帰省
2008年 夏
お盆休みで実家に帰省する事となった隼瀬達。熊本空港に降り立ち、迎えに来た亮の車の中で隼瀬は飛行機で少し寝ている間に見た奇妙な夢の事を冬未に話す。
「でね、その世界じゃなんちゅうか、男の子が女の子んごたっでね、ばってん冬未と僕はあんま関係性変わらんごたった、あ、そうそう、なんでかあおちゃんも夢に出てきて・・・・・・」
「・・・・・・もしかしたらそぎゃん世界もあるんかな」
敢えて隼瀬の記憶の事は言わない冬未。言っても今の隼瀬には信じてもらえなさそうだしと判断したのだ。
「いやいやいや、冬未は本当そういう空想の話好きよね、ねえお義父さん」
「女の子はいつまっでんそういうもんよ」
「そういうもんかあ」
「そうそう」
(隼瀬、それ空想じゃにゃあよ)
そして実家に着いてから、隼瀬が自分の実家に荷物を置きに行っている内に、冬未は隼瀬の記憶の件について碧に電話で問い合わせる。
『隼瀬の前世というかあっちの世界の記憶って消えたわけじゃないと?』
『まあ、はあちゃん本人がそこにおった記憶がないだけで、世界の記憶が完全に消えたわけじゃにゃあよ』
『だけん夢に出てきたりするわけか』
『そうそう、まあそぎゃん気にせんでよかけんね、本人もふうちゃんとの関係はどっちでん変わらんて言いよるとおり、あっちでもこっちでもはあちゃんははあちゃんよ』
そう言ってすぐに電話を切る碧。彼女の言う通り、隼瀬は隼瀬、それは分かっているが確かにあっちの隼瀬もすぐこちらの世界に馴染んだとはいえ、それを忘れている今の隼瀬がそれを思い出した時どうなるかと冬未が考え込んでいると、隼瀬が冬未を呼びに来る。
「冬未、うちん庭でバーベキューするけん準備手伝ってよ、もうお義父さんもお義母さんも来とるけん」
「・・・・・・あ、うん」
「なんね、何か考え事?」
「うん、ちょっと仕事の事でね」
「もう、こっち帰って来とる時くらい仕事の事は忘れてよかたい」
「ふふ、そうね。じゃあ行こっか」
普段と変わらぬ隼瀬の顔を見て、彼の記憶の件も本当に碧の言う通りなのかもなと、その心配をすぐに吹っ切る冬未。
隼瀬の実家
「あれ、お姉ちゃん達はおらんと?」
冬未が周りを見渡して、孔に疑問をぶつける。
「暁美達は新婚旅行たい」
「あーそっか、どこ行っとっと?」
「箱根まで行っとらすよ」
「よかねえ、私達ん時は結構近場だったけんなあ、なんか隼瀬に申し訳なくなってきたばい」
「よかたい、あん時僕達まだ高校生だったけん。ばってんまたどっか連れてって来るんならよかよ?」
隼瀬のその笑みに何かプレッシャーを感じる冬未である。
「なーんてね、じゃあ冬未も火付けてくれたしお肉とか持ってくるね」
(なーんてねか・・・・・・)
それが完全な冗談でない事は冬未も妻としてよく分かっていた。というわけでバーベキューを終えて、久しぶりの隼瀬の実家の部屋で二人になった時に改めてその事について話す。
「まあ予定決まれば有給は取れるし、産む前に1回はて私も思いよったけんね。隼瀬は行きたいとこあると?」
「うん、冬になる前に北海道とか行きたいなって」
「北海道か、それなら私も行きたいな」
「そんで現地でレンタカー借りてちょっとツーリングしようよ」
「あーいいかもね」
「でしょ?」
というわけで、その旅行の計画を練る夫婦だが・・・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます