第2話 まとめに入ります

 さて、コメントをお寄せくださいました皆さん、ありがとうございました。そろそろまとめさせていただきたいと思います。


 えーと、最初にざっくりした結論を言うと、コメントを下さった方のなかでは


・ゾーニングは賛成

・規制は反対


という意見が多かったです。


 もちろん、カクヨムユーザーさんのなかには、この文章を読んでいない人の方が多いと思うので、これはユーザー全体の総意ではないとは思います。

 が、上記意見の方が一定数いる、ということは言えるかと思います。


 それでですね、ゾーニングの話に移る前に、「そもそもカクヨムは何歳向けのどういうサイトなのか?」という話から。


 カクヨムのガイドライン「表現についてご留意いただきたいこと」には、このように定められています。


表現の自由を制限するものではありませんが、青少年を含む利用者が気持ちよく利用できるように以下の表現についてはそれ自体が作品の目的(テーマ)ではなく、物語上の必要な要素として必要最低限の描写となるよう配慮をお願いいたします。

・表現・描写などにより著しく性欲を刺激するもの

・暴力的又は陰惨な画像・表現・描写などにより興味本位に暴力行為又は残虐性を喚起・助長するもの

・自殺を誘発・助長・ほう助するもの

・犯罪行為及び刑罰法令に抵触する行為又は誘引・助長・ほう助するもの

・他者に対する差別表現、権利を侵害する行為

(引用終わり)


「青少年を含む利用者」とあるので、成人年齢に達していないユーザーと大人がである、と運営者側も認識、設定しているわけですね。その点を踏まえて、「過度な性表現や暴力表現、差別表現などについてはそれ自体を作品の目的とせず、物語上の必要な要素として必要最低限の描写となるよう配慮」とユーザーにお願いしているわけですね。


 で、このガイドラインについては、法令による根拠があります。

 いわゆる青少年保護条例(KADOKAWA本社のある東京都における名称は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)です。

 私も頂いたコメントを通じて初めて知ったのですが、以下のように定められています。


以下、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/jourei/pdf/13-1.pdf)からの抜粋です。


第三章

不健全な図書類等の販売等の規制

(図書類等の販売等及び興行の自主規制)

図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律第一三七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。 )を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、 青少年に対し、 性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は


(引用終わり。傍点は筆者による付記)


 これは条例であり、法律ではないので拘束力はありません。さらにいうと、この条例は憲法で保障された「知る権利に抵触する」という議論もあります。(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/43424/20170630101119355561/HLJ_40-4_124.pdf)


 とはいえ、一企業の社会的責任として、制定された条例を実現する努力義務は負います。だからこそ、カクヨムさんでもガイドラインとして設定されているのだと思います。


 ただ、ここで一点問題になるのは「性的感情を刺激し~中~青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認める」がどこまでのものなのか? という点です。

 この部分は厳密に定義されているわけではないので、「カクヨムの基準ではこれぐらいのエロは条例に抵触しない」と言われればそれまでの話ではあります。


 しかしながら、今回上記アンケートの結果が出たということは、一定数の人が、サイトの現状を「問題のある状態」と認識しているわけです。


 なぜ、そのように認識されてしまうのか。


 カクヨムでは作品投稿時に「性的描写あり」をクリックすることで、作品トップ画面において本文を読む前に注意を促すことはできます。が、タイトル及びキャッチコピー内に性的文言が含まれている場合は、それらがトップ画面で万人に向けて並べられてしまいます。丸出し、何だったらイヤでも目に入る、という状態です。


 まさにこの点が問題だと思うのです。


 本文にエロ描写があっても、見る見ないはクリックをするしないという自由選択の結果になります。しかし、タイトル及びキャッチコピーはトップ画面を見ると、のです。

 そして、それらの数が異常に多い。この点が、問題があると考える人が多い理由だと思うのです。


 以下、筆者の主観による余談ですが、なぜこのような状況が生まれてしまったのかについて。

 ユーザーがガイドラインを読んでいないだとか、エロの感覚が個人によって違う、等あるとは思いますが、私の感覚としてはKADOKAWAという点が大きいと思います。


 しかも、タイトルとキャッチコピーで扇情的なワードを並べて、本文で、「ほら、こんなに主人公とかヒロインキャラの内面を描いているから、いたずらに性的好奇心を刺激しているわけじゃないよ?」という言い訳をしているように見えます。

 これって、ぶっちゃけアフィリエイターがよくやる「釣りタイトル作戦」ですよね? このような運営さんの姿勢がサイトトップ画面にエロワードが氾濫する風潮を後押ししていると、個人的には感じています。


 たくさん読まれたい、★がほしい、あわよくば書籍化されたい――そう考えているユーザーがたくさんいるサイトで、エロが大量に書籍化され、さらにトップ画面で推されて「釣りタイトル作戦」が展開されれば、それに追随する者が増えるのは必定ではないでしょうか?


 でも、これは単なる私の印象です。裏付けのない、ただの感想です。


 ただ、現実問題として、カクヨムは他の投稿サイトと比較して、圧倒的にエロ系タイトルとキャッチコピーが多いという現実があります。


 さて、話を戻しましょう。ゾーニングです。


 多くのユーザーさんが「規制には反対」「大人がエロを楽しむ権利は保持したい」と表明され、「ゾーニング」という解決策を挙げられています。その実現方法として、他サイトを例に挙げてくださった方が複数人いらっしゃいました。一番多かったのは『小説家になろう』さんですね。


 で、見に行ってみたんですが、まず、R18作品は投稿時に必ず「18歳未満閲覧禁止」にチェックを入れることが義務付けられています。それらの作品は、18歳未満の方と閲覧を望まない方への公開を防ぐために、「小説家になろう」とは別のサイトとして運営されているR18サイトのみで表示される仕様になっています。

 そちらのサイトに入ろうとすると、年齢認証画面が挟み込まれます。コメントにて頂いた情報によると、この年齢認証画面を挟む仕様は、PIXIVさんも同様の作りになっているということです。

 さらに、R18サイトは「R18男性向け」、「R18女性向け」、「R18大人向け」という具合に分けられているので、多くの人がセンシティブな表現を含む作品を楽しむために、非常にきめ細やかに対応されているという印象を受けました。


 ついでに『小説家になろう』本サイトの末尾に記されているガイドラインも見させてもらったのですが、こちらも非常にしっかりしたわかりやすいガイドラインでした。

 同業他社さんの文言なので転載するのは控えますが、R18とR15に分かけて具体的に記されており、カクヨムの書き手さんにとっても、一読しておくと参考になる内容と思われます。


 かなり長くなってきたので、最後に規制について、ひと言だけ。


 効果的なゾーニングが実施されれば、基本的には規制は必要ないという意見が多数派でした。

 ただ、少数ではありますが、あまりひどい差別表現については規制が必要かも、という意見もありました。個人的には、差別的あるいは暴力的表現については、ポップアップや、画面上部に強制的に表示される文言によって、なんらかの注意書きがあるとよいと思います。

 暴力的あるいは差別的コンテンツが人間の行動に及ぼす影響については、諸説あり、専門家にもよくわかっていないようです。

 黒とも白とも言えない状況で過剰な対策が必要なのか、と言われると難しいのですが、対策しておくことで、あるかもしれない悪影響を防ぐ効果があるなら事前にやっておいてもいいのではないかなと思います。


 ただし、多くの方がコメントされていましたが、差別等の感じ方は人それぞれです。なので、『これは問題がある』という批評が機能する土壌の醸成がまず急務である、というコメントもありました。

 また、通報ボタンの有効利用という方法も挙げられていました。これ、ちょっとわかりにくいのですが、作品トップ画面右上の点が三つ並んでいるところ、これがプルダウンになっていて、通報できるようになっていますね。初めて知りました。


 以上、コメントをお寄せ下さった皆様、ありがとうございました。コメントを個別にピックアップすると長文になること、また一部抜粋だと意図を損ねてしまう恐れもあるため、このようなざっくりとした引用になってしまいましたが、頂いたコメントは別途全文見ることができるので(末尾にある吹き出しマークと応援コメントと書かれたリンク)、この形でご容赦くださいませ。


 では、最後までお読みくださった皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。

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