第3話
「この場で……………皆殺しです♪」
次の瞬間。
ザシュン
「きゃああああっ!!!」
グサリ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
ズシャ
「や、やめ、やめて!この子だけは……!ガッ……」
ゴシャリ
目の前で、村のみんながが次々と殺されていく。王国兵達が目の前にいる村人達を構わず殺していく。
「こ、これ……ね、ねぇベル……何が……みんな………なんで………?」
「…………………」
心臓がうるさい。バクンバクンなっている。
「ロゼ!ベル!」
ラリオットさんが叫ぶ。
「お前たちだけでも、逃げろ!」
「逃げないと!早く!」
「う、うん!」
僕らは村の出口に向かって走り出す。
だが、数メトル先に王国兵達が立ち塞がり、行かせまいとする。
「………っ!」
慌てて止まるが、二人の周りを王国兵が包囲した。
「お、この娘べっぴんさんじゃん」
「いいねぇ……ガキの方は……いらねぇな。殺すか」
殺すとかなんとか言われている。僕は反射的にロゼを守る体勢に入った。これは遊びじゃない。殺らなきゃ、殺られる。
「ベル……、どうしよう……!」
「大丈夫、僕が君を守るから」
深呼吸して、息を整える。これは狩りだ。
獲物は、人間。
力強く足を踏み込む。
「んなっ……!このガキ!」
王国兵が剣を抜く前に、正面に飛ぶ。そして、思いっきり顔面を蹴り飛ばす。急所は、
「痛ってえ!」
当然これで王国兵が倒れるわけじゃない。狙いは………
「っ!」
「あっ……!こいつ、俺の剣を奪いやがった!」
着地すると、素早くロゼのところに戻る。
「ベル……」
「大丈夫?」
「うん……、でも」
「僕は大丈夫だから。僕が道を開く。ロゼは全力で走って。出来れば、遠くまで」
「でも、ベルが……!」
いやいやと僕の手を握りしめ、離さない。
「僕もすぐに迎えに行くから。だから、ロゼは先に行ってて」
「でも!」
「頼むから、僕の言うことを聞いてくれ!」
思わず怒鳴ると、ロゼはビクッと体を震わせる。
「……絶対、絶対来てね?」
「約束する」
「絶対だよ?」
「ああ。もちろん」
「私、待ってるからね?」
ロゼは、目に涙を浮かべている。
「何ごちゃごちゃ話してんだよ」
王国兵がジリジリと距離を詰めてくる。
「僕が合図を出したら、行くんだ」
「うん」
再び僕は飛び上がる。いつもの狩りのように剣を握りしめる。短剣では無いため、少し扱いが悪いが、殺れる。
「っあぁぁぁ!!」
ザシュ
首に剣を突き立てる。そして、兵士がばたりと倒れる。殺した。初めて人を殺した。
「行けっ!!」
「っ……!」
ロゼが出口に向かって駆け出した。
「お前ら!逃がすんじゃねえ!」
王国兵たちが追いかけようとするが、その前に立ち塞がる。
「ここは……行かせない……!」
「はっ……子供に何が出来る!」
王国兵はロゼは諦め、僕に標的を絞ったようだ。
「殺してやるよガキが!」
「やってみろ!」
────────────────────
「所詮ガキだな」
もちろん、子供が訓練を積んだ大人に勝てるはずもない。先程手にしていた剣も奪いかえされ、タコ殴りにされていた。
そこへ、「剣」の勇者がやってくる。
「どうした」
「いえ、このガキが舐めた口をきくもので、分からせてやったところです」
僕は胸ぐらを掴まれて、ズイッとレノウスの前に突き出される。
「貸せ」
頭を無理やり掴まれ、地面になぎ倒される。
「がはっ……!」
硬い地面に叩きつけられ、視界が歪む。口の中が血の味が広がる。吐血したのだろうか。
「一般人が王国兵に楯突いたんだ。死んで当然だよな」
剣を首に突きつけ、ニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んでくる。
こいつの目、普通の目じゃない。狂っている。
「なんでわざわざ……バレるような言い方をしたんだ。もっと……上手い言い方が……あっただろ……」
「ん?ああ、わざとバレるような言い方をしたんだよ。わかんない?」
「………は?」
何を言ってるんだこいつ。わざとバレるような言い方をした、だと?
「だって、その方が殺す口実を作りやすいじゃないか」
「何を……言って……」
「んん……♪人を殺した時のあの悲鳴…絶叫……血の飛沫!ああ、想像しただけでゾクゾクするよ!」
僕は、何も言葉が出なかった。こいつが何を言っているのか分からなかった。理解することを、拒んでいた。
「俺は優しいからなぁ!あいつらと同じように、お前も一瞬で殺してやるよ。感謝しなぁぁ!」
剣が振り上げられる。
「っ!?」
反射的に、ぎゅっと目をつぶる。
………………ロゼは逃げきれただろうか。
親切な人に拾われるといいな。
ロゼには幸せな生活を送ってほしい。
僕はここで死んでしまうけど、彼女には生きていて欲しい。
彼女を守れたんだ。心残りはない。
でも、欲を言うなら………。
「好き」って、伝えたかったなぁ………。
僕はただ、自分に死が訪れるのを覚悟した。
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