第4話 館の美少女

しかし、本当に暇だぁ~


前に住んでいた場所の友達はなぜかよそよそしく「もう電話しないで」と友達のお母さんに言われた。


嫌われていたのかな…凄く悲しい。


家に居ても仕方ないので散歩を兼ねて街を散策する事した。


しかし都会は凄いなぁ~


沢山のお店があってコンビニがあちこちにある。


あんなに沢山のお菓子にジュース…売れ残らないのかな?


ふぅ、暑い…


結局、お店を散策したけどお小遣いもあまりないから何も買えないので、家に帰る事にした。


家の前に来ると、あのお屋敷の前に女の子が居た。


一瞬、その可愛さに目を奪われそうになった。


『チクリッ』少し胸が痛んだ気がしたけど気のせいだと思う。


友達になりたいな…そうしたら楽しいのに…


そう思って見ていたら…目が合った。


可愛らしい少女は僕の方に駆け寄ってきた。


マスク越しに見ても凄く可愛い。


このご時世…マスクのせいで顔が見られないのが凄く悔しい。


これ程の美少女…あれっ、そんな記憶は無いのに、もっとすごい美女にあった気がする。



いきなり声を掛けてきた。


かなりフレンドリーなのかな?


「私、美人?」


僕と同い年位だ、だから…美人というより可愛い。


だけど、美人って聞く位だから可愛いより『美人』と答えて欲しいんだよね。 きっと。


「美人だよ」


「そう…これでも美人―――っ」


マスクを態々外してくれた。


サービスが良いな…子役のモデルで顔に凄く自信があるのかな。


解る気がする。


凄く売れている子役の本田マリリンちゃんより遥かに可愛い。


「うん、凄く美人だよ! 驚いたぁ~ この屋敷の子なの?」


「えっ…はい…あの」


不味い、つい馴れ馴れしく話してしまった。


なんだか驚いているみたいだ。


「僕、間理人…そこのアパートの2階 203号室に引っ越してきたんだ、宜しくね」


「そこに引っ越してきたの? 大丈夫だった?」


「何が?」


「ううん、なんでもない、私は 口裂愛子(くちさけあいこ)お姉ちゃんと一緒にこの家に住んでいるの宜しくね」


「うん、そうだ飴あげる」


「くれるの?」


「うん」


「ありがとう…」


「しかし、凄く大きなお屋敷だね、凄いなぁ~お城みたい」


「もしかして、理人くん、中見たいの? 良かったら招待してあげようか?」


「良いの?」


「良いよ、私友達が居ないから、招待してあげるの初めてなんだ」


「うわぁ、嬉しいな」


あれ…良いのかな僕女の子の家に行くの初めてだ…緊張しちゃうよ。


「それじゃ、いこう!」


愛子ちゃんは僕の手を引っ張り屋敷に案内してくれた。


「愛子…その子、獲物なの?」


「お姉ちゃん駄目だよ、理人くんは愛子の友達なんだから」


「えっ…そう友達なの…あれっ怖くないの?」


「怖い? なんで?え~と綺麗なお姉さん?」


「綺麗? 本当に私綺麗? あれっマスクしていないのに…そうだ理人くん、美味しいお菓子があるのお姉ちゃんと…」


「塁お姉ちゃん、駄目、理人くんは私の友達なんだから」


「ケチ…良いじゃない少し位」


「駄目っ、理人くん愛子の部屋に行こう」


「待ちなさい、煩いわ」


「瞳お姉ちゃん」


「瞳お姉さま」



「なぁに、その子は…あれっ二人ともマスク…」


「大丈夫だよ、お姉ちゃん理人くん、この状態でも綺麗だって言ってくれたの」


「そうだよ、私も綺麗なお姉さんだって」


「そう、それじゃ理人くん、私はどう?」


「凄く美人なお姉さん」


「そう、凄く良い子ね…うっ」


いきなり抱きしめられてしまった。


女の子って凄く良い匂いがする。


「ちょっと瞳おねえちゃん、なんで理人くんに抱き着いているの?」


「あの体調が悪いんですか?」


なんだか瞳さん…顔色が悪い気がする。


「ごめんなさい、ちょっとね…少し休むわ」


そう言って部屋に帰ってしまった。


「それじゃ、私と遊ぼうか?」


「だからーっ理人くんは私と遊ぶのー-っ」


結局、塁お姉さんと愛子ちゃんと夜まで遊んだ。


しかし、よくこんな古いボードゲーム持っているな。


珍しい…


「あの、そろそろ僕帰らないと」


「ええっー-帰っちゃうの、そうだ泊まっていきなよ、愛子と一緒に寝よう」


「そうだ、私も添い寝してあげるからさぁ」


「ごめん、だけど、明日また来るから」


「ええっそんな」


「そうだ…家に連絡して」


「塁、愛子、無理言っちゃ駄目…ごめんね」


「いえ…すみません」


明日もまた来よう…これで夏休みもきっと楽しくなる。


◆◆◆


あくる日、僕が愛子ちゃんの家に行くとトラックが止まっていた。


「愛子ちゃん?」


「ごめんね、愛子たち引っ越ししなくちゃならなくなったの」


「急にごめんね」


「そんな」


「愛子…理人くんの事が好き…愛している愛しているあいしている愛している愛しているあいしている愛している愛しているあいしている愛している愛しているあいしている愛している愛しているあいしている愛している愛しているあいしている…本当に大好きだよ、ううん愛している」


どうしたのかな…凄く嬉しいけど。


「僕も愛子ちゃんの事好きだよ」


「嬉しい…だけどお別れしなくちゃ…悔しいよ」


愛子ちゃんは泣いていた。


「愛子…ほら行くよ」


「うん」


「私も、愛子と同じ…だけどさようなら…」


僕は遠ざかるトラックが見えなくなるまで手を振り続けていた。


愛子ちゃんや塁お姉ちゃんも見えなくなるまでこっちを見ていた。


◆◆◆

「神様って酷いよ~ 80年待った恋だったのにやっと愛子の事好きって言ってくれる人が現れたのに…」


「仕方無いじゃない…あんなのが中に居るんだから」


「瞳姉…なんとかならないの?」


「ならない! 私だって理人くん欲しいわ…可愛いし美少年だし、将来絶対にカッコよく育つわよ」


「勝てる可能性があるならやってみない!」


「無理…敵意を向けなかったから無事で済んだけど…もし私たちが理人くんに何かしていたら、殺された…それも一瞬で」


「そこまでなの理人くんの中に居る存在…」


「ええっ…私達なんか比べ物にならない位禍々しくて危険、あのアパートの幽霊も手が出なった訳も分かるわ…多分傍にいるだけで危ないわ」


「理人くん、理人くん、理人くー――ん」


「ごめん、あれは怖いし、どうにもならない…愛子諦めて」


「瞳姉…悪かった」


「良いわ」


私は理人くんの中に居る『ナニカ』が怖かった。


それこそ姉妹を捨てても逃げたいと思えるほどに…

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