彼女と僕

バブみ道日丿宮組

お題:失敗のギャグ 制限時間:15分

彼女と僕

 ごまかしというのは言葉だけで伝えるのは大変だ。

 何より彼女が表情を滅多に変えないこともある。

 メインイベントが近づくにつれて、失敗した時の一発ギャグのようなものも考えなきゃいけないかもしれない。いや……どうやってごまかすべきか?

 愛はあるし、強制でもない。きちんと証明しあってる。

「……?」

 今も彼女に面白い話をし終えたつもりなのだけど、彼女は首をかしげるばかりで話がうけたのどうかわからない。

 付き合いはじめてかれこれ5年でも……これなのだからむしろ僕のほうがダメダメなのかもしれない。彼女の好きなものは当然わかるとして、やっぱり表情をどこに行ってもほとんど変えてくれない。

 笑った表情はとても可愛らしくて待ち受けにしてるくらいだけど、バレたらおそらく削除対象だろう。なぜだか彼女は自分の笑顔ってのが好きじゃないらしい。

 無表情で、暗い顔というのがお気に入りというべきなのか、無口でクールなキャラクターでいたいらしい。

 小学校からこうだったと友だちに聞いたことがあるのだから、おそらく素なのかもしれないが、僕が告白した時は確かに笑って喜んでくれてた。

 だから、表情を変えたくないってことはないと思う。

 微妙な変化は僕もわかるようになってきたし、機嫌を損ねることも怒らせたことも、優しく慰めてくれてることもわかる。

 でも、メインイベントである『アレ』だけは失敗できない。

 彼女の過去にいつか触れることはこの先当然あるだろうが、それはいつになるのかはわからない。

 婚約の約束はした。

 そうーーメインイベントである結婚式だ。

 さすがに結婚式だけはもう少し表情をごまかしでもいいから何かしら変えてくれないと親戚内で何をいわれるかわからない。

 ただでさえ、僕は家の中で落ちぶれなのだから。

「……楽しいよ」

「ごめん、変な顔してた?」

「ううん、顔はいつも変」

 彼女なりのフォローだったのか、休憩に使ってたベンチを立ち上がると彼女は僕に手を差し伸ばす。

 デートの続きをしましょう、と。

 言葉ではなく、行動で示す。

 若干の優しい表情になってるのはきっと僕にしかわからない。 

 それでもいいと思うけど、僕は彼女の評価が親戚の中で叩かれるのが自分以上に嫌だ。

 彼女は世界一可愛くて、素敵な女性なんだ。


 だから、僕はその手をとり決意を新たに考えることを再開した。

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彼女と僕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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