第9話 古代ダークエルフ迷宮
ルビ達は、サクサクと地下迷宮10層まで来ていた。
古代ダークエルフ迷宮のだけあって暗い、とにかく暗い。
ダークエルフは、エルフとの戦争ではるか昔に全滅したとされているが、詳細を知る書物は残っていないらしい。
壁には、灯る魔法燭台が一定間隔で設置されており、不気味な薄暗い青光なのでルビ達の顔を青白く染める。
また、あちこちにトラップはあったが、シーラのトラップ回避魔法のお陰で順調に進んでいた。
「どうして魔物がいないのだろう?このクラスの迷宮だと魔物が棲みついているのが普通だよな~。」
ルビが不思議そうに首を傾げているとアーネが答える。
「もう一通り探索は終わっている迷宮だし、守護するお宝もないからね。冒険者さえ滅多に寄り付かないもの。あるとすれば薬草くらいね。ほらっ!そこに生えてるでしょ。」
「本当だ。」
ルビは、素直にアーネの知識に感心する。
「でも変ね。通常はこんな地下10層まで来なくても取れるはずだけど……きっとこの層までの薬草を取りまくった奴がいたのかもね。」
「なるほど……薬草採取に来た人が、奥へ奥へ進んで魔王を目撃したのかもしれないというわけだ。」
「おそらくね~」
「待って!静かに……」
シーラは急に立ち止まり、何か魔法を唱えた。
「この横の小部屋で一旦休憩をとりましょう。私の索敵魔法では、この奥の部屋の真下から強力な魔力を感じます。おそらく魔王か、それ同等の強力な魔物がいると思われます。」
さっきまでフェリックスとイチャイチャしていたシーラとは、まるで別人だった。
「いよいよだな。」
そう言いながらフェリックスは、小部屋に入ると自分の重厚な鎧や剣、煌びやかな盾などを再確認していく。
「まっ!おいらがサクッと倒してやるよ!」
レイブンが、鞘から剣を抜くとピシピシッと音がし、小さな稲妻のような光が見えた。
「それって雷神剣ですか?」
「ルビ~~分かっちゃった?おいらの愛剣だ。強く美しく気高い至高の剣だ!こいつにどれだけ命を助けられたか分からない。」
レイブンは、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに満面の笑みで雷神剣をベタ褒めする。
「はぁ~またレイブンの自慢話が始まりそうね。でも今日は、ほどほどにしてよ~テンション上げて大声を出すと下の階の魔王に気づかれるかもしれないから。」
「恋人のフェリックスが、普通の魔法剣だからってそう言うなよな~」
「なっ!魔法剣に普通って何よ?意味が分かりませんね!それにね~フェリックスには、英雄ハイドラの盾があるの~あんたとこの騎士団は、ただのカイト・シールドでしょうに!」
「うぅ……た、盾は盾だ。攻撃は最大の防御だぞ!」
「あ、あの~大声を出すとまずいのでは……」
ルビがとても聞こえそうにない小さい声で注意する。
「さて、そろそろ行くか!」
シーラとレイブンの言い合いなどには全く動じずに、フェリックスが割り込む。
その姿はまさに不動の勇者であった。
(フェリックスさんってカッコイイな。この言い合いはいつものことなのだろうか?)
ルビは、尊敬の眼差しでフェリックスを見つめた。
「何あれ?」
アーネが呆れて呟くと。
「ルビかのぉ?」
「違うわよ!」
アーネがタマを軽く突いた。
「シーラとレイブンの方か?何じゃろうな~魔王との決戦前とは思えんの~さすがは、レベルMAX勇者の余裕といったところかの~」
タマは、一人で納得する。
「そういう事?まあいいけど~勝てるならそれで……」
(なんだかな。シーラ……苦手だな。)
アーネは、タマを抱えながら渋々とシーラの後に続いたのだった。
少し進むと階段があり、いよいよ戦闘準備としてアーネとシーラが再度バフ更新を行おうとしたその時だった。
いきなり闇のオーラが現れ、ルビ達全員を包み込んだ!
「し、しまったぁ!気づかれていたか!?」
フェリックスが叫ぶと同時に瞬間移動魔法が発動していた。
ルビは、辺りの空気が変わったことにすぐに気づいた。
「こ、ここは?」
ルビが目を開けると薄暗い部屋だと分かる。
「ルビ……強力な魔力の気配がするわい!」
タマが興奮気味に警戒する。
「部屋の奥に何かがあるわ。それに誰かいる!?」
アーネが緊張した声でその誰かを指差す!
ルビが目を凝らすと部屋の奥に玉座があり、そこに黒いオーラを身にまとった異形の装備の者が座っていた。
「くっ!魔王よ!警戒してぇ!」
「あれが……ま、魔王っ!?」
シーラの叫びに反応したルビの声が裏返った!
「みんなぁ!俺の後ろへ来い!」
フェリックスが盾を構え、盾強化スキルを発動する。
「もぉっ!あんな所で大騒ぎするからよ!ありえないんだからぁ!」
アーネは、怒りながらもフェリックスの後ろからバフ詠唱を開始していた。
古代ダークエルフ迷宮 魔王戦の開始であった。
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