異世界転生したら確率を操作できるSランク能力者に目覚めたので可愛い現地人の男の子と結ばれるように祈ります!

響木ウルフ

第一章 エディット

第1話 競馬見た後能力に覚醒して美男子と王都に行くことを相談する話

 私の名前は《エニー・マンデー》。もっともこれはこの世界での名である。本名は《大平華子おおひらはなこ》。特に大した名前ではない。


前の世界で自作PCを組んでいたら火事になり、焼き肉になったかと思えば異世界転生をしていたわけだ。転生後、森で途方に暮れていたら後述する男の子の家に居候することになった。前世ではブロガーをやっていたが、この世界にパソコンはないので今は無職だ。


「お姉さんって戦闘できないの?」


そう私に問いかけてきたのは《ロック・リー》という14歳の男の子だ。金髪で人見知りだけど好奇心旺盛で、肌が白くて性癖に刺さる。そしてまだガールフレンドはいないらしい。ここはテストに出るので覚えておいてほしい。


「たた、戦うなんてできまひぇん」


話を戻すけど、ごめん本当にごめん。だけど魔物と戦うなんて無理。


この世界には魔物と呼ばれる魔法生物が存在する。モンスターとも言ったりする。もちろん対抗手段として武器はあるし武術を身につけている人もいる。


魔法も存在しているけど、この世界に魔法使いは18人しか存在していないらしい。なんでも2歳の朝に女神からお告げを聞いた者のみが魔法を使えるのだとか。


ちなみにロック君はそのうちの一人である。この世界では魔法使いのことを【エディット】と呼び、エディットが使える者のことを【エディター】と呼ぶ。エディターは一種類の固有魔法を使える。


「お姉さん今日家で何してたのか言ってみて」


「えー」


「何?」


「......人様に言えることはしてません!」


「(何したんだろ......)」


「すみましぇん......でも、気持ちよかったですぅ」


「生活が厳しいし討伐クエストを受けてほしいんだけど難しいか......」


無視された。

そんなことより......ええと、確かに生活は厳しい。


私が今いる国は【モカ王国】という聞いたことがない国だ。文明レベルは中世程度で、他の国よりは進んでいるらしいがお世辞にも私が元々いた現代日本ほどのレベルとはいえない。


美味しい食事にもありつけないので私は日に日にやつれていくばかりだ。一応ロック君より少し量と調味料多めな食事をもらっているが、それでも物足りなさを感じてしまう。


もうここに来て数ヶ月経過したけどいよいよやばい感がある。ここは文字通り賭けに出るしかない。


「だ、大丈夫! お金増やしてくるから!」


一応、モカ王国には競馬が存在している。高速馬場を見慣れた私からすればここのレベルは低いがないよりマシ。というわけで競馬場に来た。貴族が運営していることもあり入場料はバカ高い。だけど私は競馬が得意、絶対に取り戻せる自信がある。絶対1番が来る。いや、来い!


私がこう祈った瞬間、身体が一瞬光った気がした。これは無詠唱でエディットを発動した時に起こる現象だ。ロック君は結界を張るエディットが使えるのだが、彼が前に無詠唱でエディットを発動していた時も身体が光っていた。いやしかし私は女神のお告げなんぞ聞いてはいない。何かの勘違いだろうか。


「スタートしました! 1番チョウコウソク 早くも先頭だ!」


おっと、そんなことよりレースだ。1番が勝ってくれるかが重要だ。なんせ単勝しか存在していないから、君が勝ってくれないと困る。


「なんということでしょう、圧倒的な大逃げで1番チョウコウソクそのままゴールイン!!」


おっしゃああああっ!!!!! 単勝50倍が当たった、これは凄いのでは!? 絶頂しちまうぜ。払戻額は50万モカ。約半年分の生活費が手に入ってしまった。これをロック君に見せたらもうなんでもしてくれるんじゃないかと思ってしまう。


「もしかしたらワンチャン......?」


そう独り言を言った瞬間、また私の身体が光った。しかし、次の瞬間___


「ぐっ!? いっったっ!!!」


衝撃波の様なものが私に降り注いだ。コケる程度には痛い。いや痛てぇ。何なんだこれは。意味がわからない。私は数分間悶えた後、ロック君の家に戻った。


家のドアを開けおかえりと言おうとした瞬間、ロックが驚いた顔をして質問を問いかけてきた。


「お姉さんエディターだったの!?」


んっ? どうゆうことなの?

さっぱりわからないので「その心は?」と問うと、どうやらロック君は私のエディットを結界で跳ね返したらしい。自動結界が発動すると攻撃者もわかるらしい。となると私が何らかの攻撃をしたことになるが、まさか私がエディターだったとは。


「そうみたい」


「そうみたいって、なんで今まで黙っていたのさ!?」


「そう言われても私お告げ聞いてないし」


「こんなことありえない.....」


ロック君は訝しそうな顔をしながら聖書をめくり出した。覗き見してみると、エディターについて記載されていた。やはり女神のお告げを聞くことでエディットに覚醒するとの内容だ。


前に聞いたが、ロック君はお告げを聞いたことがあるそうだ。やはり私が例外ということらしい。


「いろいろ思うものはあるけれど、ボクも実は他のエディターに会ったことがない。ここはやはり他のエディターを訪ねるべきだと思う」


確かに他のエディターにはあったことがない。世界に18人しか存在しないらしいのでまあ滅多に出会えるものではないと思ってはいたけど。ただ、自分がエディットに覚醒したとなれば出会いの機会を悠長に待っていないで探しに行くべきなんでしょう。幸い競馬で稼いだし、王都に行ってみるのもアリかもしれない。


「わかった、実はさっき競馬で勝ってきたから王都に行ってみない?」


これを聞いたロック君は驚いて一瞬怒ったそぶりを見せたが、私がお金をちらつかせると再び驚いたのち笑い出した。


よかった、これでしばらく追い出される心配はなくなったでしょう。あと可愛い。



まあ何にせよエディットだ。王都にはエディットが使える有名な商人がいるらしい。その商人は童顔巨乳低身長の武器商人......って属性盛りすぎな気もするけど、商人なら話の期待ができそうだ。

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