第17話


「はぁぁぁ・・・・疲れた・・・・」


怒涛の晩餐会が終わり、湯あみを終えソファーに行儀悪くも寝そべっていた。


あれから、あの場にいた人達は皆牢へと収監され、ダリウス陛下は自室で軟禁されている。

この件で一番喜んでいるのはブラッドリーだろう。

国王になれるからではない。アルフ・サットンから愛する兄を取り返す事が出来たからだ。


ブラッドリーの目的は、初めから兄であるダリウスをアルフ・サットンの魔の手から救う事だった。

ダリウス、アルフ、カレンが幼馴染だった様に、ブラッドリーも彼等と幼馴染だった。

だが、ある時からアルフの行動、言動に疑問を抱き始め距離を取るようになったのだという。


この国に来て間もなく、ブラッドリーと接触し互いの情報を交換し合っていた。

神殿に行った時にこっそりと会ったりもしていたが、私が頻繁に動くと色々目立つので、殆どがアイザックを通してだったけど。


「・・・・・ねぇ、アイク」

「何だい?」

ミラとアイザックは寛いでお茶を飲んでいるが、私みたいにだらけてはいない。まぁ、いつもの事だけど・・・・

「ブラッドリー殿下って・・・陛下の事、兄弟とかって意味じゃなくて、好きよね」

「相変わらず、ぶった切りますね。まぁ、その通りですよ。一人の男性として愛してるみたいだね」

「やーっぱりかぁ」

ブラッドリーと会って、この国の事を話していると当然の事ながら兄である国王の事も話題に上るのだが・・・・

その時の彼の顔が、声が、雰囲気が・・・・恋する乙女の様だったのだ。


初めは勘違いかと思ったわ。重度のブラコンなのだと。

でも、精々私が会うのは月に一~二回よ?でもね、会うたび『あれ?気のせい?』から『マジだわ!これ、大本気おおまじだわ!』って思うのに、そう時間はかからなかった。

「妃殿下はこの事知っているのかしら?」

「相手は特定できてなけれど、怪しいとは思っているみたいだね」

「へぇ・・子供も二人いるのよね?」

「二人いて、五才と四才の男児だよ」

「殿下って確か二十五才だっけ?」

「十九才でご結婚され、翌年にはすぐにお子様が生まれ、さらにその翌年にも」

「なんか、仲良さそうに見えるけど」

「お子様が生まれてからは、没交渉みたいだ」

「えっ!マジで!?」

殿下も妃殿下も、まだまだ若いのに?

「殿下は陛下を、愛してるっていうよりも、盲愛の域だと思う。本来であれば、妻を娶る事すら嫌だったみたいだけど、全ては愛する兄の為みたいだね」

まじかぁー。改めて言われると、じわじわと現実味が帯びてくるわ。


ダリウスの周りにはサットン兄妹がおり、常に羽虫の様にカレンが纏わりついていた。

兄を愛してはいるが、国王としての結婚は必要不可欠。だが、カレンとだけは許せなかったらしい。

だが、このままカレンがまとわりついていれば、きっと婚期は遅れるだろうと、兄の代わりに結婚し子供を作ったのだと言う。

「・・・・いや、意味が分かんないんだけど。なに、代わりにって」

「ぶっちゃけ、陛下が結婚しなくても後継ぎは自分の子をあてがえばいいだろ?つまりは、陛下は一生独身でもいいって事になる」

「うっわ~・・・理解できん!」

カレンの事は嫌っていたけど、態のいい虫よけにしてたって事なのね。

殿下は政治の事に関しては、恐らく陛下よりも優れていると思う。でも、そのほかの事に関しては、異常だわ。特に陛下の事に関しては異常な執着だもの。

愛する兄の為ならば、妻も子も道具のような扱いだし。

「じゃあさ、私との結婚はどう思っていたのかしら?」

「ビーとの結婚は、致し方無いかなと諦めていたみたいだ。兄の可愛らしさと美しさで有名な王女との間には、きっと兄に似て可愛らしい女の子が生まれるのではと妄想しては、気持ちを抑え込んでいたみたいだね」

愛する兄が何でも一番のブラッドリーの話に、ぞわりと鳥肌が立った。

「なるほどね。じゃあ、今回の事件で良い思いしたのって殿下だけなんじゃない?」

「そうかも。邪魔だったサットン兄妹は排除できるし、愛しい兄が手に入る。陛下の処分だってきっと甘いものになる筈。何らかの理由を付けて手元に置くだろう」

「陛下、貞操の危機かしらね」

「あの殿下なら、ありえるかも。でも、かなり上手くやらないと、陛下の人間不信にとどめを刺す事になるだろうな」

あぁ・・薔薇の世界だわ!でも・・・

「陛下の事を手に入れたら、奥さんと子供の事なんて、どうでもいい扱いになりそうね。可哀想に」

「まぁね。今でも必要最低限の接触みたいだし、当然二人目の子供が出来てからは部屋も別々だし」

「徹底してるわね」

「妃殿下には男を作ってもいいとまで言っているらしいよ。子供が出来ても認知はしないけどって」

「えぇ!何それ!そこまで言われて怪しい位にしか思ってないの!?」

「だって、殿下にはからね」


女の影はね・・・・


「はぁ・・・難儀だわね。まぁいいわ。うちらには関係ないし」

「そうですわね。明日の為に、もう休みましょう」

今までまったりとお茶を飲んで、聞き手に徹していたミラがこの場を締めくくる。

「そうね、休みましょう!」


なんだか、いらない情報が多すぎて、頭を空っぽにして早く布団に潜り込みたかった。


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