克服とそれから
バブみ道日丿宮組
お題:緩やかな克服 制限時間:15分
克服とそれから
足が動かなくなってからはや2年が経過した。
「お兄ちゃん、リハビリ辛くないの? やっぱり車椅子とかのが……」
妹が心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
できるだけ笑って言葉を返そうにも、
「だ、んだん、とな、なれな、いとな」
呼吸の乱れと今までとは違う感覚で苦痛の印象を与えないようにするのだけが精一杯。
「そう……辛くなったら、いってね? すぐボタン押すから」
「あ、あぁ」
助かるという言葉は続けられなかった。
どんなに頑張ったとしてもいきなりなくなったものが返ってくるわけがない。
緩やかにリハビリはしなきゃ、なくなった右足は義足として成り立たない。いや今はむしろ左足の方に違和感があるか。
この違和感も少しずつ克服しなければいけない。相棒と呼べる新しい身体なのだから。
それから10分ほどリハビリルームで歩行練習し汗をかいた俺は妹に連れられるがままにシャワー室、飲料水や、栄養物の補給を促された。
「さすがに過保護すぎだろ? お兄ちゃん大好きってか?」
「ダメなの? だって私をかばったせいでお兄ちゃんの足がーー」
雫をこぼしそうな瞳になった妹の頭をぐしゃぐしゃとなでる。
「な、なに!? ちょ、ちょっと恥ずかしいよ!」
「兄が妹を守るのはある意味宿命みたいなもんでかっこいいだろ」
「死んじゃうかもしれなかったんだよ!」
もはや泣きたいのか、恥ずかしくて逃げ出したいのかよくわからない表情に変わった妹は俺のなでた手を取る。
「だから、私はねお兄ちゃんがちゃんと幸せになってくれるまで見守るって決めたの」
「そんな自意識過剰にならなくていいぞ。死ななかったのは事実。それでいいじゃないか」
堂々巡りしそうだが、これ以外の言葉は言えない。
妹もそれは理解してるのかただ撫でられ続けた。
しばらくして、長いリハビリも終わりきちんと歩けるようになった時、両親と親から衝撃的な事実を聞くことになるとは思いもしなかった。
だから、あんなにも妹が俺にべったりと小さい頃から一緒にいたのかと、妹と俺……いったいどこに察知能力の差がついたのかは知らないが、今は2人で静かに大学生活を満喫してる。
新しい家族もそのうち増えるかもしれない……しな。
克服とそれから バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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