異世界軽トラ紀行録~神様から貰った軽トラと言う乗り物で、のんびり世界を駆け巡る
ななみや
1.軽トラックと旅人
空は雲一つない抜けるような青、そして山々は新緑に彩られ、湖沼は太陽の光をキラキラと反射している。
「この道を真っ直ぐ行けば、君達の村に着くんだな?」
「「あい!」」
運転席でハンドルを握る俺の声に、後ろの荷台にいる少年二人が元気よく返事をした。
この田舎道は街道ほど整備されているわけではないが、難儀するほどの悪路ではない。
俺は開いた窓から入ってくる心地よい風に吹かれながら、鼻歌交じりに運転を続けた。
「よし、村に着いたみたいだぞ」
「あんがと! わりぃんね!」
俺が相棒から降りて後方の荷台に告げると、少年二人は大きな鞄を背負いながら弾けるように飛び降りた。
「あんらま、あんたらの声が聞こえたと思ったら、もう帰ってきたんべか」
「おう、おっかあ! 親切なあんちゃんが魔法の馬車に乗せてくれたんべよ!」
農村の入口近くで作業をしていたらしき若い女性が少年二人を出迎える。
俺はその女性に軽く挨拶をした。
「道中走っていたら、この子達二人が何やら大きな荷物を抱えて歩いていましてね。何でも川上で石材拾いを終えて村に帰る途中だと言うので、ついでに乗せてあげたんです」
「そうかあ、済まねえべさ、まぁず礼でもありゃええけど。そっだ、あれあっから、待ってくれや」
女性は足早に村の方へと向かうと、葉物野菜や根菜を詰めた籠を抱えて帰ってきた。
「これ、ちっとんべぇけど昨日採れたばかりの野菜だんべ。礼に持ってってくんな」
「あ……ありがとうございます。いいんですか?」
ただ行きがけに少年達を乗せてきただけだったのだが、思わぬ礼を貰ってしまい恐縮してしまう。
「それにしても変わった形の馬車だんべなあ、馬車なんに馬もおらんし。あんた見たとこ都の人みたいだが、都会じゃこんな乗り物があんか」
女性は俺の相棒をじろじろ見回す。
「あー、都会にあると言うか……ええ、まあ、流行ってます。そんな感じです」
説明してどうにかなるものではないし、俺は女性に対して適当な感じでお茶を濁してしまった。
「それじゃあ行きますんで。お野菜、ありがとうございます。助かりました」
「おう。子供達のこと、あんがとなあ」
「あんちゃん! 旅さ気いつけてな!」
俺は再び相棒の運転席に座ると、エンジンをかけて村を後にした。
……俺の名前はマルヴェール。
只のしがない旅人だ。
つい最近までちょっとした大仕事の手伝いをしていたのだが、今はその仕事から解放されて自由に各地を巡っている。
そして俺が運転しているこの相棒の名前はケートラ。
先の大仕事の報酬として頂いた物で、正式名称は軽トラックと言うらしい。
曰く「この世界には過ぎたもの」だそうだが、まあ便利に使わせて貰っている。
「今日もいい天気だ。なあ、相棒」
無論ケートラは俺のそんな独り言には答えない。
ただ、ハンドルとアクセルの軽さから何となくこいつも気分が良いことが伝わってくるような気がする。
「このまま向こうに見える山まで行けるといいな。よし、今日の目標はあの山の麓にしよう!」
特に目的のある旅ではない。
勝手気儘に行くだけである。
ただ気分の向くままに、俺はアクセルを踏みケートラを走らせた。
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