ロンリネス
テーブルへ戻ると、いつの間にか追加注文していたデラックスパフェを二人一緒に食べている男子二人の姿があった。
「ほら隼瀬、あーん」
「あーむ」
制服姿の美少年二人がパフェをあーんさせ合う光景は、それだけで画になり、周りの女性客はざわつき、盗撮しようとするものまでいる。が、その片方の彼女としては・・・・・・
「同性との浮気ってどうすりゃよかっだろね、咲良」
「冬未?!」
充希の口へスプーンを運ぶ隼瀬の手をガシッと握り、般若の形相で睨めつける冬未に、隼瀬より充希の方が泣きそうである。
「ふえ・・・冬未、これは違うの・・・・・・」
「そ、そうよ冬未くん。ただの友達同士のじゃれ合いというか、男の世界じゃ当たり前の事で・・・・・・ふええええ」
はわはわして泣き出す充希が異常に可愛く、冬未も毒気を抜かれる。
「もう・・・・・・てか隼瀬、さっきケーキセット食べたつにまたこぎゃんと頼んでから!」
「いや、何かちょっと物足りんで」
「本当、男子って甘い物好きねえ・・・・・・」
同一人物の平行する世界の因果律等のなんやかんやの関係からか、隼瀬はすっかりもうこの世界の住人として溶け込んでおり、何のためにそんな設定にしたのか、甚だ疑問である。
「あ、冬未。いいんちょと何話してきたと?」
「あー、それは・・・・・・」
「隼瀬ちゃんのお婿さん姿について、妄想聞かされたばい」
色恋以外はやたらと勘のいいところがある隼瀬に問われ、冬未は思わず口ごもり、咲良がどうにかしようと当たり障りのない事を言う。
「冬未・・・・・・」
それを聞いた男子二人は頬を赤らめ、果たしてそれが本当に当たりも障りもないのかは些か疑問とするところではあるが。とは言え、なんとか誤魔化すのには成功し、咲良は冬未にどうだいてやんでい!とばかりにウインクする。江戸っ子流行ってんのかな。何はともあれ、隼瀬のクラスメートを味方に付けた冬未は内心、安堵していた。
『お姉ちゃんは、隼瀬の為なら何でもする・・・・・・そこを上手い事ついて、咲良にも協力してもらえば・・・・・・』
実の姉と冬未。隼瀬が最終的に選ぶのは絶対自分であるはずと思っていても、やはり彼女は不安なのだ。
「あ、そうだ。この後皆、僕ん家来ん?」
隼瀬のその提案に冬未はしめた!と思った。隼瀬のクラスメートが冬未の味方についたとアピールすれば、隼瀬や冬未の友達も大事にする暁美への牽制になるのではないかと、そう考えたのである。
「よかね!充希ちゃんも最近来とらんかったろ?」
「そうね。いいんちょは初めてよね」
「うん。ばってんいきなり行って・・・・・・」
「別に冬未も充希もおるんだし大丈夫よ。冬未なんか、僕がおらん時でもいつの間にかおって、お父さんと話しよったりするし」
「それは・・・・・・」
自分は男の子の家に呼ばれるだけで妙に緊張してるのに何この人すげえ・・・・・・という目で冬未を見つめる咲良。
「というわけで、決定!」
「冬未、それ僕の台詞」
「まあ、私ん家とほぼ同じとこだし」
「確かに」
行き先も決定し店を出る一同を、あの例の店員さんが見送る。
「ありがとうございましたー!またお越しくださいませー!」
「今回はボケんとかい!」
「ないならないで寂しいよね」
勢い良くツッコむ隼瀬に、冬未も追随する。そんな面白い店員さんに見送られて、一同は駅へと向かう。
電車内
冬未と隼瀬にとっては見慣れた顔を見かけ、冬未が咲良に耳打ちする。
(あれがそのお姉さん?)
(うん)
(なるほど・・・・・・女に言う事じゃなかばってん美人ね)
(まあ隼瀬の姉ちゃんだけんね)
(あぁ・・・・・・)
世間一般では美少年と言われる方の隼瀬なので、その姉も容姿はそれなりかと咲良は納得する。と、その見慣れた顔、暁美が隼瀬達を見つけ、声をかけてくる。
「あんた達今日は遅かったつね」
「うん、皆で話しこんじゃって」
「あら、みっちゃん久しぶりね!また可愛いなったんじゃないと?あ、貴女は初めましてね、私、隼瀬の姉の暁美です」
「初めまして、隼瀬ちゃ・・・さんのクラスメートの三森咲良です」
「あー、隼瀬がよく話しよる四高の聖母さんだ」
自らの噂が、こんなところまで・・・・・・と、少し自慢げな表情の咲良。
「これから皆ば家さん連れてこうかと思って」
「そうね。賑やかなりそうね」
「ねえ、姉ちゃん」
「・・・・・・?」
突如、冬未に真剣な表情で呼ばれ、疑問符を頭に浮かべ、言葉を発せない暁美。星屑ロンリネス状態である。そして、そんな星屑ロンリネス暁美に、冬未は宣言する。
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