第8話 異世界転移
いつもの様に和也と話し、美瑠子がまた俺に不吉な事を宣言して…鼻血をだしてよろめいている。
少しだけ違うのはその横に月子ちゃん事、弱井月子(よわいつきこ)が居る事だ。
月子は体の調子が悪く、学校を良く休んでいたが『俺のおかげ』で命が助かったそうだ。
多分冗談だと思うが…月子の母親曰く、月子の家は犬神憑きの一族だったらしく何代かに1人短命で命を落とすのだそうだ。
まぁ子供を脅す怪談だろうね。
だけど俺が家に遊びに行ったら、その憑いた物が居なくなったそうだ。
『うふふふっ、理人くん、貴方凄いわね』
とおばさんに言われた。
本当に美瑠子と言い、月子のお母さんと言い、俺を怖がらせようと酷いな…俺は怪談とかは好きじゃないのに…
「理人くんのあれ…」
「うん、凄いよね、私に憑いていた犬神も恐れて居なくなった位だもん」
「そういう冗談はやめて欲しい」
「「…そうだね」」
良くある光景の中…今日は違った。
いきなり、教室が光輝やきはじめた。
俺は久々に…めまいがして眠くなった。
『これは不味いわ…ああっ不味い』
いつかの少女の声が聞こえてきた気がする。
眠気がさらに増した気がする。
心臓がチクりと痛み…心臓から体全体が熱くなる。
『転移? 何これ防げない…大丈夫理人、必ず、必ず守るから』
そんな声が聞こえた様な気がしたが…
そのまま何も考えられなくなり…意識を手放した。
◆◆◆
「ここは何処だ? 何も見えない、白い空間?」
多分、これは夢だな…真っ白な空間で全く周りには何もない。
見渡す限り白く見えて何も見当たらない。
こんな物が現実にあるとは思えない。
少し眠ってしまったみたいだ。
夢かと思っていたけど、どうやら違うようだ。
「理人、俺たちも並ぼうぜ」
「和也?」
「驚くなよ! どうやら俺たちは異世界に転移するらしいぞ」
何だか、和也随分と嬉しそうだな。
「異世界転移? あの小説やアニメで良くあるあれ?」
「そう、まさにそれだ! それであそこに居る女神様が、異世界でも通用するようにとジョブとスキルをくれるんだってよ…もう皆、貰って転移してるから…行こうぜ!」
正に今、美瑠子と月子が女神と話している。
可笑しい!
美瑠子はすんなり、光る何かを体に入れて横のゲートを潜っていたが、月子は何か言われている…暫く女神が手をかざしてから、何か言われてからようやく、光る何かを体に入れてゲートを潜った。
「さぁ、残りは貴方達二人だけですよ! まず君は問題ありません! この女神イシュタルの祝福である、ジョブとスキルを与えます…私の世界エターナルで、英雄の様に超人の様に、伝説に語られる様な人生が待っています。さぁお行きなさい…貴方の方には少し話があります、残って下さい」
和也もジョブやスキルを貰い、ゲートを潜っていった。
◆◆◆
女神イシュタルの顔が変わった。
「さっきの娘はもう解き放たれた後だから許しましたが、貴方の様な穢れた存在を宿すものを…」
女神イシュタルが顔を歪めて何か言ってくるが…眠い。
駄目だ…眠くて、眠くて…話が解らない。
ただ、遠くで…
『理人の為にお前を殺す』
『邪悪な存在、このイシュタルが…』
そんな声が聞こえてきた。
『異世界で理人を守る為に…貴方を頂くわ』
『うわぁぁー-っそんな、女神たる私が…嫌ぁぁぁー-』
◆◆◆
再び俺が目を覚ますと…なんだこれ…
辺り一面が血の海になっていた。
肉片が飛び散り…よく見ると綺麗な銀髪交じっている。
その髪は女神の物によく似ている。
そうすると…此処に転がっている肉片は、まさか女神イシュタルなのか…うぷっ。
俺は吐き気に襲われた。
そうだ、ジョブやスキル…女神が死んでいるなら、俺はどうすれば良いんだ…
気持ち悪く、怖いのを我慢しながら辺りを探した。
何もない…
我慢して何時間も探したが何もない。
また、眠気に襲われた。
こんな不気味な状態で良く俺は眠れるな。
再び俺が起きた時…なぜか女神の遺体や血は無くなっていた。
不思議な空間だから、何が起きてもおかしくない。
元の世界に戻る方法は解らない。
今の俺に出来ることは、このゲートを潜る事だけだ。
仕方ないので俺は何も貰えない状態でゲートを潜った。
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