不思議な紙との生活
バブみ道日丿宮組
お題:箱の中の小説の書き方 制限時間:15分
不思議な紙との生活
箱の中に生命体がいるとしたら君はなんて答えるだろうか?
『ハムスター』、『熱帯魚』、『インコ』
大抵そんな答えが返ってくるに違いない。
しかし、僕が実家の倉庫で見つけたのは、開けられない箱に入った紙。
案外そこまでは普通とはいえば、普通かもしれない。博物館にあるものと一緒で歴史的価値があるもの、壊れやすいものなどの関係、セキュリティー上の関係でそういう風に触れさせないようにしてる。
水族館ではもちろん水の中の生命体だから、動物園は肉食と草食と彼らの生き方が違うから。
そしてタンスなどの箱はものを整理するために存在する。
だから……この箱の中に入った紙もそういった何か特別なものなのかもしれないーーと調べてみたけれど、特に専門家などに見てもらったがただの紙ということだった。まぁもちろん今現在作られていない方法で作られたものであり歴史的価値はあるとのことだった。
あまりの落胆ぶりか、その紙の箱は僕が管理することになり部屋に置くことになった。
元より僕は読書家で、1日に時間があれば数冊も読みふけてしまうぐらい熱中者。そういう意味でいえば、昔の著者が書いた紙が家に自分の部屋にあるとなれば興奮するものだ。
レイアウトも光で色あせないよう、空気の換気もしっかり(密閉されてるため関係あるかはわからないが)した。
で、不思議なことが起こり始めたのは、最近になってからだ。
本を読むうちに自分の中にある物語を書こうと小さい頃から挑戦しては未完成、駄作と悲しい思いを繰り返しつつもやってきたことが箱の中にある紙をみるとすんなりと頭にイメージ、構成、書き方が浮かんでくるようになった。
もちろんただのオカルトで、たまたまストレス発散で自分が気に入ってるものを見たからそうなったかと思ってはいたのだが、違った。
必ずといって、つまりそうな時に見つめるとあっという間に問題が解決してしまうのだ。読み直しても、書き直してもいい文体に変わってくる。
これは魔術なのか、怪奇現象なのかと怪しつつも、
「……」
箱の中の紙を見つめる。
しかし、紙は紙でしかない。ライトアップしても古い材質感が目立つだけで特にこれといって何か怪しい文様が浮かんだりという不可思議さは起こらない。
気のせいだと、また文を書き始めるとまるで小説の書き方がパソコンに入ってるデータベースから引っ張り出されるかのようにすらすらと動いてく。
もちろん、思考は自分のもので何か趣向が変わったということはない。
あるのは……そういわゆるスランプが箱をおいてからなくなったということだ。
家族に相談しようかとも、少し紙を見るのをやめようかと思ったが、一冊の封筒で審査が通ったと聞いた時、僕はこれは運命だったのかと感じ箱の中の紙とともに生きることを決めたのだった。
不思議な紙との生活 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます