記録No.2 日……常…?

「あ、ようやく戻ってきやがったな」

「……なぜ教官が…」


そこに立っていたのは、教官だった。

ちなみにここの教官は、ある程度俺らにやることを示すだけで、基本的にはなにか行事以外、話すことは無いのだが…


「シュミレーション中にプロ連に絡まれたんだろ?お前、これで察しな」


どうやら、あの件がまた引きづられているようである。

落とされた上に文句まで送り付けてくるとは、俺は随分と高値の喧嘩でも買ったのだろうか?


「あ〜…ということは、俺、叱られますか?」

「…名目としては説教しとけと言われたな、だが〜…」


教官は俺の頭に手を乗せて、


「プロを落としたんだろう?実戦に行ったことがある、その上シュミレーションだ、とあの若いのは言い張っていたが、ディーコン、今回は君の実力だ、誇っていい」


賞賛してくれた。


「どうもありがとうございます、ですが、俺個人の技量では無く、教官のご指導あっての事です」

「嬉しいことを言う………が、照れ隠しに敬語は変わらないな、ディーク、可愛さはなくなってしまってるが…」

「わちょっ、やめてくださいよ教官!」


わしゃわしゃと頭を撫でてきた。

この人はいつもこうなのだ、生徒思いというか、情に厚いというか…

とりあえず悪人ではない。


「いいじゃないか〜、ここの所、ろくに生徒と触れ合いがないんだから、それなはよく世話してやっただろ〜、お前ら2人は特に」

そう言ってシャロにも手を伸ばした。

「…教官は私たちに甘すぎます、もう少し厳しい対応を所望します」

「ディークやシャロのような賢い馬に鞭打ってもしょうがないだろう、それに、飴を多く与えたから今があるんだろう?」

「ぐぅ…」


見てのとおり真っ直ぐな人だ、お世辞などは必要時以外言わないだろう。

それに俺もシャロも否定というか、意図的に反発する理由がこの人には無いのだ。

この人のようになりたい、と思ったことは何度もあった。

ただ、それがなぜ過去形なのかと言うと…


「ところで教官、前言ってたお見合いの話は…」

「発言を禁ずる口を慎めだまれふれるな喋るな…」

「…アイアイサー」


悲しいほどに男運がないという所だろうか、可愛そうである。


「ご武運をお祈りします…」

「ホント祈っといてくれ…」


では、と、俺はシャロの手を引いて、教官は自部屋に戻ろうとした。


『緊急、緊急、奇襲部隊接近中、先頭か能因は直ちに迎撃せよ、これは訓練ではない、繰り返す…』


切羽詰まったアナウンスが叫んだ。

俺は咄嗟に、教官に聞こうとした。


「きょうか━」

「━今ここにディーコン・ウェイドとその相棒のシャーロット・フェンの出撃を許可する」


が、どうやら聞くまでもなかったらしい。

俺は方向転換し、

「シャロ、行くぞ」

「うん」

相棒と手を離して格納庫へ走った。

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