花丸まあく!
鬼ごろ氏
第1話 スミレは純恋
「ピーヒョロロ」
「うるさいよー
「ヒューヒョロロ」
百円均一にしてはよく吹けたもんだ。 唾液を吸った紙製の娯楽用品を顎の力を緩めて外すともうだらしのない廃人の完成だった。
「えらい暇」
「みかん食べる」
「幼虫」
「ん」
対面に腰をかける
男勝りの私が唯一、給食の冷凍みかんでは勝率八割(自社調べ)の拳は振るわれなかった。
「なんだっけ白い霜みたいなの」
「アルベド」
「強キャラかよ」
確か、そういう名前のキャラがでてくるでけえ本をこの部屋に読み飽きてほっぽり出した気がするが
前読んだ漫画にも諦めて肉まんに歯磨き粉漬けて喰ってたなあ、あれは良かった。 あの作者ぜってー文章力あるもん、スカウターぶっ壊れるくらいの
それは言い過ぎた、測定不能くらい。
「なんか面白いことない」
「んーすっごい雨」
「全然面白くない」
「私は好きだったけどなあ」
「でた過去形」
「外出先なら風情があっていいんだけどね」
「帰るまでに止めばね」
カフェで読書とか憧れるけど結局は夢だからいいのであって実際にそんなことしたって憂鬱を理由に物語を閉じてしまう。 スマホ開いて通知確認してSNSとか眺めてあっ、この店Wi-Fi通ってるんだ。 海鮮悪くて我に返る。 そしてめくられていない本を片手に退店するまでが私のセオリー。
文観となら無限に話してくれて助かるんだけどな
「甘くない」
「人生だった」
なんだいそれって文観が言うのでいつものやつですよーて、みかんは冷凍にしなきゃ誰も食べないだろうに
「コタツに入れておこう」
「その手があったか!」
スフィンクスを横から見て美しき二等辺三角形ができあがるように起き上がろう。 いつだって新しい発見には失敗を恐れないど根性だ。
「冷やしたほうが美味しくないの」
「そうなの?」
うーんこの
「給食は冷やしてたじゃん」
「暖めると腐るからじゃないかな?」
やっぱり文観は天才なのかもしれない。
言われてみれば冷凍みかんは夏に支給されることが多かった、冬のデザートに冷たいのはでないのに無駄に
誰得なんだ。
「えらい暇」
「話題は繰り返される」
「このままじゃあ冷ややっこ水星が真っ逆さまで冬眠であります」
「宿題終わった?」
笛がないので吹くために用意しておいた肺の二酸化炭素を口いっぱいに溜めて威嚇、おらは怒ったぞ。
「そんなもの明日のホームルームでイチコロ」
「でも聞くじゃん、私に」
「そうだよ」
他にノーリターンで頼まれてくれるのは文観だけだし
「なら今やってしまおう」
「ほほぅ、そう言って僕が一度たりとも筆を握ったことがあるかい」
「ない……ない?」
こんなとこで真面目に逡巡されましても
「でも急かさなくていいから、得」
「いーやーだっっ。 学校終わったらもうなにもしないの明日の風が私を運ぶのだ!」
「昨日の風との違いは」
「ずばり日付」
「ノート開いて」
納得はしてもらえねえようだ、がっくし
「あー!!」
玄関の音は聞こえていなかった。
「ご飯作るから下げてね-」
「っしゃあ!!」
まーちゃんは買い物袋と共に姿を消すがルールを破ることに関して恐ろしいほどの怒りをあらわーにするのでこういうときには大変ありがたい。 使いこなせれば銃砲するレベルだ。
「片付けようか?」
「はあ」
くっっっそいい顔で広げたばかりの宿題を顎しゃくれさせながら床に降下させるとご飯ができあがるまでの間なにするか論争が今日も始まる。
ちなみのまーちゃんがご飯をもってきてくれるのにかかる時間は大体でいうところ宿題が全部終わっちゃうくらい。
その空白の時をいかに効率よく使うかが毎日の課題である。 放課後なんてものは曖昧で気がついたら終わってるのだから
「どうなっても知らないよ菫」
「だいじょうぶだいじょうぶ。 私無敵だから、気がついたら無双してんのチートなの」
「嫌いって言ってたじゃないか俺TUEEEE」
「うん、すっげー嫌い」
家庭を大事にせず何でもパパッと結果だけ用意されても好感あない。
三分クッキングだって
それに私はまだこの過程を楽しみたい。
「夏までには彼ピッピつくりたいね~」
「じゃあ頑張らなきゃだ」
「ごはん! できたよ~」
「ひょー!! 肉じゃが来ましたありがとうございます」
「「いただきま」」
まーちゃんの家でだべって飯食って一緒に帰って寝て起きて
また、明日の放課後。
この放課後の延長線をくぐる。
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