ビーフorチキン?

フィガレット

ビーフorチキン?

「どちらになさいますか?」


 目の前の綺麗な女性が俺に問いかける。


 俺は今、究極の選択に立たされている!

 どちらにするべきか・・・。


「食用ですか?」


 俺は逆に問いかける。情報は大事だ。

 馬鹿な質問だと思うだろう?

 しかし重要なのだ。


「食用に決まってるじゃないですか♪」


 女性はにこやかに言う。

 冗談だと思われたのかも知れない。

 だが重要なのだ!


 牛か・・・鶏か・・・。

 俺が望むのはどちらなのか、どちらの方が有益か。


「産地はどこですか?」


 これも重要なのだ。


「どちらもアメリアの牧場で放牧される自慢のお肉ですよ♪」


 放牧か。広大な土地で自由に育つのだろう。


「他の選択肢はないのですか?」


 俺はもしかしたらと思い確認する。

 面倒な客だと思われたかも知れない。

 でも重要なのだ。


「申し訳ありませんが今ご用意出来るのはこのどちらかになります。」


 やはり他の選択肢ないのか・・・。


「なぜこの二択なんですか?」


 他には無かったのだろうか?


「今日ご用意出来るのがこの2種類だけだったんです。

 申し訳ございません。」


 俺は決してクレーマーではない。

 別に怒っている訳ではないのだ。


「どちらも選ばなかったらどうなりますか?」


 俺は決してふざけている訳ではない。断じてない。


「それですと何もご提供出来ませんので、なくなってしまいますよ?」


 やはりそうか・・・。何も無しになってしまうのは勿体無い。


 やはり牛がいいだろう。それは苦渋の選択だった。


 俺は牛に絞り更に質問をする。


「牛は子牛ですか?」


 出荷時期は色々あるだろうが・・・

 そう言えば子牛の肉はやわらかいらしいなぁ。食べた事ないけど。


「牛は牧場で子牛から始まり、大きくなってから出荷されます♪」


 そうか・・・大変そうだな。


「何か特別な牛だったりするんですかね?」


「そうですねぇ。黒毛のブランド牛ですので非常に美味しいはずです。」


 なるほど。美味しそうだ。


「美味しくいただいてもらえると思いますよ♪」


 味の問題では無いのだが・・・。


「牛でお願いします・・・」


 俺は・・・牛を選ぶ!


********


「今日お客さん来たの!?」


 女性の同僚は驚いた様に言った。


「そうなのよ。よりによってこんな日に可愛そうに・・・」


 先程の女性が言う。


「今日は、食用の牛と鶏だけだったものね・・・」


「でも、あの人だったら案外上手くやるかも知れないわね」


「え?もしかして凄い特典でも付いたの?」


「んー『成長加速』と『調理スキル』が付いてたわね」


「うわぁ・・・」


**********




 俺は広大な草原にいた。


 俺は・・・これから牛として生きていく!

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