第七章

新天地



2008年 4月 大阪府大阪市



これより少し前から冬未と隼瀬夫婦はこの地の新居での生活をスタートさせ、隼瀬は主夫として生活する中でここの人間の暖かさに触れ合っていた



「そうかー、熊本からなあ」



隼瀬とリビングで談笑するこの人は、隣の西山家のベテラン主夫で生粋の大阪人である。



「はい、生まれてこの方ずっと九州から出たことなくて、全然知らない土地で大丈夫かなと思ったんですけど、西山さんが声かけてくれてよかったです」



「僕ら大阪の人間は来るもの拒まずやからな、もう友達やし敬語とかいらんで」



「え、ですが・・・・・・」



「ですがもかすがいもないわ、葛西さんもそんなん気にせんでええよ」



「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」



「甘え甘え」



一方その頃会社で働く冬未はと言うと・・・・・・



「葛西さんほんまに仕事できるんやな」



「高校生の間はいっぱいバイトしてましたから」



「そっか、そういや卒業前に結婚した言うてたもんなあ、大変やったやろ」



「いえいえ、二人で一緒におれるだけで幸せだけん」



「そっかぁ、ええなあ・・・・・・うちの夫なんかたまにはよ帰ったら「あんたもう帰ったん?アホか」やで、アホかてなんやねんちゅう話やんな」



「酷いっすね・・・・・・」



「せやろ?葛西さんもあんま愛想つかされんようしときや、って余計なお世話やなごめんごめん」



「いえ・・・・・・(大阪の人って本当に明るいな)」



新天地でどうなるかと思ったものの、思ったより職場に馴染めそうでひとまず安心する冬未。そして終業後はまっすぐ家に帰る。



「ただいまー」



「おかえり冬未、職場はどうだった?」



「うん、なんとかやって行けそうよ」



「よかった、お風呂沸いとるけん先入ろっか」



「ありがと、ばってんその前に」



「はいはい」



ただいまとおかえりなさいのキスをして、お風呂に入る冬未と隼瀬。最初はガス代と水道代を節約する為という理由だったが、もうすっかり二人で入るのが習慣となっていた。



「ここお風呂広いけんいいね」



「そうね、床も暖かいし、高校の時のアパートはタイル張りだったしね」



「あれは冬だとほんとやばかったね、ばってん家賃で言うたらこっちも駐車場含めても結構安かもんね」



「そうよね、それに広いし子供が産まれてからも大丈夫そうね」



とはいえいずれは自分達の家を・・・・・・と、互いに思う夫婦であった。








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