかったらしい。

 ただーー致死量。

 しかも人間の流れてる血以上のものが現場に残されてたのだけが、問題となった。他に殺人、事故があったのではないかと言われてるが目撃者はいない。

 孤児院の道はそもそも人通りも少ない。

 だからこそ、道が人間の代わりに傷ついて血を流したと噂され、『生きている道』といわれるようになった。


 そんなこともあってか、孤児院の帰り道はあの時のことを思い出す。

 そして手紙にあった『あなたは普通の人間の生活をしてほしい』という言葉。

 私は人間なのか、違うのか。答えは今のところでてない。

 健康診断も大丈夫だったし、血液型も問題ない。

 中学試験も通った。

 何も変わらない。


 ただ、ナニかが違うーーそれだけ。

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不明事項 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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