外と中

バブみ道日丿宮組

お題:ラストは光景 制限時間:15分

外と中

 すべての感覚がなくなったらどうなるのだろう。

「……」

 眠り続ける片割れを見守ることしかできないのはもどかしさでしかない。こうなるのであれば、連れ出さなきゃ良かったのだろうか。

 思い浮かぶのは彼女の笑顔。ベッドの上で機械に繋がれた彼女の青白い無表情ではない。

 能力の使いすぎ、外社会の空気、その他諸々の懸念事項があると専門医はいっていた。

 だからこそ、俺は彼女がいる病室には入ることができない。

 完全密室。

 きれいな空気の中だけが彼女の世界。

 それは……彼女の砦だったあの地下施設であっても同じ。循環されるのは血の匂いもあったかもしれないが、いくつもの機械が彼女の身の回りを保護してた。

 そして有能な顔が見えない執事がいたのも事実。

「あなたが落ち込む必要はないのですよ」

「あぁそうだろうな。起きたら、こいつは間違いなく同じことをいうだろう」

 目的を達成した。

 懸念点はなくはなかったが、彼女はもう一度外に一回出たといった。

 海。海岸線を見たいと。

「連れ出す時、思いの外暴れるし、ペットボトルの山を運ぶより軽いとなると驚きでしかなかったよ」

「はい、そういう特殊性がお嬢様であり、嫌われた理由であります」

 そういって執事は唯一彼女が見える通路に散らばった血を掃除してく。だが姿はどこにも見えない。血が吸い取られてくのだけしか見えない。

「……」

 こんな状態でも彼女の能力は発動する。

 敵意のあるものを排除する。そして彼女の姉よりも剣術の筋がいい。

「全く医者もよく、死ぬのがわかってて対処してくれるものだ」

 専門医は死なない。元々敵意なんてない人間だったからだろうが、他の人間はそうはいかない。誰にも悪意、誠意はある。

 初対面の印象が大事ではある。

 俺も最初見た時は、こんな少女がコンタクトをとってきた人物であるとは思えなかった。

 30畳もある部屋で彼女はベッドとパソコン、その他よくわからないものがある中で車椅子で生活をしてた。

 一切部屋からでない生活をずっと強いられてきた。

 異端の能力だから、いると迷惑だから、そんな理由で本家から生まれたことすら抹消された姉妹の妹。そして今は俺の片割れでもある相棒。

「それは代価でしょうね。少なくとも遺産はあなたもお嬢様もかなりありますし……」

 副業か。

 彼女が裏で何をやってるのかはよくわからないがそれで全てがまかなえるぐらいのことをしてるらしい。だからこそ、隔離された地下施設でくるものを抹殺し続けてた。

「目を覚ますのはもうすぐですよ」

「そうか、ならまた戦いがはじまるな」

 そうですなと執事がいうと、もうその気配はどこにもなくなってた。

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外と中 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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