幼い頃の無邪気さで父親を死なせてしまったという罪悪感やトラウマを抱える少年、和真。
そんな彼が、優しく可愛い幼馴染に誘われて仮想空間『メタバース』の世界へ足を踏み入れると、とある事件をきっかけに『ドラゴン』と『猫』と出逢い、『世界』の真実を知る。そして父親の仇を討つため、『世界』を守るため、少年は新たな冒険へと飛び込んでいく――。
昨今になって大幅に技術が進歩し、注目されている『メタバース』。更にP2EやNFTや仮想通貨、更にはシミュレーション仮説まで盛り込み、まさに新時代のSFライトノベルだと思いました。この題材で小説を書こうと思った、その発想がまず素晴らしいです。
ヒロイン達も皆個性的であり、日常の会話や掛け合いが軽快で――まだまだ多くの人々にとって馴染みが薄く、難しいと思われそうな題材でありながら――『とっつきにくさ』は一切ありませんでした。スイスイと読み進めることができます。
ただ逆を言えば、文体までもがラノベ寄りなのは勿体ないです。
SF的な要素や新技術をテーマにしている割には、『軽すぎる』印象を受けてしまいました。「いやSFじゃなくラノベを書きたいんだ」ということであれば、逆にメタバースという題材は重すぎです。
キャラの個性や掛け合いだけでも充分にポップな感じは出ているので、せめて地の文だけは古典SFや一般文芸を参考にした方が良いと思いました。仇を前に「コノヤロー!」という怒り方をしたり、攻撃を受けているのを「バシバシ!」という擬音で表現するのは、ちょっとノリが『安い』と感じます。
ですが文章力というものは、熱意を持って書いていくうちに向上していきますので、今後の展開も含めて期待したいと思います。
技術としては既に存在しつつも、それでラノベを書くのは唯一無二の挑戦だと思うので、是非とも頑張って執筆して頂きたいです。応援しています。