二千十二年四月四日(4回目)

 二千十二年四月四日(4回目)

 どうやら自分は死ぬたびにこの時間に戻るらしい。

 二回目は意味もわからず騒ぎ散らして父に刺殺、三回目は家を出ることには成功したものの後ろから誰かに突き飛ばされて階段から真っ逆さま、おそらく首の骨がぼきりと折れて絶命した。

 この日はちょっと色々な事件が起こった日だったのでなんとなく記憶に残っているが、自分の身には特に何事も起こらなかったはずだったのだけど。

 だけどそれは置いておいて、せっかく過去に戻れたのだから私のクソみたいな人生を変えてしまっても問題ないのでは?

 そうすれば私はあんな目には合わなくて済むし、ひょっとしたらあの人のことも……


 二千十二年四月五日(2回目)

 やっと二千十二年四月四日のループを抜け出せた、抜け出すのに二十三回もかかってしまったのだけどどういうことだ。

 初回の私の運はどれほど良かったのだろうか、というくらい死亡フラグが乱立しいる四月四日って一体なんなんだろう。

 昨日も結構酷い目にあったけど、それのおかげであの人に会えたのでまあいいか。

 というかあの人、隣のクラスの人だったのね、知らなかった。

 四月四日を抜ければ高校卒業までは多分私の方には変な死亡フラグはなかったはず。

 だから、なんとか頑張って平穏無事なハッピーライフを手に入れてやろう。


 二千十二年八月二十四日(2回目)

 違う。

 違う違う違う違う。

 この人はあの人じゃない。

 あの人はそんな目で私を見ない、あの人はそんなふうに笑わない。

 違う、違う、違う!!

 あの人は本当は笑えないのだ、それでも私のために無理矢理下手くそな笑顔を作ってくれる人だった。

 あの人は本当は優しくなんてないのだ、それでも私が泣くから優しいフリをしてくれる。

 あの人はそんな壊れ物を触るような手つきで私を撫でない、こちらの身体が痣塗れになるまでぐちゃぐちゃにして、それでこれ以上壊さないようにと部屋の隅っこで膝を抱えて、近寄れば野良猫のように威嚇してくるのだ。

 違う、違う、違う、違う。

 この人は、あの人じゃない。

 私のあの人じゃない。

 このままだと、この人はあの人には成ってくれない。

 じゃあ、どうすればあの人に会える?

 もう一度、やり直せばいい。

 あの日まであの人に関わらず、一回目の人生と全く同じ人生をもう一度だけ歩めば、きっともう一度。


 二千十二年四月四日(XXX回目)

 死ぬほど吐いた。

 無理だった、もう無理だった。

 嫌だ、嫌だ。

 ダメだった、無理だった。

 一回目の人生と全く同じ人生を繰り返すだなんて、耐えきれない!!

 あんなの心がいくつあっても足りやしない!!

 あの人以外に触られたくない、あの人以外に見られたくない、あんな人生をもう一回、だなんて。

 だけど、繰り返さなきゃ。

 そうしないと、あの人には二度と会えない。

 あの子にだって、会えなくなる。


 二千十二年四月四日(XXXX回目)

 もう無理。

 諦めよう。

 あきらめて、終わる方法を探そう。


 二千十二年四月四日(XXXXX回目)

 何度も試したけど、終わらせる方法は見つけられない。

 どんな終わり方をしても、結局この日に戻ってきてしまう。

 私に押せるのはリセットボタンだけで、電源ボタンを押す権利は与えられていないらしい。

 ……本当はひとつだけ、電源ボタンを押す方法に心当たりがある。

 これが例えばゲームであるとするのなら、私が終わらせてきた今まではバッドエンド。

 だから、ハッピーエンドかトゥルーエンドに辿り着けば、きっと。

 だけど、そうしたら私は永遠にあの人に会えなくなる。

 それどころか、こっちの方がいいとあの人のことを二の次にしてしまう可能性すらあった。

 それだけは、絶対に嫌だった。

 だから今回も、私は電源ボタンを探すフリをしながらリセットボタンを押すのだ。


 二千十二年四月四日(XXXXX回目)

 楽に「一日を終える」方法を探していたら、偶然あの人モドキがあの人そっくりな顔をするルートを見つけてしまった。

 しばらくはこの方法で「一日を終える」ことにする。

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