1 新しい学年で

「ねえねえ、昨日のクイズ番組見た?」

「当然‼あの人、すっごい面白くて、爆笑しちゃったよ、家族揃って‼」

「だよねだよね、私も同じ‼」

「ねえねえ、そういえばさ、担任の先生って誰だろう?」

「「「知るわけないじゃん‼」」」

アハハハハハハハ……。

人がまばらな4-3の教室では、色々な話で盛り上がっている。

ちなみに、私____久保樹々は、自主勉強をしております。

「あ、池川はよ‼」

「あ、はよ!」

あ、アイツ、来たんだ。

今日来るの早いな。

アイツとは、今誰かが挨拶していた池川蒼也のことだよ。私の席の左隣だ。えっと、私の……片想い相手。で、お互い記憶のない幼馴染で、今となっては男親友だよ。

「樹々、はよ」

「はよー」

挨拶してきたから、フツーに私も返す。

めちゃめちゃ綺麗な4-3の教室。そう、今日は始業式。

登校時刻は08:05。今は08:03なのに、まだ十人ほど来ていない。

私が教室に入るのは、いつも07:45だけど。

自主学してたけど、私は小説も好きだから、去年のクリスマスプレゼントでもらった小説を読むことにする。

「それ、何?」

ランドセルをしまいに行く前、蒼也が問いかけてくる。

「え?ただの小説」

「いやいや、ただじゃないだろ。めちゃめちゃページ数多いじゃん」

「え、そう?539ぺージだけど」

「いやそれが多いんだって」

呆れたような顔をしながら蒼也はランドセルをしまいに行く。


キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン…………


チャイムが鳴った。

先生来ないのかな。

まだ先生が誰か知らないけど。

ガラガラッ

前のドアが開いた。

「おはようございます。」

「おっはよーございまーすっ‼」(4-3のみんなの声)

黒板の前に立って、ドアから入ってきた担任であろう先生は言う。

「依田桜です。私、みんなと遊んだり、仲良くするのが大好きで、みんなと一緒に遊びたいです‼よろしくお願いします。」

「はーい」

担任の先生____依田先生は、みんなを見渡してよく通る声で言った。

健康観察が終わって、朝学習でもやるのかと思いきや、先生が何か言う。

「それで、今日はこのクラスに転校生が来ます。」

「えー‼」

あ、違和感当たり。

私の席の後ろ、クラスみんな来てるのにこの机だけ誰もいないと思ったんだよね。

ガララッ

「うわー……」

クラス皆が小声でつぶやくのを、私は聞き逃さなかった。

だって、そこにいたのは、とても美人な人だったから。

腰まである栗色の髪。

シュッとした顎。

綺麗な目。

何もかもが完璧なのでござる。

「あたし、坂木飛羽って言います‼楽しい学校生活を送りたいので、皆さんサポートお願いします‼よろしくね‼あっ、あたし三重人格です‼」

ぎょえっってみんなが目を見開く。

想像よりやんちゃそうだったから。

あとそれと、『三重人格』っていう言葉に驚いたのかな。

蒼也も、

「ひょへーっ……」

って言ってた。

「坂木さんの席は、久保さんの後ろだね。久保さん、手、挙げて‼」

「はい‼久保樹々です‼」

「樹々だね‼よろしく‼」

そう言うなり、転校生____坂木さんは、天使の笑顔を見せる。

その笑顔に、男子だけでなく、女子まで見惚れていた。

こっち側に歩いてくる坂木さん。

まだ何か言いたげだった。

「何?」

聞いてみた。

「…あのですね、わたくしのこと、飛羽って呼んでいただけると嬉しいのですが」

あ、これ何人格だろう。

「あ、言っときますが、これ、第一人格で、三重人格を自覚しています。第二人格は、ちょっとやんちゃな感じで、そっちも自覚してます。第三人格が、すっごく性格悪いので、すぐ見分けつくと思いますよ」

「あ、はい」

「それで、質問の答えは?」

『ダメだよ、坂木さんにして‼』

心の中のもう一人の自分が不意に叫んだ。

え?どういうこと?

でも、言う通りにした。

「いや、大丈夫です。坂木さんって呼びます。」

そう言うと、坂木さんは拳を握ってグッと力を込める。

何十秒経っただろう。坂木さんは握っていた拳を下ろし、その代わり両手を合わせて、ニヤリと笑った。

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