第7話 大物倒したのに歓迎されなかったしうざい貴族と戦うことになった話

 熊を討伐した私たちは王都に戻った。エミリー以外はかなり消耗しており、丸二日は動けなかった。宿でベッドとトイレを往復するだけ。みんなグロッキーなのにエミリーだけピンピンしてるのなんか腹立つけど、彼女もそれなりに活躍してくれたので良しとしよう。


ギルド交流祭当日の朝、私たちは冒険者の店で豪華な朝食を食べまくっていた。


「う、うますぎですぅ......」


牛、豚、鳥、魚、フルーツ、エトセトラ。どれも一流のシェフが調理したものでタマラナイ。もちろんお高いんだけど、悪魔熊討伐の報酬で1,500万モカを手に入れた私たちにお金の心配なんてない。


「エニー食べ過ぎよ」


「久々の朝食ですから良いじゃない」


「アタシは毎日3食食べてたけどね〜」


「エミリーなんかおしゃれになってない?」


フリフリのドレスっ! 可愛いじゃないか。


「あっちの服屋で買った〜」


「ちょっと、ギルドのお金勝手に使わないでくださいよ〜」


「えーロックくん堅いなぁ、お金ならいっぱいあるのに」


「エミリー......もぐもぐ......あなたは金遣い荒すぎ......もぐもぐ......」


「エニーだってめっちゃ食べてるじゃん」


「モゴモゴ......」


良いじゃん別に......。ひっさびさに美味しい食事が食べられるんだから。


「あ、そうそうあなたたちもどうぞ」


「ありがとうございます......」


「どうもです」


そこのボーイズは我、焼肉ギルドが契約している要員だ。これからもっと大きな依頼をこなしたいと思っているし、交流は大事だよね。

と、こんな風に食事を楽しんでいると......。


「おい、そこの女」


柄の悪そうな男が話しかけてきた。身長は高めで赤髪。身なりは悪くないことからそれなりの身分であることがうかがえる。


「何ですか?」


「お前Sランクエディターって本当か?」


「まあ一応......」


「ぷっ......はっはっはっ!」


「何がおかしいっての?」


「Sランクだぜ? こんな貧弱そうな女が旧国王と同ランクとかありえねーっての?」


言わずもがな、私を馬鹿にしてきたようだ。確かに他のSランエディターは桁外れの強さっぽいけど......。


「し、知らないの? 悪魔熊っていう有名な魔物を討伐したんだけど!?」


「この新聞だろ?」


このクソ男が見せてきた新聞を見ると、端っこの方に該当の記事があった。


『ー悪魔熊、討伐される

●日、かの悪魔熊がとあるギルドによって討伐を果たした。討伐には新人のSランクエディターも参戦していたようだ。他にも高ランクのエディターが3人いたが、決め手となったのは偶然降ってきた隕石だという』


「何それ捏造じゃん!! ありえないんだけど!!!」


私は思わずグーで机を叩きつけた。


「隕石を降らせるエディットなんて持ってねーだろ、つまり捏造ってこった」


「はぁ? 殺すぞ!」


「おーこわいこわい。まあそんなに怒んなって、周りの客がビビっちまうぜ?」


「!!」


男の言葉で我に返る。ふとあたりを見回して見ると他の客らがじっとこちらを見ていた。

く、やば......。


「い、いやぁ失礼したわ。ちょっと疲れてたもので......」


そうか、この男は貴族だ。そして新聞がこうなっているのも貴族の差金だろう。


「そうそう、俺の名は 《クライ・ジョン》 だ。母系に旧国王の血が流れている。直系の子孫ではないがそれなりの権力はあるつもりだ。逆らわない方が身のためだ」


「ふ、ふんっ。どうせ身分だけなんでしょ?」


「おっと、俺は身体知性共にAランクだぞ? エディットは無いがお前みたいな偽物とは違う」


「へぇ、じゃあアタシたちと勝負する?」


「今度は誰だ?」


「アタシはエミリー。午後にギルド交流戦があるのは知ってると思うけど、ヤル?」


「ほう......良いだろう」


ルールは以下のような感じらしい。


・ギルドメンバーから先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5名を選出してそれぞれタイマンで戦う。

・殺すのはダメ。

・アイテムは禁止。ただしエンチャント装備は可能。

・勝つと運営から10万モカが貰える。


「やるよねエニー?」


「もちろん、やってあげる!」


「エディター共に本当の力って奴を教えてやるぜ」


こうして貴族共と私たち焼肉ギルドの戦いの火蓋は切って落とされた!

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