クライマックスフェイズ

★シーン9:形勢逆転(全員)

〇解説

 いよいよ水上ステージへと上がったPC達。そこには捕らわれた楠木夏織と、自我が無いように立ち尽くす木戸綾香がいました。彼女たちを助けるためには、互いに争うしかない。そう思っていた矢先、“悪豚”が見せた一瞬の隙をついて、二人はどうにか脱出に成功します。こうして形勢不利となった“悪豚”はしかし、不敵に笑って見せるのでした。

 最終戦闘前のシーン。シーン8での何気ない選択が、戦闘の難易度を決定します。なお、戦闘終了条件は「“悪豚”の戦闘不能」です。


〇描写

 時刻は午後6時ちょうど。突然、『夢の国』の国は暗くなり、街路には街灯が、アトラクションには電飾がともる。同時に、湖ではスポットライトで照らされた水上ステージが浮かび上がった。


 湖沿いにあるテラスには多くに人々が押しかけ、先ほどまでイベントのことすら忘れていたとは思えない熱狂ぶりで、勇者の登場を待ちわびている。


 パンと乾いた音とともに、紙吹雪が舞う。そして音楽が流れ始めた水上ステージに最初に現れたのは、昼間イベントを告知していた恰幅のいい男だった。


 「ハロー、エブリワン! お待ちかねでござる! 今夜のショーは、見ごたえのあるものになるでござるよ!」


 パンと手を打つと、ステージに檻が登場する。中では楠木夏織が、不安そうに檻を握っていた。


 「勇者の努力むなしく、王女は未だ檻の中! これも全て、賊が仕組んだ罠でござった!」


 その声に合わせて、今度はぼんやりと立ち尽くす木戸綾香が照らされる。


 「しかし、賊も追い詰められてござった。というわけで、UGNのエージェント! いるのはわかっているでござるよ! 出てくるでござる!」


 湖の湖畔から水上ステージにつながる長い橋が出来上がっていく。それは彼の言葉を表すように、PC②、PC④がいる方に伸びるのだった。


 「早く来るでござるよ! さもないと…でふふ、薬漬けのこの女を、いたぶることになるでござるなぁ~」


 と木戸綾香の体をなでる。観客はショーの演出だと、さらにボルテージを上げる。




 PC②、PC④がステージに上がると、わっと観客が沸いた。それを満足そうに見た男は手の届く位置に木戸綾香を置いたまま、続ける。


 「じゃあ次! 王女を助けようという勇者! 最後のチャンスでござるよ! おぬしらもオーヴァードでござろう! この賊たちを倒せば、王女は返してやるでござる!」


 そう言って今度は、PC①とPC③がいる方に橋を伸ばす。




 PC①、PC③がステージに立つ。勇者の登場に観客たちの歓声は最高潮。それを聞き届けながら、男は悦に浸っている。 ※ここでPC②④は〈知覚〉9の判定を行なう。成功すると、木戸綾香が「何とかして、彼女は私が助ける。だから二人は“悪豚”を!」と小声で言っているのを耳にする。




 やがて、


 「それでは最後にこのお方、この『夢の国』の絶対的神、姫様に登場していただくでござる!」


 スポットライトに照らされたのはステージの上空。そこにドレスを着た一人の少女が、文字通り浮かび上がっていた。

 ゆっくりと降りてきた少女は静かに、ステージに降り立つ。時を忘れたように静まっていた観客のボルテージは再び最高潮になる。

 男も「下から見る神のおパンツ、最高でござる!」と感動に打ち震えている。


 その隙だった。

 立ち尽くしていた女性が力を振り絞り、目にも止まらぬ速さで駆けると、能力によって強化された力で檻を破壊する。そうして中にいた少女を抱くと、


 「安心しろ、もう大丈夫だ」


 と語りかける。ようやく事態に気付いた男が檻を再生するも、もうすでに二人は檻の外、PC②とPC④の背後にいる。

 しかし、そこで力尽きたように、へたり込むと


 「これでこの子は、大丈夫だ。だから、すまないが、やつの捕縛を手伝ってやってほしい」


 とあなた達にお願いする。彼女の言うやつとは言わずもがな、恰幅のいい男を指していた。


 「私は大丈夫! だからあのくそデブをやっつけちゃって!」


 今度は楠木夏織が、助けてくれた女性を支えながら、あなた達に言う。その顔は昼間のようなどこか疲れたようなものではなく、やっちゃえ、と挑戦的な笑みが浮かんでいた。


 「小癪な真似を、でござる!」


 形成が傾き、悪態をつく男。一方で観客は、熱い展開に盛り上がりを維持している。


 「だが残念でござったな。この領域では、拙者たちは最つよでござる! 姫様のおかげでござるな!」


 と不敵に笑う。



▶シーン8「王女救出!」で“貪食”の問いを肯定していた。もしくはそのシーンを発生させていない。


※以下セリフ

 「そう、ですね。私の勉強を、邪魔するのは、ダメ、です」

 「きっと、あなた達は、知っています。でも、私は、知りません。ジローも、知りません。だから、教えて、ください」

 「安心して、ください。大丈夫、ですよ? あなた達の、幸せは、思いは、心は。私の中で、私だけの世界で、永遠に、なります。あの人たちと、同じように…」


 と熱狂する観客たちを、慈しみを帯びた目で眺める。


 「さあ、教えて、ください。あなた達、人間を」

 「姫様の力があれば、無敵でござる!」


 どこかかみ合わない二人。しかしこの『夢の国』に働く不思議な力は、あなた達だけに牙をむくのだった。

 ※最終戦闘へ。終了条件は「“悪豚”の戦闘不能」です。



▶シーン8「王女救出!」で“貪食”の問いを否定していた。

※以下セリフ

 「そう、ですね。私の勉強を、邪魔するのは、ダメ、です」

 「でも、彼らも、幸せを、知りません。私と、同じです。ジローも一緒、です」


 その少女の言葉を受けて、男は慌てる。


 「な、何を言ってるでござるか? みんな拙者や姫様と違って、幸せを知っているでござるよ?」


 言い募る男に、しかし少女は首を振る。


 「違い、ます。あの人と、約束、しました。一緒に、勉強、するって」


 そう言ってPC(シーン8に登場し、問いを否定したPC)を指さす。


 「だから、みんな、平等です。みんな、一緒に勉強、しましょう」

 「そんな、でござる…」


 願うものは何でも手に入り、人々が悦楽に落ちていくこの空間の不思議な力は、少女に応えるように、ステージにいる全員に力をもたらすのだった。

 ※最終戦闘へ。終了条件は「“悪豚”の戦闘不能」です。

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