記録No.12 作戦会議

会議室に着くと、もう他の隊員たちは既に座っていた。

…シャロと無線会話するのも考えものだな、まぁ辞める気は無いが。


「…全員揃ったようですね、では、偵察班と諜報部からの情報を踏まえ、作戦会議をします、まず敵情報」


会議室の中央に机があり、ホログラムが写せるようになっている。

その机を全員で囲むように立ったり座ったりしている。


「敵作戦名:『RUIN』、かなり大規模な共和国と貴族国の共同攻撃作戦らしいです。敵エース部隊も集中しているようです、先程の迎撃戦でも、『残酷兵士』を確認しました。ディーコン大尉が1人で全部やってくれたわけですが…話を戻します、本作戦では敵エース部隊をかなり確認している上、今回ディーコン大尉が派遣されている理由である大型新兵器が導入されているそうです」


…本格的である、まぁ実地なので当たり前なのだが。

そして、少佐の次の言葉で


「今現在その新兵器は、水上大型戦艦を15隻、縦5横3の大きさで配置されているそうです」


全員が沈黙した。

ちなみに、少しキャラクターが言うにはおかしなセリフになるが、この世界での水上戦艦の大きさは…まあ、俺らが普段使いしている機体の30倍ほどの大きさである。

ついでに言うと、水上戦艦を相手取るのですら、そこそこの実力がいるらしい、教官が言うには。

つまるところ、


「…冗談、ですよね…」


今までそんなスケールの兵器は見たことがない。

かなり大きいものでも、水上戦艦以上のものは作られていなかった。


「私もそう思ったんですがね…残念ですが、この情報に間違いはありません」

「…承知しました」

「ほ~…」

「勝てねぇよそんなの…」

「どうしろってんだ…」


周りの隊員たちが口々に嘆き始めた。


「まあ、嘆いたってしょうがない。少佐さんよ、弱点とかはわかってんのか?」


ヒュー、イッケメ~ン。

優秀な取りまとめ役がいると場がの引き締まり方が違う。

主に俺の経験では、今までこんな緩急のついた場所は初だ。


「それなんですが…分かっていません…」

「「へ?」」


俺とアルフレート少尉の声が重なった。


「…少佐、まさかですが、それが実戦投入された際の勝算って…」

「…場合によっては0です…」


…あり?もしかしてかなりヤバイ?

少尉の額に汗が浮かんでいる。


「…本部はなんと?」

「『現場指揮官にすべて任せる』と…まぁ、下手な命令よりマシではあるんですが…」


少佐が苦笑する。

おそらく本当に打つ手なしなのだろう。

…仕方ない、


(…やってみるか)


おそらくうなだれている隊員たちの中に、まさか自ら、


「少佐、自分が相手取りましょう」


化け物に挑む輩はいないだろう。

俺も正直あまり気乗りはしていない。


「た、大尉…お願いできますか…?」


…この人も、かなりキャラぶれてきたな…

少佐が目を子供のように輝かせて懇願してきた。

作戦会議する目から困っていたとかそういうオチだろうか。

なら先に言ってほしかった、と言いたいが、そういえばシャロと無線会話をしていたため、こちらも悪いな、と心で独り言ちた。


「じゃあ━」

「━イキるんじゃぁねえぞ坊主、無理に決まってんだろ」


同意で丸く収まりそうだった所に、めんどっちい声が入った。

聞き覚えのある声だ。


「…なんですか、ギェラグ伍長」

「なんですかだぁ?ガキが小生意気なこと言いやがって、おめぇ立場わかってんのか、少佐とも、少尉とも馴れ馴れしくしやがって…」


…なんなんだこのおっさんの成底内みたいな歳の野郎は。

何を言いたいのか正直意味不明だ。

今は作戦会議中、私情は慎むべきではなかろうか。


「おいおい落ち着けよ、ギー」

「黙ってろ、ルース」


おっと、雰囲気がまずくなってきた。

俺はとっさに、


「伍長、会議の後にいくらでもなんでも付き合うので、今は勘弁していただけないでしょうか」


伍長の腕をつかんでそういっていた。

失敗だったと気づいたのは主に周りの視線が、


「あ、大尉ほっときゃいいのに」


という微妙に呆れを含んだ色に変わっていたからということと、伍長が微妙にキレていたからであるである。




その後の作戦会議では、各敵エース分隊に注意、そして何より驚いたのが、『オーバードライブ・フライヤー』が来るということだ。

憧れなので、正直楽しみではあるのだが、自らあの化け物とのタイマン勝負を望んでしまったので、会えるか怪しい。

そしてその前に俺は、


「…何をお望みですか、伍長…」

「一つしかねぇよ、1対1だ、シュミレーションでな」


この戦いを乗り切らねばならない。

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