終わった後のゲームの世界。

フィガレット

終わった後のゲームの世界。

 誰も遊ばなくなったゲームの中、

電源が入ったまま物語が続く。


 これはなんのゲームなのだろうか?


・・・


 数々の敵と戦った。

 そして何度も殺された。

 それでも何度も生き返り、ついにはゴールした。

 でもそれは一体何の為にだったのだろう?


 目的はあった。与えられた明確な使命が・・・。

 奴を倒しあいつを救い出す為だ。


 しかし何故あいつは毎度毎度、さらわれるのだ?

 一族を救う唯一の能力を持っているんだぞ?

 何故もっと厳重に警備しない?


 それでもあいつは拐われる。

 そして俺は助けに行く。

 海を泳ぎ、地下を駆け抜け、城を目指す。

 

 他に道はなかったのか?明らかにに険しい道を選んでいる気がする。

 それでも俺は決められた道を進む。

 ブロックを叩き壊し、キノコを食い巨大化し進む。


 立ちはばかる奴らは片っ端から踏み潰す。

 それが敵かどうかなど関係ない。


 目的は進む事だ。殺す必要はない。

 しかし、邪魔なのだ。なぜ狭い足場の真ん中に突っ立っている?

 横から当たればこちらが死ぬのだ。

 そりゃ踏むだろう?


 花を食い火の玉を出せる様になった事もあった。

 星を食い体が光り輝いた時は流石に焦った。


 途中やたらとコインが落ちている。誰が置いたんだ?

 拐った奴か?何故、敵に塩を送る?

 罠じゃないのか?しかし100枚集めれば一度死ねる。

 死にたくはないが残機が無くなると、また振り出しに戻る。

 地獄のループが終わらない。


 たまに見つかる明らかに食べてはいけない色のキノコも残機が増える。

 食べたくはないが必死で食べる。全てはあいつを助ける為。


 ここでふと気づく。何故、あいつは拐われる前に一族を救わなかったのだ?

 まだ能力に目覚めていないのか?

 なら何故あいつに能力があるとわかる?

 そもそも誰がそんな事を言ったのだ?

 あぁ・・・湧き出る疑問が止まらない。


 それでも俺はゴールに向かって突き進む。

 途中から、半分は奴とあいつへの憎悪を糧に進む。

 しかし、城のトラップが鬼畜すぎる。完全に殺しに来ている。


 それはそうか。こちらは侵入者だ。

 むしろ、進める術を残しているのだから親切設計だ。

 何故、攻略不可能にしてくれなかったのか・・・。

 それなら諦めもついたのに。


 しかし何なんだ?この城は。


 住環境が壊滅的だ。なぜマグマがある?暖房か?

 サウナーもミイラになる温度になっていることだろう。


 住む気がないのか?事故物件どころの騒ぎではない。

 

 俺の死体が山ほど眠っている。

 敵の幽霊も全力で逃げ出す怨念が篭っている事だろう。

 

 それでも俺は奴のもとへ向かう。


 そしてついに奴と対峙する。


 そして華麗にスルーする。


・・・


 奴を飛び越え橋を破壊する。

 

 数多あまたの自分の屍を乗り越え、俺はついに辿り着く。


 ここはゴールだ。しかしこれから俺はどうしたら良いのだろうか?

 この足手纏いを連れて、きた道を戻るのか?

 地獄だ。そもそもこいつは能力に目覚めていない。

 一族はまだ救えない。そもそも能力があるのかも謎だ。


 取り戻しはしたが今度は防衛戦だ・・・この城のセキュリティを見習って欲しい。

 どうせ、また拐われるんだろう?

 あぁ・・・憂鬱だ・・・。

 

 こいつ以外、意思疎通出来る奴が見当たらない。

 しかしこいつへの憎悪が止まらない。

 

 ここで知らされる。キノコ一族は魔力で岩やレンガ、

つくし等に姿を変えられてしまっているそうだ。


 俺は今まで星の数程の岩やレンガを破壊した。

 俺の手は血に染まっている・・・。


 今更、どの面下げて一族を救うと言うのだ?

 俺は従う相手を間違えたのだ。

 奴の部下達は奴の為に命を賭して戦った。

 そしてそいつ達の表情はどこか清々しい顔をしていた。


 奴と共に生きた方が何倍も幸せだったのではないだろうか?

 和平と話し合いの道はなかったのだろうか・・・。


 それも今となってはもう遅い。

 奴は自宅の床下暖房で黒焦げだ。


 俺の通った道には、屍だけが転がっていた・・・。

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終わった後のゲームの世界。 フィガレット @figaret

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