禁忌の食べ物を愛するものたち
バブみ道日丿宮組
お題:永遠の味 制限時間:15分
禁忌の食べ物を愛するものたち
一度食べたら忘れられない味。禁断の果実を食べたアダムとイヴの気持ちがあたしにはよくわかる。やめれなくなったらやみつきになる。おかしなことじゃない。
実際童話でそういう話があって、永遠になくならない食べ物をもらった人間がその味に飽きて自分が美味しいと思ったものを食べるために約束を破るもの。
「……ふふん」
約束は所詮約束。
その後、その人間がどうなったかはあたしは覚えてない。焼き殺されたのか、同じ目に合わされたのか。妹たちなら詳しいかもしれない。二人でたまに絵本を読んだり、雑誌を読み合ったりしてるのを目にする。
料理の話をたまに学校でされるけど、わからない。家庭科での包丁さばきとお題で出てきた料理はプロ並みと先生は絶賛してた。
あたしはそうは思わなかった。ただきって、味をつけただけの三流商品でしかない。
「やっぱりこの味が一番」
素材は素材のまま、生暖かいのがじっくりくる。
美味しいものは、美味しいっていうしかないの。そうとしかあたしには感じられないな。料理もきっとそういうことなのだろうけど、あいにく口に合わない。
「ねぇ、美味しいものって永遠に忘れられるわけないって思わない?」
居間の片隅で震える妹の1人はビクビクとするだけで何もしてこない。
あたしより体力も、精神も強いのにどうしてなんだろうな。
「はぁ……」
三姉妹のうち一番下の妹は、美味しそうに口を真っ赤に染めてるっていうのに。仲間はずれにしてるみたいで少し心が痛む。
「ほら、生暖かいのが一番美味しいんだよ? 大好きだったんだよね? なら、もっともっと美味しいと思うよ」
だから、一番美味しい部分を切り落として手に持つ。
ビクビクする妹は、逃げようとはしなかった。
あたしが近づくと観念したかのように口をあけた。
「ほら、美味しいでしょ? 大好きだものね? 大好きに大好きを重ねたらどんな味なのかしら?」
ちょっと気になる。
「ねぇ、どう?」
「……美味しい。美味しいよ、お姉ちゃん、美味しい、美味しい、美味しくて涙が出てきちゃう」
涙が出るぐらいに美味しいか。
うん、今日の夕飯は良かったようだ。
「おい、そこのお前。後片付けはちゃんとしとけよ」
「はい、お嬢様」
元は母親だったものはそういって、妹たちが食い散らかし始めたものをごみ袋につめてく。
「処分はいかように」
「いつもの方法で」
はいと心あらずで母親は頷いて作業を再開するのをみて、あたしも食事を再開した。
禁忌の食べ物を愛するものたち バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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