第6話
ジローが3歳になり、仕事が休みの日限定だけど、子供達が眠った後、やっとゆったりした自分の時間を持てるようになってきた。
少し前までジローは、私がトイレに行くだけで目を覚まし、「ママ、消えちゃった。」と言って泣いていたが、だんだんそんな事もしなくなり、ジローがしっかり寝た後、少なくとも3時間、いや5時間ほどは私が添い寝してなくても気付かなくなってきた。
私も生活リズムが決まって、気持ちに余裕がでてきた。
撮り溜めていっぱいになった録画リストから、手当たり次第にドラマを見る。
すごく面白い。
子供達の前では食べられない、ポテトチップスを食べる。
こんなに美味しかったっけ?
夜中だけど、コーヒーを飲んでまったりする。
なんて贅沢な時間なんだ。
そのうちダンナが仕事から帰ってくる。
いろいろ話したい事はあったはずだが、30分も話すればいいとこで、ドラマの続きが気になって、いつの間にかほったらかし。
自分のしたい話をするだけしたらスッキリしてドラマの世界に浸る私の姿を見て、やれやれという顔をして子供達の寝てる寝室へ向かう。
ダンナが子供達と一緒に寝てくれたら、またさらに安心してドラマの続きを見る。
今度は違う理由で寝不足だ。
まあ、これは同情の余地無しだよね。
休みの度にドラマを思いっきり見るという生活は、2クール分くらいで…
飽きた。
スナック菓子も…
飽きた。
いえ、決してドラマやスナック菓子が悪いわけではありません。
ちょっと欲張って、一気に見たり食べたりしたから、お腹いっぱいって感じ。
ゲームも、しばらくしたけど、元々ゲーム音痴なので、やめました。
ダンナがやってて面白そうだったから、私もやりたいと思ってたけど、実際にやってみたら、全くセンスが無いので無理だった。
でも、満足です。
部屋の片付けだけは、中途半端には始められないレベルなので、まだまだ手付かずだけどね。
普段夜、右にタローで左にジローを両側に挟んで私が寝る。
眠れるようになったけど、真夜中に痛みと共に起こされる。
タローもジローも、なぜか私の顔を蹴る。
子供達の体の向きを変えても、私から少し離しても、また近づいて攻撃してくる。
なぜか顔を狙ってくる。
頭を私に向けたら頭突き、横に並んだら裏拳、そしてしばらくしたらまた足を向け、私の顔を蹴る。
不思議だなぁ。
私自身が離れて、足元とか、違う場所に移動しても、ゴロゴロと近づいてくる。そして蹴る。
逃げ場が無い。
タローだけでもそろそろ別に寝てほしいけど、怖がりで寂しがりなので、全く別の部屋で寝るのはまだ先だ。
せめて部屋の隅っこで寝たいけど、タローとジローがくっつくとケンカになるので、やっぱり私が間に入るしかない。
ぶつかって、蹴り合って、ケガでもされたら困るし。
多い時は2人合わせて10回くらい、何度も攻撃されてすっかり目が覚めてしまう。でも仕事の日は特に起きてドラマを見る気にならない。
シーンと静かな真夜中、
今までの大変だった日々を思い出す。
が、私は人より忘れるのが早い。
思い出そうとするけど、喉元を通り過ぎてるようで、どれくらい大変だったかピンとこなくなっている。
でも、毎日蹴られて目を覚まし、毎日考える時間があると、そのうちいろいろ思い出す。
あの時、辛く感じたあの言葉、「子供は泣くのが仕事。」と上から言われた気がしていたけど、もしかしたらそうじゃなかったのかもしれない。
産後のホルモンバランスの乱れとストレスで、受け取り方を間違えてたかもしれない。
励ましの言葉であり、少なくとも“上から”ではなかっただろうと今なら思う。いや、そうだったと思いたい。
そして、このセリフは、直面してヘトヘトになってるママを追い詰めるものではなく、周りの人が温かく見守ってくれますように、そのための言葉でありますように、と願う。
あの泣き声がキツく感じた頃、買おうかどうしようか迷ったヘッドホンがある。
CDショップにあるようなフカフカのヘッドホン。
次があるなら、きっと迷わず買うだろうな。
分厚いヘッドホンを通せば、泣き声も小さく遠く感じるかもしれない。
直接聞くよりマシな気がする。
また思い出す。
ベビーフードに後ろめたさを感じたこと。
ママ友への劣等感は確かにあった。そして、レトルト食品を食べさせるという申し訳なさ。
手作りだけがマストだとは思わない。
でも、お弁当の代わりにするには、容器が缶詰みたいだったな、とは思う。
いろんな味があり、食材も色々で、バランスも考えられてるし、レバーみたいに食べさせにくい食品だってジローは美味しそうに食べてくれた。
やっぱりあの時、必要な場面で上手く使えてたと思う。
そして、下らない劣等感に負けて、無理にマネして手作りにこだわらなくて良かった。
将来を考える。
タローとジローがもし結婚して、赤ちゃんが産まれて、もしも寝かしつけに苦労してたら、私が代わって1時間スクワットできるように元気でいなきゃいけないなと思う。
お嫁さんが嫌がらなければの話だけどね。
それから、あの時は身動きが取れないくらい狭い二人の間でよく寝てたなぁと思いながら、ガランとした部屋で一人で寝る日が、あっという間に来ちゃうんだろうな。
その時を想像して、すでに寂しくてウルウルする私です。
ー完ー
***************
最後まで読んで下さった方に、心から感謝いたします。
今、子育てを頑張ってる皆さん、いろいろ大変なこともありますが、頑張りましょうね!
子供が寝ナイト ニ光 美徳 @minori_tmaf
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
授乳奮闘記/ニ光 美徳
★15 エッセイ・ノンフィクション 完結済 16話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます