第75話 帰路
【新作】
新作を投稿しました! 題して、
『〇ッチギャルのお相手は、幼馴染の俺のようです』
です!
よろしくお願いします!
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残り時間は雪宮と海を見ながら駄弁って過ごした。
と言っても、ほとんどは無言で海を見てるだけだったけど。
これでいいんだよな、俺たちは。
スケジュールの残りとしては、十六時までに学校に到着する必要がある。
まだ時間に余裕はあるけど、生徒会長の俺たちが遅れる訳にはいかないからな。
まだ駅には白峰の生徒はいない中、俺たちだけが帰りの電車に揺られている。
並んで椅子に座ると、一気に疲労感が出てきた。
あぁ……さすがに疲れた。
「雪宮、楽しかったか?」
「そうね……一部を除いて、楽しかったわ」
「あれは猫に引っかかれたようなものだと思えばいいさ」
「にゃんこは引っかかないわよ。ふざけないで」
「え、ごめん……?」
なんで今怒られたの、俺。
まさに飼い猫に引っかかれたような気分。
「けど……まあ、概ねよかったわね」
「そいつは上々だ」
「あなたはどうだった? この学校に来て、初めてのイベントだったけど」
「俺? あー……まあ、よかったよ。思ったより堅苦しい感じはしなかったし」
黒羽の頃の学校行事は、もっとはっちゃけていた。
けど、こういう勉強のためよ学校行事も、たまにはいいもんだ。
「あなたのおかげよ」
「……え?」
言っている意味がわからず、雪宮の方を振り返る。
雪宮は俺の隣で、意味深な笑みを浮かべている。
「あなたが、私たちを変えたの」
「そんな大それたこと、した覚えがないんだけど」
「去年までのイベントを見せてあげたいわ。みんな義務的で、成績のためにやっていたような所があったし」
それは……なんとなく、イメージできる。
でも今回は、みんな義務的って感じでもなかった。男女入り交じって、楽しそうにしてたな。
「高校生活は一度しかない。それを認識させたのは、あなたよ。……ありがとう、最高の思い出ができたわ」
「いやいや、本当に大袈裟だって。それに思い出なんて、これからいくらでも作ればいいだろ」
三年生は勉強中心でイベントが少ないとはいえ、二年生のイベントなんてまだまだある。
最高の思い出なんて、これからいくらでも更新していけばいいさ。
「……そうね。できれば、そうしたいわね」
「なんだよそれ」
「なかなか言いづらいけど……今の雰囲気をよく思ってない人たちがいるのよ。白峰の規律と伝統を軽んじているって」
……あ。それって、春風さんも言ってた派閥のことか。雪宮が変わったことも気に入らないって言ってたような……。
確かに前の雪宮は、規律・実直・ド真面目を絵に描いたような奴だった。
仮にこれを伝統派と名付けるなら、雪宮は伝統派の象徴だったわけだ。
それが変わったとなると、面白くはないだろうな……。
「だから次のイベントも、同じようにできるかわからないのよ。残念だけどね」
「できるだろ。俺が保証する」
「どこからその根拠が?」
「俺とお前が生徒会長だからだ」
雪宮は目を見開いた。おい、なんだそのリアクションは。
「……驚いた。あなた、生徒会長の自覚があったのね」
「おい」
「冗談よ」
いや、今のは冗談っぽくなかったぞ。
「でも……うん、そうね。私たちが頑張らないとね」
「おう。あとは周りを巻き込んで盛り上がるのは任せろ。得意分野だ」
「そうなの?」
「最悪の場合、生徒会長権限を使う」
「生徒会長をなんだと思ってるのよ」
「……権力者?」
「そんな権力ないわ」
そんな馬鹿な。俺の生徒会長のイメージといえば、学校運営に口出しできるレベルだぞ。ソースはアニメ。
「とまあ、さすがに冗談だけど。でもできるだけやるさ」
「……そうね。みんなで楽しく……たのしく……」
「……雪宮?」
疲れと眠気が一気に来たのか、こくりこくりと船を漕いでいた。
まあ、ここ最近ずっと頑張ってたもんな。
「雪宮、寝てていいぞ。着いたら起こすから」
「……ぅん……」
──って、ちょっ……!?
雪宮は寝惚けているのか、俺の腕を掴み、肩に頭を乗せてきた。
さ、さすがにこれは……! 同じ学校の奴が見てないとはいえ、恥ずかしすぎる……!
せめて手は離してもらいたいけど、かなりの強さで掴んでいて離してくれない。
「雪宮。おい、雪宮」
「すぅ……くぅ……」
あ、ダメだ。全然目を覚まさない。
はぁ……あと三十分。ずっとこのままか。
結局最寄りの駅に着くまで、雪宮は熟睡していた。
くそ、おかげで俺はまったく眠れなかったんだが……!
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