「神さまも見ている」
その山あいにある集落は、昔から神楽が盛んな地だという。
生活する人々、特に子供たちが一番楽しみにしているのは「大祭り」の日だ。
お祭りが行われる神社は、出店がちらほらと姿を現す夕方から一気ににぎやかになる。
祝詞を挙げる神事が厳かに行われたあとは、人々の大好きな神楽の時間だからだ。
真っ暗な空が白ばみ、夜が明けるまで夜通し舞われる里神楽。
この日だけは、普段は夜更かしが許されない子供たちも、「伝統芸能である神楽に親しむ」という大名義の元、夜、眠くなるまでいつまでも起きていいという、特別な日なのだ。
白い悪狐にさらわれそうになってきゃーきゃー逃げ惑ったり、恵比寿さまから贈り物をもらおうと必死になったりと、それぞれ楽しそうに夜更けを楽しむ子供たち。
山間地の小さな集落だ。
神楽に来ている子たちの家や人数は、神楽を楽しみながら、子供を見守る大人たちは把握している。
が、たまに明らかに人数がおかしいことがあるという。
どう見ても、子供の数が多い…気がするときがあるそうだ。
そういうとき、深く詮索しないという。
というのも、
「神さんが混ざってるんだろうて。神さんを楽しませる神楽だから、神さんも近くで見たい、楽しみたいんだろうや。
神さんが近くで見たい神楽を楽しませてもらっとるわしらは幸せよのー」
そういうことだから、ということである。
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