第27話

「はぁ……はぁ……」


「ううう………あぁぁぁぁ!!」


バリバリバリ!


「くっ……!」


駄目だ。勝てない。強すぎる。

先程から防戦一方である。そろそろ魔力も尽きかけている。赤髪の青年も同じ状況のようで、息を切らしている。人間が魔王の力に相対するのは不可能なことを思い知らされる。


「こいつら……ヤバすぎるだろ!直接触れないから衝撃波で対抗するしかないんだが、破壊しても破壊しても再生される!キリがねぇ!」


レノウスの攻撃を回避しながらそう苦悶の表情を見せる彼。彼は実力者とはいえ人間なのだ。魔王の力に叶うはずがない。ここまで対応できるだけでも十分な方である。相手が悪すぎるだけだ。


「しねぇぇぇ!!!」


黒泥の刃が全方位から飛んでくる。捌ききれない。


「まずっ……!」


手足が1、2本飛ぶのを覚悟したその時。



疾風刃ストームナイフ!」



「!?」


風の刃が黒泥の刃を分断し、レノウスに直撃した。


「ああああ!痛えなぁ、なんだよくそがァァァ!?」


「リディア様!?」


魔法を打ったのは……リディア様だった。


「私だって……戦える!ベルお兄ちゃんのために……戦うんだ!」


彼女は両手を前に掲げ、疾風刃ストームナイフを大量に射出する。先程は不意をつかれてしまったため攻撃を食らってしまったレノウスだが、今度は全て防御してしまった。そして、黒い泥で巨大な拳を作り彼女に向けて攻撃を繰り出す。


「ちまちまと……うぜえなぁくそがァァ!」


「あぶねぇっ!!」


赤髪の青年がギリギリのところでリディ様を庇い、攻撃をもろに受ける。そのまま木に吹き飛ばされ激突した。


「かはっ!……くっそ、強すぎかよ……勇者なのに情けねえ……」


彼が何かボソリと呟いたが、それを気にする間もなく次の攻撃が来る。レノウスを抑える相手もいなくなったため、攻撃が一気に押し寄せてくる(正確にはパベル様にも攻撃を放ち始める)。


さすがに、もう……打つ手がない。魔力がほぼ底をついた。


「くっ……」


立ち上がろうにも、立ち上がれない。今度こそ攻撃が、当たる────。



黒夜烙愛ディアスカディ



ズズズ……


「!?」


が、あっという間に黒球に吸い込まれていく。そして。


「ッァァァァ!?痛ってえええええ!!」


の攻撃が、奴に直撃した。不意打ちの攻撃で、奴はもろにダメージを受けてしまう。


「なんで、てめぇ……正気に、戻りやがったのか……」


その問いかけには答えず、彼は、私の前に歩いてくる。そして、私とリディ様、そして赤髪の青年を回復魔法で治癒した。


「ごめん、迷惑をかけたな」


「いえ、そんなことは……。それより、そのお姿は……」


は、私の言葉に首肯する。彼の体は半分、魔王化しているのだ。髪の半分は白髪から黒髪になり、ミノタウルスのような角が生えていた。そして、バチバチと黒い電気を纏った漆黒の翼も。


まるで、クロノス様のように。


「もう、大丈夫だ。あとは任せろ」


そう言って彼は、憎しみの対象であるレノウスの方に向き直る。まだ少し、息が荒い。


「剣の勇者。俺の仲間を傷つけたのは、それ相応の宣戦布告と捉えていいんだよな」


「くっ……」


レノウスがジリ、と後ずさりする。そしてその後ずさりした分を彼が1歩、また1歩と詰めていく。


『お前は、下がっていろ。奴隷の少女と赤髪の勇者を守ってやれ』


(クロノス様……!?)


念話で、クロノス様が私に話しかけてきた。


『こいつは、1歩進んだ。前の私よりも、圧倒的に早くな。


クロノス様の声は少し、熱を帯びていた。今までこんなことは無かったのに。期待、しているのだろう。彼の成長に。段々と歴史が、変わりつつあることに。


「ああ、くそ。くそくそくそくそ!!!ぶっ殺してやらァァァァ!!!!」


剣の勇者発狂し、技を連発する。


「一瞬で、終わらせてやる。……吸収無極点ブラックアウトポイント






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る