ひとりディフェンス

やさい

第1話

いじめでひとりの人生が変わってしまうことがある。

いじめられていることを家族や親しい人に打ち明けることができない。

それもどこかしらで自分のプライドが傷つくのが許せないのか、これ以上状況を悪化させて他の人に迷惑をかけたくない気持ちがあるからだと思う。

みんな、ひとりで世間から自分のことを必死でディフェンスしているんだ。




春の陽気に包まれた稲村ヶ崎高校。桜の花びらが風に舞い、遠くに青い海が見える。

「お前、浅中の坂本だろ?」

俺と同じ背丈ぐらいで、いかにもスクールカーストで上位に入るような爽やかイケメンが揶揄うように話しかけてきた。

「ーーあ、確か足狭中のサッカー部でFWやってた7番だった人...」

「沢村だよ!お前うちと試合する時いつもオフサイドばっかだったやつだよな!!」

と笑いながら話してくる。内心嫌気を差しながらも

「同じクラスだったとはな!これからよろしくな!」

とたまに人当たりが良くなるのでなんとも言えない。

「そういえば、坂本ってサッカー部入るだろ?なんか俺1人じゃぼっちみたいに思われるから一緒に仮入部行こうぜ!」

なんとなく都合の良いやつになっている感がするが、俺は今年の春からこの稲村ヶ崎高校に入学することが叶ったのだ。

この高校は海沿いにあるせいか、若者言葉で言う陽キャのパリピの人たちが通う高校みたいなイメージがついている。

しかし、中学校でよっ友ぐらいしか作れなかった俺からしたら有難い話だった。

「おう。いいぜ放課後一緒に行こうぜ」

少し陽キャぽっく言ってみた。なんとなく相手の口調に似せてね。

その後、女子たちが沢村の周りに集まってきた。まるでハーレム漫画の主人公のように人気者だ。

羨ましさを感じながらも、その場を離れる。

放課後、沢村とともにグラウンドに向かう。夕陽に染まる校舎が背後に見える。

そこで衝撃の事実を知らされる。

「あー、新一年生の諸君。今日はサッカー部の仮入部に来てくれてありがとう。早速だが練習着に着替えて海岸沿いを走ってもらう。」

え!!なにそれ。

仮入部って最初は自己紹介したり見学とかじゃないの?

そもそも練習着持ってきてないし。

そんなことを焦りながら思っていると、

「タイムを測り、早かった上位3名だけがボールを蹴ることができるから覚えておけよ」

と、重要なことも言ってくる。

周りを見回すと、俺以外の全員が練習着を持ってきていて、何故かアウェイ感を感じてしまう。

潮風が頬を撫でる中、みんなが着替え始め、各々アップを始めている。

このままではまずいと思い、サッカー部の先輩らしき人に練習着がないことを伝えると

「あー、じゃあ今日は帰っていいよ」

「見学とかさせてもらえないでしょうか」

「そう言われても走るのただ眺めることになると思うから帰れば?」

感じの悪い陽キャ先輩にサッパリ言われ、先輩は部室の奥に戻っていった。

ごめん、沢村。

一言声を掛けてから帰りたかったが、周りのアウェイ感に負けて煙を巻くようにして帰った。




夕日で海が輝いている。

夕暮れ時、稲村ヶ崎高校から駅へと続く坂道。

潮の香りを運ぶ風が、桜の花びらを舞い上げる。

遠くに見える海は夕日に照らされ、オレンジ色に輝いている。波の音が柔らかく響いてくる。

坂本雄介は、黒い学ランの第一ボタンを外し、サッカー部の仮入部に参加できなかった後味の悪さを引きずりながら、ゆっくりと坂を下っていた。

彼の短い黒髪が、潮風に少し揺れている。

細身の体つきながら、サッカーで鍛えた引き締まった足腰が学ランの下に隠れている。

そんな中、前方にセーラー服姿の女の子の姿が目に入った。

制服から同じ高校の生徒だとわかる。夕陽に照らされた銀色がかった白髪が、まるで淡い光を放っているようだ。

駅の改札前で立ち止まるその女の子。

すらりとした長身で、セーラー服から覗く白い首筋が印象的だ。

大きな瞳に長いまつ毛、小さな鼻、柔らかそうな唇。整った顔立ちに、雄介は思わず見とれてしまう。

困ったように鞄の中を探っている様子に、雄介は思わず足を止めた。

「あの、大丈夫ですか?」

雄介の声に、女の子がはっとしたように顔を上げる。

その瞳は、琥珀色で深みがあり、雄介は一瞬言葉を失う。

「あ、えっと...」

女の子は戸惑いながら答える。細い指で、セーラー服の襟元を軽く触る仕草が愛らしい。

「財布がないみたいで...」

「財布が見つからないんですか?」

女の子は小さく頷く。銀髪が柔らかく揺れる。

「うん。どうしよう、お金結構入ってたんだけどな...」

「家まで遠いんですか?」

雄介が尋ねる。

「ちょっと...駅を3つくらい行ったところなんだけど」

女の子の声には不安が滲んでいる。長い睫毛に縁取られた瞳が、心配そうに揺れる。

雄介は少し考え、決心したように言った。

「あのー、よかったら俺のSuica使ってください」

「え?でも...」

女の子は驚いた表情を見せる。小さな唇が少し開く。

「俺の家学校から近いんで、全然大丈夫っすよ」

雄介は微笑みながら言う。

「でも、そんな...迷惑じゃないですか?」

「いえいえ、全然!むしろ、お困りの方を助けられて良かったです」

雄介は少し照れながら言う。頬が少し赤くなるのを感じる。

「本当にいいの?ありがとう...」

女の子の表情が和らぐ。柔らかな笑顔に、雄介の心臓が高鳴る。

「俺Suica二枚持ってるんで、一枚あげますんで返さなくて結構っす」

雄介は早口で言いながら、Suicaを差し出す。

女の子は戸惑いながらもそれを受け取る。その細い指が、雄介の手に軽く触れる。

「ありがとう...でも、お名前は?」

「あ、坂本雄介です。1年の」

「私は佐々木美咲。1年のBクラス」

美咲は柔らかな笑みを浮かべる。その笑顔に、雄介はますます見とれてしまう。

「坂本くんも1年なんだ。私、今日初めて一人で帰ろうと思ったのに、こんなことになっちゃって...」

「あ、僕も今日が初めての一人帰りでした。この坂、結構きついですよね」

「うん、でも景色は綺麗だよね。海が見えて」

二人は無意識に海の方を見る。夕陽に染まった海面が、キラキラと輝いている。

「そうですね。毎日この景色が見られるなんて、この学校に来て良かったです」

雄介が言うと、美咲も頷く。

「私も。あ、そうだ。Suicaのこと...」

「あ、はい。あの、もしよかったら...」

雄介は少し躊躇しながら続ける。

「明日、学校で会えたら返してもらえればいいです」

美咲は嬉しそうに頷く。

「うん、絶対返すね。本当にありがとう、助かったよ」

「いえいえ。じゃあ、また明日...」

「うん、また明日。気をつけて帰ってね」

「はい。佐々木さんも気をつけて」

照れくさくなった雄介は、そそくさとその場を離れる。

帰り道、雄介の頬は夕陽のせいだけではない赤みを帯びていた。

春の潮風が優しく髪を撫で、遠くでは波の音が心地よく響く。

空には淡いピンク色の雲が浮かび、海辺の町に夕暮れが訪れていく。

「佐々木美咲...か」

雄介は小さくつぶやきながら、明日への期待を胸に家路を急いだ。

潮の香りと桜の香りが混ざる中、彼の心は春の訪れを感じていた。


                 続く

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こんにちは。小説を書こうと思ったのですが、いかんせん初心者のもので小学生が書くような文章になってしまい読みづらいと思います。また、気が向いたら続きを書いていこうと思います。

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