美術館が作る島

バブみ道日丿宮組

お題:100の美術館 制限時間:15分

美術館が作る島

 富豪という人種は貧乏人と思考が違うらしい。

「広すぎない? これだけで何ヶ月過ごせるんだろう」

「んー、まぁ1ヶ月コースだからな、好きなだけ見れるぞ」

 そういって彼氏は何ページもあるパンフレットをパラパラと捲る。

 そこには、美術館島と日本語訳されたタイトルが書かれて、いろいろな美術館の紹介が1つずつ丁寧にされてる。これだけでもかなりの価値が実際あるらしい。

 これを無料で入場者に配布することは国家レベルのテロに近いと芸術家たちが語るが、この美術館島を作ったとされる人物は無視し続け、今では100を超える美術館がこの島の中には展示されてる。

 そう……ここは美術館を展示してる島。もちろん中には美術品やら、化石やら、枠にとらわれない世界遺産がたくさんある。

 この島が沈むだけで国家が崩壊するレベルとも聞いたこともあるな。

「しっかし、あんたよくここの島へのチケット手に入れられたわね」

 通行人を見ると、一般人はいるが誰しもお金持ち……に見える。庶民の数は少ない。

「んー、ここの管理人は庶民には優しいらしくて順番に抽選して普通の美術館レベルの値段でホテル込みのお金でツアーを楽しめるようにしてくれてるんだよって、飛行機で言わなかったか?」

 この説明を聞いたのは二度目になるけど、どういう神経をしてるんだろう。私にはそのお金の使い方というか、人の扱い方というのか……不思議になってくる。

「そうなんだけど、不思議で……ね?」

「ま、富豪さんの気まぐれってやつだろ。違反したら射殺されるらしいし、すっごいセキュリティーらしいからな。いくら庶民っていっても容赦はしないから注意しろよ」

 確かにパンフレットにそんなことが書いてあったわね。

「うーん、それにしても迷うな。奇作品ばっかの美術館も気になるし、男としては恐竜を見たこともない人が想像で描き続けた作品ばかりの美術館も……」

 1人妄想の世界に入ってしまった彼はさておき。

 折角の2人旅行だ。邪魔者はおいてきたし、簡単には入ってはこれないから満喫しなきゃ損ね。

「とりあえず、珍しいのは最後に取っておきましょ。驚き続けてたら普通の生活に戻れなそうで怖いから」

 そうかなと彼は私の手を優しく包み込んであるきだす。

「道楽というのは奥が深いね。僕も本をよく読むけど、ここまでのスケールは考えつかないよ」

「地下室の図書館を持ってる人のセリフとは思えないわ」

 そうかもと彼は肩越しに心底笑った。

 

 それから、休憩やホテル、カフェ、昔あったとされる飲み物、食べ物を堪能してるうちに1ヶ月という期間はあっという間に過ぎていった。

 もう何をみて、何を感じたか、覚えてないくらいの衝撃だった。思い出に……なったかな?

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美術館が作る島 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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