第224話 大規模カジノの不運
◆◇◆◇◆◇
大陸オークションへ追加の出品登録をしに行った帰りに襲ってきた奴らが属する裏組織を壊滅させた。
その首領と幹部達から情報を奪い終えると諸々の後始末を済ませる。
[ユニークスキル【
幹部の一人から良さげなユニークスキルを手に入れた。
今回壊滅させた裏組織の者達の魂を使って【幽世の君主】の【霊魂吸喰】で増大させた分のキャパシティは、このユニークスキルで使い切ってしまったが全体的にはまだ余裕がある。
エドラーン幻遊国の首都に拠点を置く他の裏組織も潰してもいいが……。
「……いや、やめておくか」
首都イディアの裏社会では四つの大きな組織が勢力争いをしており、今回潰したのはその一つだ。
残り三つの裏組織の拠点の近くには幻主の力が及ぶ要所があるし、一つ減って三竦みになった現状から更に状況を動かしてしまうと予想外のことが起こるかもしれない。
俺が潰した裏組織はイディアの四大裏組織の中でも金持ちな組織だったらしく、今いる本拠点では予想を超える額の資金を得ることができた。
これも保有している各種幸運系スキルのおかげかもしれないな。
報復を済ませて追加の活動資金も得られたため、関わってこない限りは他の裏組織は放置でいいだろう。
【隠神権能】で姿を消してから現場を立ち去ると、適当な路地で変装を解いた上で姿を現してから宿泊しているホテルへと帰った。
「今戻ったーー」
「ピィーッ!」
「ぶっ……ルーラ、前が見えないんだが」
「ピッピィッ!」
「ピピッ!」
「ピィ、ピッ」
部屋に入ると、銀毛の
顔面で受け止めたルーラを引き剥がして片手で抱えると、首から下げている鳥籠代わりの異空間系ペンダントからアモラも出てきた。
金毛のアモラはルーラを載せた手の手首に飛び乗ってきて、ルーラと話し出した。
二羽の会話から分かったのは、ママが怖いという内容だった。
宿泊している部屋のリビングに移動すると、部屋の端の方にママことリーゼロッテがいた。
向かい側のソファにはレティーツィアが座っており、どうやら二人でボードゲームをしているらしい。
ただ、二人でピー音が必要な殺伐とした内容の会話を繰り広げながらプレイしているため、とても盤上を覗き込めるような雰囲気ではない。
二人とも身分的に正面から言い合えるような相手は貴重だろうから、そっとしておくとしよう。
そんな場所から逃げてきたルーラを連れて、二人から離れた場所で和やかに談笑している残りのメンバーの元へと移動する。
「ただいま」
「おかえりなさいませ。無事に出品はできましたか?」
「ああ。あと、一階で最新の出品リストを貰ってきたぞ」
都内有数の超高級ホテルなだけあって、ここの宿泊客には大陸オークションに出席する者も多く、常に最新の出品リストーー内容的にはカタログと言うべきかーーが用意されている。
そんなオークションカタログが更新されたら部屋まで届けるよう頼むついでに最新のモノを受け取ってきた。
「へぇ、開始価格の時点で一千万を超えているのもあるんだ」
「これは等級が高いからなのかな?」
「そうだと思いますよ。
「叙事級か。上級貴族でも中々お目に掛かれないランクのアイテムね」
「侯爵家なら持ってるだろ?」
「実家にはあるけど、武具系だから普段は使わずに倉庫にしまったままよ。だからあまり馴染みはないわね」
まぁ、武具タイプなら貴族は冒険者みたいに普段から身に付けたりしないよな。
そんな叙事級の武具をはじめとした各種
◆◇◆◇◆◇
エドラーン幻遊国には多数のカジノが存在する。
その中でも著名なカジノほど人の出入りが激しく、人々の盛者必衰の起こる様もまた激しい。
俺達が訪れたカジノ〈
カジノのために用意した軍資金をチップへと変えると、その一部を仲間達に配った。
「取り敢えず手持ちのチップが無くなったら俺のところに集合するように。あと、チップ以外は賭けるなよ」
大規模カジノであるエンプティアサクセレスは、全体的に賭け金が大きい。
使い方を誤れば、一人一人に渡した十万オウロ相当のチップもあっという間に無くなってしまうことだろう。
全ての大規模カジノは国営、つまりは幻主のお膝元であるためカジノ側は勿論のこと客側のマナーも比較的マトモとのこと。
これがエンプティアサクセレスを滞在初日の夜の遊び場に選んだ理由であり、ここでなら仲間達も大きな失敗やトラブルが起こることなく遊ぶことができるだろうと判断した。
ユニークスキル【
それでも失敗するようなら余程ギャンブルの適性が無いということになるが……どうなるやら。
一抹の不安を抱きつつ仲間達を送り出すと会場を見渡す。
先ずは無難にスロットに向かうとしよう。
「さて、使っておくか」
常時発動させている【黄金運命】【天運招く黄金竜蛇】【財宝の番人】【黄金律】だけでも大勝ちできるだろうが、せっかくなので他のスキルも使うことにした。
昼間に手に入れたばかりの【招金と賢威の魔権】の【金運招福】を発動させ、最後にユニークスキル【
【運命の戦乙女の祝福】の二つある能力の一つ【運命探針】は、『大量の魔力を消費することで自らにとって良好な運命が待っている方角とその強さが分かる』能力なのだが、このまま使用すると探知する範囲は世界全体にまで及んでしまう。
この世界に来てすぐに使った時は世界との関わりが全く無い状態だったので大したことはなかったが、一年が経った今考え無しに使うと取捨選択が困難な量の運命の矢印が見えるのは確実だ。
運命という名の膨大な量の情報を受け取ると今の俺でも脳にダメージを受けかねない。
いくら回復できるとはいえ自ら進んでダメージを負いたくないのと、運命に左右される奴隷などになりたくなかったので使用していなかったが、ここのカジノ内に範囲を限定するなら使用してもいいだろう。
「指し示せーー【運命の戦乙女の祝福】」
発動した瞬間、反射的に眉間に皺が寄るほどの情報の波が押し寄せてきた。
【苦痛耐性】のおかげでだいぶマシだが、やはり気分の良いものではないな。
様々なスロットマシンが並ぶ一角にある台の前へと座る。
超人的な動体視力を持つ者も珍しくない世界にあるスロットマシンなだけあって、目押しができるような台はエンプティアサクセレスには存在しないらしく、目の前にある台もそういった台の一つだ。
そんな純粋な運のみで勝つしかないスロットマシンの中でも、この種類の台は賭け金の大きさで有名らしく、億万長者を夢見て破滅した人々の数だけジャックポットの賞金が積み上げられていた。
スロットのレバーを引く直前に【星の天秤】を発動し、【無限宝庫】内にある五百万オウロ相当の変なデザインの黄金像の複製物の一つを対価に捧げて、幸運の能力値を強化しておく。
千オウロ相当のチップを入れてレバーを引く。
流石にいきなり一発目から当たるということはなく、無常に手持ちのチップが減り続ける。
やがて十一回目のレバーを引こうと手を掛けた際に、なんとなく次は当たることが分かった。
なるほど、こんな感覚か。
ギャンブルで大当たりがくる感覚を学ぶとレバーを引いた。
そして予測した通り、目の前の画面では幸運を示す七の数字の柄が三つ揃った。
つまりはジャックポットであり、累積配当金一千万オウロを手に入れることができた。
「あ、当たったぞ!」
「凄い。あの台って本当に当たるのか……」
「幾ら当たったんだ?」
「一千万だってさ。羨ましい……」
他の客の声を背後に聞きながら次の台へと移動する。
その後もスロットコーナーで二度大当たりを出して合計で二千五百万オウロを稼いだ。
ここでの用は済んだので、次はルーレットコーナーへと移動した。
数あるルーレットのテーブルの中から良さげなテーブルを選ぶ。
席が埋まっていたので待っていると、運が良いことにすぐに席が空いたのでそこへと座る。
三十八区分されたホイールのポケットのうち、ゼロ一つとゼロ二つの数字がそれぞれ書かれた二つのポケットが緑色である以外は、一から三十六までの数字が書かれた赤と黒のポケットが交互に並んでいる。
前世のルーレットと変わらないので難しくはないが、初回なので適当に赤か黒に少額を賭けて様子を見る。
三回に一回は勝ちながらも、【火眼金睛】でディーラーとホイールの観察を行い、癖や力加減などの情報を元に【大賢者の星霊核】の演算能力で落ちるポケットのパターンを分析していく。
分析が終わったので、スロットの終わりと共に効果が切れていた【星の天秤】を使い、再び幸運値を一時的に強化する。
ホイールが回転しボールが投げ入れられたのを確認すると、黒の十三に一目賭けをした。
スロットで勝った分とカジノ用の軍資金の残りを合わせた約三千万オウロ相当のチップを全て賭けた結果、無事に勝利し賭け金は三十六倍になって返ってきた。
俺が十億オウロ以上の配当金を得たことに周囲は喧騒に包まれ、担当したディーラーはあまりの額に気絶して倒れてしまった。
「次は何処にするか……」
カジノ側の人間の戦々恐々としている気配を感じつつ、【運命の戦乙女の祝福】を発動させて次の行き先を決める。
大当たりを出しすぎたからか、初めに見た時から運命に変化が起こっており、此処ではこれ以上の大勝ちは望めそうにないらしい。
正確にはまだ大勝ちできるが、これ以上大勝ちすると俺にとって良くないことが起こるみたいだ。
金は欲しいが面倒事は御免なので、荒稼ぎはこの辺で止めるとしよう。
明日以降も他の大規模カジノを中心に回る予定なので、今日のところは仲間達の様子を見て回って残りの時間を潰すことにした。
[特殊条件〈黄金招福〉〈黄金招禍〉などが達成されました]
[スキル【黄金禍福の使者】を取得しました]
[特殊条件〈大々富豪〉〈億万稼ぎ〉などが達成されました]
[スキル【
[経験値が規定値に達しました]
[ジョブスキル【
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