原因不明の病

バブみ道日丿宮組

お題:君と表情 制限時間:15分

原因不明の病

 彼女との約束を守れないと悟った時から、夢にいつも彼女の表情が入れ代わり立ち代わり浮かんでは消えてく。

 笑った、泣いた、拗ねた。代わる代わる毎日場所や、時間も違う。

 実際にあったことないこと、たくさんのイメージが映像として流れてく。忘れてはいけない、これからも作ってくんだと俺に警告してくる。

「今日は君と出会って、3年目になるね」

「……」

 病室のベッドで横たわる彼女は、人工呼吸器を取り付けられ無表情で眠ってる。

 こちらに返ってくるのは機械の規則正しい『生きてる』ということを知らせる音だけだ。

「ちょうど今日結婚を申し込もうと思ってたんだ。この間約束したからね」

 カバンからこの時のために頑張って働いて買った指輪を取り出す。

「どうしてサイズがわかるの? って君はもしかしたら怒り出すかもしれないね。実は寝てる時にこっそり図っておいたんだ。俺は収入が君より少ないからね、失敗は恥ずかしいからしたくなかった」

 指輪をはめたい衝動に意識が堕ちてきそうになり、考えを改める。

 約束はしたけれど、これじゃ一方的に愛を押し付けるだけで本当の告白じゃない。フェアじゃない。彼女ももしかしたら断るかもしれない。

 強気な彼女のことだ。弱虫っていってくるかもしれない。だけど、

「……」

 その強さは今は見えない。

「ずっと頑張ってたものな。少し休んだら良くなるからさ」

 今は俺が頑張るしかない。

 身寄りのない彼女は才能だけで、大企業に就職した。けれど、原因不明の病が数年後の健康診断で発見され、何が起こるかわからないと医者に宣言されてた。それでも彼女は働くのもやめなかった。

 彼女との出会いは、偶然だった。

 飛行機で相席になって、趣味があったから。

 それから、何回か連絡しあって、遊んで、告白して、デートして、今になる。

「……なんとか探すよ。俺は諦めないから、君も諦めないでいい夢を見続けてくれ」

 カバンの中に指輪を戻すと、俺は病室を後にした。

 ここに戻る時は、名医と言われたアメリカの医者たちを連れてくることだ。

 そのお金ももう用意はできた。あとは祈るしかない。

 

 彼女の笑顔を見るためにーー。

 

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原因不明の病 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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