第61話 加護
◆◇◆◇◆◇
違法奴隷商人達がいる場所に辿り着いた。
彼らが使おうとしていた脱出路は屋敷の地下の奥まったところにあるため、脱出路が使えない状況だと地上の屋敷への道以外には行き場が無くなってしまう構造になっている。
そのため、脱出路が使えないと分かったらすぐに移動して然るべきなのだが、突然拠点を襲撃されたことで冷静さを失っていたからか、いつまで経っても脱出路付近を彷徨いており、必然的に袋小路に陥っていた。
護衛も含めれば数は二十人近くいるようだ。
重要人物の護衛ならば、そこらの敵兵よりも情報を持っている可能性がある。
【
レベル自体はそれなりにあるようで、冒険者のランクで言えばBかC。
どちらかというとCランク相当が殆どだろう。
冒険者界隈においてBランクは強者の部類に入る一方で、Cランクは強者ではないが
少なくとも中級冒険者ではあるので弱者には含まれないらしい。
弱者では無いが俺よりも格下なのは間違いないのもまた事実。
格下への特効とその討伐時に得られる経験値を増大させる【弱肉強食】のスキルがあるため、討てばそれなりに経験値が得られるんだが、積極的に狩るほどでもないという微妙なラインだ。
そんな微妙な価値しか無いなら情報源として生かして捕らえてもいいだろう。
そう判断したので、【猛毒生成】で麻痺毒と睡眠毒を主体にした非致死性の複合毒を生成した。
手のひらの上に生成された毒液を【
そうして発生した毒煙を【
異常に気付いた護衛達が隣接している別の部屋へと通じる扉へ向かおうとしていたので、【発掘自在】で扉の前に金属製の槍衾を大量に生成しておく。
護衛達のレベルから予想される状態異常への抵抗力を考えれば、然程時間をかけずに毒で動けなくなるだろう。
息を止めるのにも限度があるから、たぶん五分も掛からないだろう。
あ、悪あがきを防ぐために扉の前以外にも部屋中に金属製の槍衾を生成しておくか。
いきなり生成されて迫ってきたら、ビックリして煙を吸ってくれるかもしれないしな。
[経験値が規定値に達しました]
[ジョブスキル【
[保有スキルの
[マジックスキル【岩土魔法】がマジックスキル【大地魔法】にランクアップしました]
「お。魔法スキルの初ランクアップだ」
肝心の魔法スキルを使わずにランクアップしているんだが良いんだろうか……ま、いいか。
所持している魔法スキルの中で次にランクアップしそうなのは【空間魔法】だな。
空間系の結界やら転移やらを多用しているから当然か。
次点で【重力魔法】が続いて、他は大して変わらない熟練度だから、【空間魔法】を優先して使うとしよう。
マップ上に表示される室内にいる奴らのステータスを見ながら、空間系魔法である『
二つ合わせて効果は【千里眼】と同等……まぁ、負担や燃費の面では下位互換だが、これも【空間魔法】の熟練度を上げるためだ。
この二つの魔法のセットを更に多重に発動し、ランドルム内外の各地から見聞きした情報を集める。
そうして集まった情報を【並列思考】と【高速思考】で捌いていく。
あ、そうだ。
後回しにしていたスキル合成の組み合わせを今のうちに実行しておくとしよう。
一つ目を除いた他三つの組み合わせに【超直感】が物凄く反応しているから気になっていた。
余程強力なスキルが出来上がるんだろうか?
[スキルを合成します]
[【学習】+【集中】+【集中力強化】+【知力強化】=【超学習】]
[【闇夜の狩人】+【狩猟採集】+【追跡】+【撤退】+【狩猟の心得】+【眠れる獅子】+【襲撃の極み】+【立体機動】=【狩猟神技】]
[【武芸百般】+【軍勢統括】+【統率】+【対人戦の心得】+【
[【魔導の極み】+【
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈狩猟神の加護〉を獲得しました]
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈戦神の加護〉を獲得しました]
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈魔導神の加護〉を獲得しました]
「……なんじゃこりゃ」
何だか予想以上の成果が舞い込んできたんだが。
加護……加護ね。
やはりこの世界にも神と呼ばれるモノが存在するらしい。
伏せられた文字は
[各種加護の効果により、以後、一部スキルの取得経験値が増大されます]
[各種加護の効果により、一部スキルの必要経験値が変更されました]
[保有スキルの熟練度が調整されます]
[保有スキルの熟練度が規定値に達しました]
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[マジックスキル【空間魔法】がマジックスキル【次元魔法】にランクアップしました]
[マジックスキル【重力魔法】がマジックスキル【星動魔法】にランクアップしました]
[特殊条件〈戦神の加護〉〈一騎当千の兵〉などが達成されました]
[ジョブスキル【
通知の内容とタイミングからして、加護は予め定められたルールに則って与えてきているように思える。
仮に何かしら法則があるとして、それは合成してできたスキル名に〈神〉が含まれていることなのか?
それとも、そのスキルが内包するエネルギー量と密度が一定値を超えることだろうか?
或いはその両方か、それ以外か。
だが、加護持ちが皆俺と同じような方法で加護を得ているとは思えない。
となると、俺のこの取得方法は
もしくは、そんな理屈は関係なく、ただ個
「……ま、考えても答えは出ないし、別にいいか」
三つの加護のおかげで、結構な数のスキルがランクアップし、新たな力が得られたことさえ分かっていればそれで良いだろう。
原因である【狩猟神技】【軍神覇道】【魔導神威】の三つも、それぞれ単体で見ても強大な力がある。
素材にしたスキルの上位互換の効果があるのは勿論のこと、新たに追加された力もあるようで、三つとも特殊系スキルの分類だが、実質ユニークスキル級と言っても過言ではない。
「今後も同系統のスキルは合成していくべきか。そう上手く集められるとは限らないが、意識だけはしておくかな……はて、何か忘れているような?」
何だっけ、と魔法行使が格段に楽になった多重発動中の魔法を維持しながら記憶を振り返る。
答えはすぐに行き着いた。
「そういえばいたな……うん。今更だが確保しとくか」
新たに得た力を確認していて忘れていたが、元々違法奴隷商人達を捕まえるために此処に来たんだったな。
魔法を解除してから室内を覗き込むと、既に全員が身動き一つ取れない状態で倒れていた。
全員眠っているようで、【看破の魔眼】で直接視ても寝たふりをしている者はいないようだ。
室内の大気も地形も全て元通りにしてから部屋に入り、全員の魔力を奪ったうえで武装解除がてら身包みを剥ぐ。
それから【万能糸生成】で創り出した頑丈な糸を編んでロープを作る。
違法奴隷商人と護衛の二つのグループに分けてから、それぞれを【操糸術】と【拘束術】を使って一繋ぎに連ねるように縛り上げる。
取り零しが無いかを確認してから、【
地上へと戻る道中、『
向こうも捕らえられていた人達の引き継ぎは既に済んだらしく、こっちに合流するそうなので地上に着いたらそのまま待っていればいいだろう。
途中で拠点内を捜索していた領主麾下の兵士達と会ったので、指揮所に目標を確保したことを伝えるために先行してもらった。
長いようで短い、忙しない夜だったが、拠点襲撃作戦は成功した。
あとの事後処理はアルムダ伯達に任せて宿の柔らかベッドで寝たいところだが、まだ逃げ出した一味の捕獲が残っている。
情報過多で精神的に疲れているので、さっさと捕まえて早く休みたい。
殺していいならすぐ終わるんだが、そうはいかないんだろうな。
此処から一気に転移すればすぐに捕らえられるが、バレた時のデメリットが大きすぎるので、転移魔法を使うわけにはいかない。
まぁ、ランドルムを出てからショートカットするのに使うのはアリだろうけど、戻る時はなぁ……いや、気絶させればイケるか?
それから地上の指揮所で違法奴隷商人達の引き渡しを終えると、この後の一連の流れをシミュレートしながら、リーゼロッテが合流するのを待つのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます